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社会の変化を映し出す、北欧の生理用品事情(前編)

はじめまして。北欧ノルウェー・首都オスロに住んでいる鐙 麻樹(あぶみ・あさき)です。2008年から在住、オスロ大学大学院でメディア学を学び、今は北欧政治や社会に関するニュースをジャーナリスト、フォトグラファーとして日本に発信中。ノルウェーを拠点に、フィンランド、スウェーデン、デンマークの北欧パッケージの変化をレポートしていきます。

北欧デザインといえば、「機能的でシンプルで…」ということで知られ、フィンランドのマリメッコやスウェーデンのIKEAをイメージする人も多いかもしれません。私はそこに2点追加をしたい。「サステイナブル」と「多様性」です。

環境議論に熱心な北欧のライフスタイルを、店頭の商品からお伝えしていこうと思います!

それでは、実際に生理用品を見てみましょう

多様性のある社会、地球環境に優しい生活サイクルに熱心な北欧。社会の変化は、今、生理用品にも反映されてきています。北欧各国(ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド)のスーパー、薬局、自然派ショップで販売されている商品のデザインを見てみましょう。

Photo:フィンランドのスーパー。生理用品の棚にはバリエーション豊かな商品が並ぶ

Photo:大体は正方形型で、外装は白色が多く見られます

Photo:フィンランドのVuokkoset社は、「通常版」は白色、「100%バイオ版」では地球の土壌や自然を連想させる茶色と緑色で装飾されています

第三者機関による認証マークがついています。両パッケージには「フィンランド国内で製造されたもの」、「北欧のエコ機関による認定」、「敏感肌用」認証マークが、バイオ版には「環境負荷が少ないエコパルプ」マークもありますね。

Photo:バイオシリーズのナプキンとおりものシート

100%バイオ版は丸ごとコンポスト可能。つまり、「使い終わったパッドは、包装されていた茶色いフィルムにそのまま包んで、家庭用コンポストに捨てることができる」と公式HPで説明されています。

商品すべてを包んでいたナプキンの外装だけは、再利用可能なバイオ素材でできていますが、コンポストは不可能だそうです。おりものシートの箱は紙として分別。100%オーガニックコットンを使用。

Photo:「あなたの肌にノープラスチック。安心して」と目立つように表記。赤ちゃんも安心して使え、環境にも優しい、プラスチックフリーブランドです。

スウェーデンのECO by Naty。外装は白色の紙で、黄色い花がデザインされています。

「1994年にスウェーデンで誕生」と国旗の印が付き。意外なことに、この箱にはどういう点がエコなのかという詳しい説明がなく、公式HPで確認する必要がありました。スウェーデンでは、このブランド自体がそもそも幅広く市民に認知されているのでしょう。

Photo:95%が生分解性素材。外側の箱に「OK biobased」(生分解性プラスチック認証の種類)という第三者機関のマークあり。オーガニックコットン使用。https://www.naty.com/global/feminine-care/thin-pads/thin-pads-night/8244664.html

デンマークで日本人観光客にも人気のスーパー「Irma」。オリジナル商品には生理用品もあり、環境に優しい生産過程で作られた製品であることと、ぜん息アレルギー協会の認定印もついています。

Photo:外装はプラスチック、パッドを包んでいる薄い茶色のフィルムは植物由来のバイオフィルム

シンプルで、美しいおしゃれセンスを感じるナンバーワンが、デンマークの「GINGER Organic Copenhagen」シリーズです。

Photo:スーパーの棚に大量に並んでいる、数々の生理用品。その中でダントツに目を引く、「ほっとさせる」優しい色合いや紙の質は、極めて軍を抜いています

Photo:他の商品は、どちらかというとツルツルした紙の素材ですが、こちらはざらざら感があり、木を触っている感触に近いのです。オーガニックコットンであることを全面的に打ち出しており、シール部分やパッドを包んでいるのはバイオフィルム。ノルウェーやスウェーデンのスーパーでも売られています

「もっとエコな暮らしをしたい」と思い始めた初心者にもわかりやすいデザインで、これを買うと「なんだか、エコなことができた」と満足感がアップしそうだなと、私は感じます。                                  

次に、おりものシートを見てみましょう。

Photo:北欧各国のおりものシート

箱の形が長方形であることは共通していますが、外装のデザインはバラバラ。ピンク、青、白、茶など、色も多様です。ほぼすべての商品に、エコ・ぜん息アレルギー・敏感肌用かがわかる認証マークがついています。

Photo:フィンランドのスーパー、Coopオリジナルの生理用品

Photo:フィンランドのVuokkoset社。敏感肌用、オーガニックコットン使用

Photo:スウェーデンのスーパーCoopオリジナルのシート

Photo:プラスチックフリーを大きく宣伝するスウェーデンのECo by Naty

今回、「おや?」と思ったのが、スウェーデンのLibresse社の「ナプキンのような包装のおりものシート」でした。

Photo:おりものシートといえば、紙の箱を開けると、シートが未包装の状態で生でどかんと入っているのが普通(持ち歩きにくい)。こちらは、ナプキンのように、シートがフィルムに包まれています。三つ折りされていて、とても小さいので、持ち運びに便利なデザインです

Photo:気持ちをわくわくさせてくれるスウェーデンLibresseのタンポンシリーズ。フィンランドのスーパーでも販売

タンポンとなると、外装の箱にはサイズや色の統一感はありません。「タンポンの箱といえば、この形!」とは言えないほどの幅広い選択肢があるます。

「かわいいよね」、「キャンディーの箱なのか、もうなんなのか分からないデザインがいい」、「そのままトイレに持っていける」と圧倒的に私の周囲の女性たちの間で好評だったのが、スウェーデンのLibresse社です。

Photo:みてください、この手の上に乗る洗練されたデザイン。正方形で手に入る大きさ

Photo:空き箱はそのまま他の用途に使用したくなってしまいます

Photo:フィンランドのVuokkoset社のタンポンは、オーガニックであることを全面的にアピール。体の内部に入れるものなので、ナプキン以上に、オーガニックであることなどは分かりやすく教えてもらえると安心して使えると思うのは、私だけでしょうか

分別方法について

エコな生理用品では、パッケージで分別方法も強調されつつあります。ただし、素材は環境には良いものですが、分別方法は別でまた考える必要があります。

使用「後」の血などのついた生理用品やおむつは、パッケージに「生分解性として処分可能」(英語でbiodegradable disposable)として表示されていても、ごみ分別方法は各国の自治体によって異なります。

フィンランドの首都ヘルシンキでは、生分解性として処分可能(バイオ~)と表示があっても、衛生用品は生ごみと一緒のバイオ専用ゴミ袋ではなく、普通ゴミとして分別するように決められています。ですが、自宅での家庭用コンポスト(微生物の働きで分解させて堆肥にする)にはそのまま捨ててもよいと説明されています。

一方、ノルウェーの首都オスロでは、一部のエコな音楽祭などの会場では、生分解性素材で作られたフォークなどは食品と一緒に分別されます。しかし、日常生活では、生分解性素材、衛生用品やコットンは普通ゴミ扱いです。

「バイオ素材」と書かれているプラスチックのように見える袋は、生ゴミ用のゴミ袋として使用していい場合もあります。人間の排せつ物は必ずしも土壌にいいとは限らないので、排泄物がついた部分はコンポストではなく普通ゴミへと説明する企業もあります。

なんだか混乱しますね。このように生分解性、バイオ、コンポスト可能などの表示があっても、分別方法は時と場所によって変わります。北欧現地でもこの区別には困惑している人が多く、現地のゴミ処理場や企業への問い合わせが多いようです。その分かりにくさは、生理用品のパッケージでも同じでした。

Photo:最後に、「えー!?」と思わずにはいわれない、フィンランドの薬局で見つけたタンポン。100個入りで、透明な袋に入っています。

後編は、北欧の生理用品に関する「恥ずかしい」という感覚について、触れてみたいと思います。

 

▼後編はこちら

社会の変化を映し出す、北欧の生理用品事情(後編)

※この記事では、用語を以下に統一しています。

■ビニール=「プラスチック」
■従来のプラスチックの代用素材の表記について

1.「生分解性」=自然界に永久的に残り、生物に害を及ぼす従来のプラスチックよりも、生分解性(英語で「biodegradable」)素材のものは、自然環境への負担が少ない。

2.「コンポスト可能」=英語でコンポスト化「compostable」と表示されていれば、堆肥作りとしてのコンポストとして捨てることもできる。

日本語ではcompostableが生分解性として書かれている場合もあるようです。英語圏ではdegradable(科学的に分解できる)、biodegradable(生分解性の)、compostable(コンポスト・堆肥可能な)、recycable(リサイクル可能な)の違いで困惑する声もあり、日本ではその統一がさらにみられないため、当記事では商品で表示されている言葉をそのまま使用。「グリーン・プラスチック」という言葉は北欧では聞かないので、当記事では使用を避けています。

Photo&Text: Asaki Abumi

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