こんにちはpackagecollection(以後パケコレ)です。(パケコレのプロフィールページはこちら。)
今回も1つの商品シリーズを深掘りして考察していくスタイルで特集していきたいと思います。
今回のテーマは「森永 inゼリー」
誰もが皆、見たことがあり認知しているこちらの商品「森永 inゼリー」シリーズ。デザイナーの佐藤可士和さんが2014年に手がけていて(現在は不明)、シンプルでスタイリッシュなデザインでありながらも様々な波紋を呼びました。
このシンプルなグラフィックが伝わっていないという論争。そして、みんなの意識に刷り込まれた「“ウイダー” インゼリー」払拭への苦悩を分析してみたいと思います。
まず、現在のパッケージはこちら!
いろいろ伝わってない!と話題になりましたが、結局シンプル路線に落ち着いたんですね。デザイン要素としての英字にキーカラーと、スタイリッシュですね〜。割と今良い状態に落としどころとして定着したデザインだと、私は思っています。
パッケージのデザイン要素としての構成は、パウチの素材のシルバー・メタリック感を引き立てた「仕様の制限」をよく活かしているデザインではないでしょうか。
昔から男性が飲むイメージだったのですが、おそらくそういった世界観は意図的に作っているんでしょう。素材感やデザインのシンプルさでターゲット層の消費者が飲みやすいように、上手く世界観が作られているなと筆者は感じました。(飲んでいてカッコいい感じ。)
そしてこのシンプルなデザインに、プラス「理解」をさせなくてはいけない文言の訴求が、論争を経て今ようやく落ち着いていると思っています。
inゼリーの良いところは、上部のラインカラーによる色分けで遠くからでも見分けられることと、大きな「in」の文字の構成で商品を認識できること。
こういったデザインは、コンビニで上手くコーナー化(ゾーニング化)ができているため遠くからの視認性が高く、瞬時に手に取れる優秀なデザインになっているのです。だからいつも上段にコーナーが作られているのですね。(コンビニでだいたい目に入りやすい上段に配置されているはずなので、ぜひ今度注目してみてくださいね。)
しかし、並べてよく見てみると、「10秒チャージ」「手軽にタンパク質」「NEW 1日分」「アミノ酸・ロイヤルゼリー・クエン酸」の訴求のデザインが、これってデザイナー別なのかしら?と思ってしまうくらいのマチマチ度合いですね。
こういった「理解させる」訴求はどちらかというと「POP」の要素なので、パッケージと訴求のトーン&マナーはズレててもいいのですが(差別化しなくては訴求できないので致し方ないのです。)、ここのデザイン、今からマイナーチェンジしてもいいと思いました。ブラックサンダー(https://blackthunder.jp/)的な訴求デザインの入れ方とか、そこそこ相性いいのではないかと思います。
それでは、こういった「理解をさせなくてはならない文言の訴求」に関していろいろ話題になったので、少しだけ触れておきます。
「ウイダーインゼリー」パッケージ論争
遡ること2014年、まだ「ウイダーinゼリー」だった頃。今のデザインのベースとなったのが、佐藤可士和さんによるパッケージのリニューアルでした。
これを見ると、カラーヘッダーをつけた「色」のブランディング、書体の選定、全体のレイアウトのレギュレーションなど、今のトーン&マナーにほとんど近いですね。
やっぱりベースを作った佐藤可士和さんはすごくいいお仕事をされたと思うのですが、この論争、売り上げが下がったため4ヶ月でリニューアルを余儀なくされたことで話題になったんです。ディレクターやデザイナーとして「売り上げが下がった」はめちゃくちゃ辛い。ほんと辛い。
こちらの記事もよくまとめられています。(https://matome.naver.jp/odai/2140815189868639101)
これらの記事で共通してあげられている課題点は、「わかりにくい」ということだったんですね。パッケージデザイン・ブランディングと「わかりやすい訴求」って、似て非なるもので、パッケージデザインは、ざっくり例えると綺麗なお顔をつくってあげるお仕事で、「わかりやすい訴求」はPOPの役割なんです。雑誌で例えるならば、綺麗なお顔のモデルさんの写真の周りにいろいろ文字が書かれていますよね。今月は何月号!とか、女優さん特集!とか、お値段いくら!とか。そういった「読ませる」文字情報が「分かりやすい訴求」なんです。
だから、佐藤可士和さんが作ったベースのデザインって、お仕事としては間違っていないと思っているのですが、時代の流れは「瞬時に見て理解できること」なんです。特にコンビニやスーパー、流通においては。これがまた、高級商品だったら違ったんです。お土産とか単価がちょっと高いものはね・・・。
と、筆者はベースを作った佐藤可士和さんはすごいと思いつつ、訴求文言も入れなきゃいけなかったんだなぁと、反省を生かした現在のデザインは、ある意味「落としどころ」だったんだと思うんです。
ところで、「ウイダー in ゼリー」と呼んでいませんか?
さてさて、そんな「inゼリー」、実は筆者は2週間くらい前からこの特集を組もうかな〜と思っていたのですが、そんな中おもしろいツイッターの投稿が話題になったので「わ!タイムリー!」と思い、ここに関して言及したいなと思いました。
ちょっとまって!こいつは!ウィダーじゃないよ!!ウィダー社とは!もう!提携してないんだよ!!!森永自社ブランド!これはinゼリー!なんだよ!!ウィダーって呼ぶな!!!ウィダーさんとは!離婚してるの!!!旧姓で呼ばないで彼とは別れたから!!っていうめちゃくちゃ細かいこと思ってしまった pic.twitter.com/xhqKekVTGz
— かつや (@i5_32crow) 2019年6月25日
「ちょっとまって!こいつは!ウィダーじゃないよ!!ウィダー社とは!もう!提携してないんだよ!!!森永自社ブランド!これはinゼリー!なんだよ!!ウィダーって呼ぶな!!!ウィダーさんとは!離婚してるの!!!旧姓で呼ばないで彼とは別れたから!!っていうめちゃくちゃ細かいこと思ってしまった」(https://twitter.com/i5_32crow/status/1143372745046020101より引用)
この「もうウイダーじゃない」っていうの、みなさまどれくらい認識されていましたか??
私もこの前、知人が「ウイダーはもう無いんだ!」という話を熱弁していたところから、「そういえばそうだった・・・」と気付き、しかし、「もうないはずのウイダーがまだ人々の心の中に住み続けているのは、ロングセラー商品だからこその誇りと苦悩なのだな・・・」と人知れず思っておりました。なので「離婚したから苗字変わった!」という言い方はとても秀逸な言い方ですね。めちゃくちゃ腑に落ちました。
そんな苦悩の「ウイダー」が無い「inゼリー」。ぶっちゃけ気付いてない人も多いのではないでしょうか。これって、<ウイダーの耳馴染みがよくてカッコよすぎたから>以外の理由があるのだろうか・・・と思います。
つまり、デザインの問題ではないのです。「ネーミング」の勝利だと思っております。こういうのが複合的に要素として構成されつつ商品は成立するので、何が良いのかの正解が出にくいんですよね。
そして「inゼリー」としてマイナーチェンジしたことを認知されていない現状は、メーカーさんの意向もあると思いますし、大きく打ち出していないということは騒ぎ立てたくなかったのかしら?とも思います。今後、森永さんが「ウイダー」が無い「inゼリー」でどう戦っていくのか、注目です。
まとめ
今回は「inゼリー」というロングセラー商品にみる、パッケージの変化とマイナーチェンジについてでした。個人的には、気付いたら変わっていたのが悔しいなあ〜。抑えておきたかったです、離婚前。
この商品の一番の特徴は「コンビニで成立するコミュニケーション」に長けているというところです。失敗があったからこそ、今がある。最近コンビニでは、情報が多すぎるパッケージが沢山見られるのですが、威厳を保ちつつロングセラーへと上りつめた苦労人だなあと改めて思いました。
さて!そろそろ1つの商品の深掘りじゃなくって、ライトに「パッケージ」の見比べが読みたいな〜と思っているそこのあなた様へ朗報。来週は「レモンパッケージ」特集!です。市場がとにかく爽やかになってきましたね~やっぱり季節性商品はウキウキしますね!
次回も乞うご期待!
パケコレでした。
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