シアトルに本社を置くアマゾンが2015年に先ずはシアトルから展開を開始し始めた実店舗「Amazon Books」。2017年9月にはロサンゼルスで12号店目(ロサンゼルス群では1号店となります)を大改造中で次々人気店が入るWestfield Century Cityモール内にオープンさせました。そこで実際にこの「Amazon Books」に行ってみました。
戦略①選びやすい本のディスプレイ
まずお店に入ってすぐのところに置かれているのは、「Highly Rated 4.8 stars & above: 4.8スター以上の高評価の本」。今一番売れている本がお店に入って直ぐに分かる陳列方法になっています。
本のカテゴリとして、通常の書店のように「料理」「ビジネス」「旅行」「子供の本」などのジャンルに分かれている上に、Amazon Booksならではの「アマゾンが選ぶ、生涯で読むべき100冊」、「キンドルで3日以内で読めてしまう本」などユニークなカテゴリも目を引きます。これらは実際に本選びを選ぶ際に役立つと感じます。
戦略②カスタマーレビューが付いている
本の下にはカスタマーレビューがついていて、これも本の選びやすさのポイントの一つです。又、アマゾンのオンラインと同様に「この本が好きな人には、この本もオススメ」や、「書店スタッフのオススメ」などもあり、顧客の求めるものを理解したマーケティングになっています。
戦略③本の表紙が見える陳列
とても印象的なのが、本の陳列方法です。通常の書店では、背表紙が見えるように陳列されていることが多いのですが、アマゾンでは全ての本が表紙が見えるように面陳されています。置いてある本の数量が少ないと言うこともありますが、表紙のビジュアルから本を手に取る人にとっては、とても効果的な陳列方法だと言えます。お店の定員さんから「まるでオンラインで本を選んでるみたいでしょ?」と声をかけられたのですが、全くその通りで、まるでスクリーン上で綺麗に並んだ本をリアルに見ているような感覚になります。
戦略④書籍の在庫数が少ない
そんなに広くない店舗面積で(ロサンゼルスの店舗は5,227スクェアフィート)、書籍の在庫も少なく数千冊になっています。真の本好きの人々はAmazon Booksにあまりいい思いを持っていないと言う声を聞きますが、それはこの書籍の少なさも原因の一つだと言えます。この戦略から、オススメの書籍を全面に出し、それを出来ればプライムメンバーになるように誘導して買ってもらうというのがアマゾンの狙いのようです。
戦略⑤アマゾンのIT商品のショーケースになっている
Amazon Booksの一角の約2割のスペースでアマゾンのIT商品が置かれています。アマゾンIT商品のショーケースの役割も担っています。アマゾン独自の製品でアマゾンでしか売ってない商品、例えば電子本「キンドル」・TVのストリーミングサービス「ファイヤーTV」、AI「アレクサ」を搭載した「エコー」製品が実際に見ることができるのは、このAmazon Books店舗だけということもあり、アマゾンブランド商品を以前よりも気軽に試すことができる場所となっていきそうです。
戦略⑥商品に一切価格がついていない
驚いたのが、価格が商品に一切ついていないことです。商品の価格は、店内に置かれたバーコードリーダーか、Amazonのアプリを使ってスマホの表紙を撮影するかで確認する形になります。アマゾンは顧客データを集め消費パターンを研究し続けていますが、これもその一環だとうかがえます。
戦略⑦現金は使えない
会計の際は通常通りレジに行きますが、支払いはクレジットカード、もしくはアマゾンのアプリのどちらかで行う形になり、現金は使えません。アマゾンが自社キャンパス内で試験運用している、AI技術を活用して会計を完全自動化したコンビニ「Amazon Go」がありますが、将来これが店舗に導入される日も遠くのはないのではと感じました。
戦略⑧アマゾンプライム会員の特権
アマゾンプライム会員は、書店で買ったものを持ち歩きたくなければ、そのまま指定の住所に配達することもできます。また、会員だけのディスカウントもあり、オンラインと同様会員になっていない人達は、20〜30%多く支払うことになります。Amazon Booksの体験から感じた一番のポイントでもあったのですが、全てがアマゾンプライムを推奨している、いい例です。
今後のアマゾンの戦略
今後アマゾンは全米で300~400の実店舗をオープンする計画で、今後この書店が各都市でどのように受け入れられていくのでしょうか?アマゾンは今年6月には、自然・有機食品小売大手のホールフーズマーケットを137億ドル(一兆5100億円)で買収しています。
実店舗を持つことでオンラインよりも顧客に近いところで顧客履歴収集ができるようになったアマゾン。オンラインと実店舗両方から得られる膨大な顧客データを使って、相乗効果で進めていくビジネス展開に目が離せません。