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【特集】世界の今。新型コロナウイルスが変えた私たちの生活(14)——「ハンガリー・ブダペスト」の今

Photo:市場の入り口に貼られたウィルス対策のポスター

全世界で猛威を奮っている新型コロナウイルス。ハンガリーでは3月11日に非常事態宣言が発令され、現在も継続中です。

わたしは以前から春に帰省を予定していたので、その非常事態宣言が出る前に東京へ帰国していました。4月初めにはブダペストに戻るはずでしたが予約していたフライトが欠航でキャンセル、その後も予約変更をしてはキャンセルを繰り返し、東京でも緊急事態宣言が発令され、こちらでの滞在を延長しています。

Photo:薬局のドア、マスクとハンドサニタイザーは売り切れ

2月下旬にイタリア北部で爆発的な感染増加があり、ニュースは連日ヨーロッパ各地での感染拡大を伝えていました。ここ数年は冬でも多くの人が訪れていたブダペストの街中からは、旅行者が目に見えて減りました。

近所の薬局のドアには「フェイスマスクの在庫はない」と書かれた紙が貼られ、ドラッグストアでは手の除菌、消毒用のハンドサニタイザーが置かれていた棚がいつの間にか空っぽに。店員にハンドサニタイザーを売っていないかと聞き回っている買い物客の姿も見かけていて、新型コロナウィルスが徐々に近づいていると感じるようになりました。

Photo:上段の棚には通常ハンドサニタイザーが並んでいる

3月に入り、ミラノを州都とするロンバルディア州で都市封鎖(ロックダウン)が始まります。ブダペストからミラノは約1000km、イタリア北部はハンガリーからそう遠くはありません。

通常、EU域内では人の移動は自由で、シェンゲン協定の加盟国間では国境審査も省略しています。日頃から人の移動や物流が活発なヨーロッパでは、感染症の流行は「対岸の火事」では済ますことのできない緊張感があります。

その頃、ひさしぶりに帰省した東京ではオリンピックの延期はまだ決定しておらず、発表される感染者数にも目立った増加はなく、新型コロナウィルス感染の脅威は一般的な生活からはほとんど感じられませんでした。正直なところ、ヨーロッパから来た私はその危機感の違いに戸惑いがありました。

電車や駅には、通常よりは利用客が減少していると言っても大きな人の流れがあり、デパートや飲食店なども変わりなく営業中。そして、東京は桜の季節に。桜祭りなどは開催が中止されていましたが、それでも多くの人が外に出て美しい春の光景を楽しんでいた頃、ハンガリーでは外出制限措置が始まりました。

Photo:閑散としているブダペスト中心部、左はイシュトイヴァーン大聖堂

ハンガリーで発令された外出制限では、外出は仕事や買い物、通院など生活に必要な場合に限られます。その際は、同居する家族を除いて他人との間隔は1.5メートル以上を保たなくてはなりません。

客が店に滞留することは禁止されているので、外食産業はテイクアウトやデリバリーで対応、無期限で休業する店も多くあります。散歩やジョギングなどの運動は認められていますが、こちらも同居する家族以外とは1.5メートル以上の距離を開けることが必要となります。

ブダペストに残っている夫からは、通常は旅行者で賑わう近所のカフェやレストランのほとんどが店を開けておらず、人々が滞留しないように近所のそんなに大きくない公園も閉鎖されていると聞いて、その徹底ぶりに驚きました。政令では外出可能な理由も細かく決められていて、警察によって監視され、違反があった場合には罰金も課せられます。

Photo:交通機関を利用する際も、人との距離を保たなければならない

市場やスーパーマーケット、食料品店、そして薬局、ドラッグストアなどの店舗では、午前9時〜12時までが65才以上の高齢者に限られた買い物時間に設定されました。買い物時間を分けることで、生活行動範囲の広いことで感染確率が高くなる若い世代と、感染した場合に重症化の可能性が大きい高齢者の接点を減らすことができます。大型店では入店者数の制限もあり、レジに並ぶ人々も1.5メートルの間隔を保っています。

東京の地元にあるショッピングセンターやホームセンターなどでは、緊急事態宣言が出てからも特に週末には賑わいを見せていて、フードコートも閉鎖されていないので買い物客が屋内で滞留していました。公園では子どもたちが元気に遊んでいて、その家族も和やかにおしゃべりをしています。

その光景は、人々が集うことのないように公園まで閉鎖されているブダペストの状況を聞いている私にとっては、やはり少々驚きです。東京ほどの大都市で外出制限をする難しさは分かるのですが、不要不急の外出は自粛するようにとの要請が出ています。危機感の違いが、これ以上の感染拡大につながらないことを心から願うばかりです。

Photo:ふだんは交通量の多いアンドラーシ通り

ハンガリーでは、発令当初は4月11日までだった外出制限が無期限に変更されました。4月12日、13日はイースター連休、通常は帰省して家族と過ごす晴れやかな祝日です。例年、町ごとにフェスティバルなども企画され多くの人出があるのですが、今年は中止に。

ブダペストでは、ドナウ川に浮かぶマルギット島、オーブダ島など緑が多く市民の憩いの場として人気の高い場所も閉鎖されました。自宅隔離の疲れもあり、春の陽気に誘われて外出する人が一度に増えないための措置です。ブダペストでは厳戒態勢がまだまだ続いています。

Photo:外出制限の期限が延長されたことを伝えているポスター

現在一人で生活している夫は、2~3日に一度の買い物と、運動不足解消のために近所をサイクリングする以外に外出をしていません。外出が制限されて以来、実際に人と言葉を交わしたのは市場と薬局で買い物する時だけだと言っていました。

それでもオンラインで、ブダペストに限らず世界中に住む友人や家族と会話ができるので孤立感はあまり感じていなさそうです。古い友達やしばらく会っていない親戚と連絡を取り合い、ひさしぶりにゆっくりと話すこともあるそうです。

友人たちは料理やヨガの写真や動画をSNSに上げていたり、ミュージシャンの友人は自宅から演奏を配信していたり、オンラインで語学の習得、ダンスやエクササイズに取り組む人もいます。普段の生活とはかけ離れた制約のある日々が続きますが、それぞれが家での時間を出来る限り前向きに工夫して過ごしているようです。

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