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ゼロ・ウェイストやオーガニックは「意識高い系」の話ではない。フランスの「オ・ボカル」から読み取るヒント(後編)

フランス西部の地方都市ナントで3年前に誕生した、ゼロ・ウェイストを提案するオーガニック店「Ô Bocal(オ・ボカル)」。前編では包装無し、量り売りの食品をメインに紹介しましたが、今回は、洗剤や日用品に特化した新店舗「オ・ボカル・ドログリー」に焦点を当て、エコ活動という枠にとらわれない商品セレクトのセンスの良さに迫ります。

▼前編はこちら

ゼロ・ウェイストやオーガニックは「意識高い系」の話ではない。フランスの「オ・ボカル」から読み取るヒント(前編)

オープンから3年経って訪れた変化

Photo:可愛い雑貨店のようなディスプレイに惹かれて入ってくるお客さんも多い。

オープン当初からも、洗剤やシャンプー、固形歯磨き粉、竹とバイオ系プラスチック製の土に還る歯ブラシなどの日用品を売っていましたが、利用者の幅広い要望に応え、商品のさらなる充実を実現すべく、雑貨に特化した新たな店舗「ドログリー(雑貨店)」を1号店の近くにオープンしました。自然光の差し込む心地良いスペースに、数々の生活必需品がずらりと並びます。

Photo:使い終えたらすべて土に還る歯磨きセットは見た目もキュート。

取材に訪れたのがクリスマス直前とあって、プレゼントを探すお客さんでいつも以上ににぎわっていた店内。まるで普通の雑貨屋さんと変わらない雰囲気を肌で感じ、フランスではエコやオーガニックといった意識が決して特別な人のためのものではなく、みんなの生活の一部になっているのだと、改めて実感しました。

手ぶらで訪れた人も気軽にお買い物ができる店

Photo:フランス生まれのル・パルフェは密閉容器のロング&ベストセラー。

「オ・ボカル」では、商品を持ち運ぶ容器や瓶もたくさん揃えています。なので「ゼロ・ウェイストやエコ活動はハードルが高くて、なんだか面倒臭そう・・・」と二の足を踏んでいる人や、そもそも関心度の低い人、何も知らずに手ぶらで訪れた人たちでも気軽に買い物ができ、ゼロ・ウェイストに向けての第一歩を自然と踏み出せる工夫がなされています。

フランス製密閉ジャーの定番、ル・パルフェは昔から変わらぬ素朴な見た目も可愛らしく、見せる収納が得意なフランス人の好みにもぴったりはまります。

Photo:中央の棚にある空き瓶は無償で自由に利用できるもの。

さらに、このお店で買い物をしてみようと背中を押してくれるのが、空き瓶を無償で利用できるサービス。自宅からマイ容器を持ってくるのを忘れたり、面倒だったり、手ぶらで来た人にとって、お金を払わずに容器を使えるのは本当に便利で嬉しいサービスでしょう。こういう部分にも「オ・ボカル」がより多くの人たちにゼロ・ウェイストを広めたいと願う心意気を感じます。

Photo:シリアル等を入れる布袋も、薄手・厚手やサイズの大・小から、価格や用途に応じて選べます。

「オ・ボカル」オリジナルのエコバッグは生成りと柄生地のツートンで可愛く、ボトル用に仕切りのあるデザインや縦長のバゲット用のものなど、機能性にこだわって作られているので長く愛用できそうです。いかに一時的な包装や使い捨ての買い物袋を使わずに暮らしていけるかを考えた日用雑貨が揃っているので、エコ初心者でもお店に行けば自然と案内されるように必要なものが見つかります。

洗練されたゼロ・ウェイスト生活を提案

Photo:洗剤や液状ソープをまとめた大きな自動ディスペンサー。

「ドログリー」を新たにオープンした大きな理由の一つは、洗剤やシャンプーなどの洗剤・石鹸の量り売りの充実。いくつもの注ぎ口が並ぶ大きなディスペンサーを設え、ボタンひとつで客がセルフで洗剤を充填し、入れた量と料金を記したラベルシールが印刷されるシステムになっています。

ゼロ・ウェイストは決して「無駄の少なかった昔の生活に戻ろう」といった温故知新的な考えにこだわるだけでなく、最新技術をどんどん取り入れて利便性を高めることも重要であると「オ・ボカル」は唱えます。

「ゼロ・ウェイスト=手間がかかるのは仕方ない」とストレスを抱えながら続けるのはナンセンス。もっと工夫して、今ある私たちの技術で、ゴミをこれ以上増やさず、さらに減らして行くために考え続けていくことこそが、ゼロ・ウェイストの活動なのかもしれません。

Photo:洗って繰り返し使えるコットンパフはかわいい巾着に入っている。

Photo:清潔なコットンパフと使用後のパフを分けて入れられる専用の巾着も人気。

「ドログリー」にたくさんの人が訪れるのは、置いてある商品を眺めるだけでも楽しめるから。今まで見たこともないような面白いグッズに出会える場でもあります。再利用可能なオーガニックコットン製の生理用ナプキンや化粧落としのコットンパフ、月経カップ、下着を下ろさず立ったまま用を足せる小便カップなどもあり、どれもフランスのクリエイターが作ったもの。

Photo:サイズや柄が選べる再利用可能な布ナプキン。

Photo:汚れた便座に触れたり野外でしゃがんだりする必要なく用が足せる女性用の小便カップ。

日本人にとってはお馴染みの編みたわしや持ち運べる自分用のカトラリーセット、かさばらない水筒やお弁当箱なども、フランスでは最近になってお目見えしたエコグッズ。「Tawashi」と日本語名が書かれているのを見ると、ちょっぴり誇らしい気分になってしまいます。

Photo:アクリル製ではなくオーガニックコットンでできた編みたわし。フランスでも「Tawashi」と呼ばれている。

Photo:フランス版マイ箸セットは竹製のフォーク、ナイフ、スプーン、ストローなのがお国柄。

ステンレス製のストローは、3年前のオープン直後からずっと売れ続けているベストセラー商品です。ついにフランスも2020年からプラスチック製ストローが徐々に廃止となるため、さらに注目度が高まるでしょう。

専用の細い洗浄ブラシも売っており、実際に使用したお客さんがどう感じるか、何を求めるか、といったその先のことまで考えて商品を選んでいるのが良く分かります。竹製やバイオプラスチックの歯ブラシも愛用者が多く、ブラシ部分だけ付け替えられるイタリア生まれの歯ブラシも人気です。

Photo:著者も3年前の取材時に購入して今もずっと愛用しているストロー。太さが色々あるので揃えてみたい。

Photo:付け替え用ブラシはかため、やわらかめの2種類あるのも嬉しい。

ゼロ・ウェイストを掲げる先駆者として、これからも目が離せない

Photo:いつも新しいアイデアに溢れるジョアンナさん。今後のさらなる活躍が楽しみ。

3年前にクラウドファンディングの資金提供を受けて誕生した「オ・ボカル」。包装無し・オーガニック・地元の生産者という3大テーマを掲げ、ジョアンナさんを中心に若いスタッフたちが一丸となって経営しているとても魅力的なお店です。

エコだオーガニックだと肩肘張らずに、とにかく楽しみながらゼロ・ウェイストを推進している点、そしてエコである前に美しく、おしゃれで洗練されたスタイルを貫いているところが人気の理由でしょう。

新しいコンセプトをゆっくりと、けれども着実に形にしながら、一歩ずつ前進し続ける。そしてお客さんとの会話を大切にすることで人と人が繋がり、原点回帰かつ未来にも繋がるこのお店が、どんな風に人や街に影響を与えていくのか興味津々です。

Ô Bocal
3 rue de l’Hôtel de Ville 44000 Nantes
http://www.obocal.com

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