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アフターコロナ、フランス大手スーパーの取り組み

みなさまこんにちは。パリ在住のライター、大内聖子です。

あっという間に2021年も折り返し地点となりましたね。今年前半のフランスは、長引くコロナ禍に随分と苦しめられていました。やっと規制が緩和されたのは5月3日のこと。この日以降は10キロメートル以上の国内移動が解禁になりました。続く19日からは飲食店(テラス席)、映画館、小売店、美術館など条件付きではありますが、営業再開を許可されました。

フランス中央部リモージュ。規制緩和後の5月13日から16日までフランスは大型連休だったため、海沿いを中心とするAirB&Bの宿泊施設は予約が取れないほどの賑わいを見せました。

さらに6月9日からは飲食店の店内営業、スポーツジム、外国人旅行者の受け入れを再開し、6月30日には2020年から続いていた夜間外出禁止令が完全に解除。今のフランスは「完全に元の世界に戻す」ことを目標に、勢いよくアクセルを踏んでいる状態です。

もちろんそれは、コロナワクチンの接種がスムーズに進んでいるというはっきりとした理由もあります。2021年5月27日の情報では、ワクチン1回目接種済の人数はフランス国内で2,415万人余り。フランスの人口が6,700万人ということを考えれば、既に三分の一以上が接種したという結果になります。

待ちに待ったカフェの再開!

再開日の5月19日に早速カフェに行きました。アフターファイブは仕事帰りのパリジャンが行列をなすほど、待ちに待った再開です。

コロナへの警戒心は保ちつつも、カフェ・レストランが再開されたことでパリに笑顔が戻ってきたように思います。思えば、飲食店が一番苦しい思いをしたのではないでしょうか。2020年10月末から半年以上も閉店を余儀なくされていたのですから、お客さんはもとよりスタッフの方が嬉しそうでした。3度目のロックダウンを乗り越えたフランス、そして無事に営業再開を迎えた各小売店。全体が活気づいてきた頃合いに見えたのは、売り場の「クスっとなるようなキャンペーン」、「ちょっと嬉しいサプライズ」の仕掛けです。

今回はフランスの大手スーパーで目にした、アフターコロナの状況をお届けしたいと思います。

スーパー大手のアンテルマルシェ&サッカーリーグのタイアップ企画

郊外型・大手スーパーのアンテルマルシェ。

フランス国内で1,830店舗を展開するスーパー大手のIntermarche(以下、アンテルマルシェ)。実はこのアンテルマルシェ、フランス・サッカーリーグの公式スポンサーなのです!ここでは5月17日から6月11日まで、サッカーリーグとタイアップを図ったキャンペーンが行われていました。

スーパーの入口には特大ポスターが貼られていました。

内容は、5月17日から6月11日までアンテルマルシェで買い物をすると、抽選でサッカーリーグ公式グッズが当たるというものです。その総額はなんと3千万ユーロ(日本円で約40億円)の規模!フランス全土のアンテルマルシェで開催されているとはいえ、なかなかに規模の大きなキャンペーンです。

スーパースターたちのパネルも。子供たちは嬉しそうでした。

やり方はとても簡単です。お会計時に貰えるクーポン券か、買い物レシートに記載されてあるバーコードを、出口近くにある専用の機械にスキャンさせるだけ。例えば10ユーロ以上、というような最低金額は設けておらず、何ユーロからでも挑戦できます。

この日はレシートで挑戦。

サッカーリーグ公式グッズが抽選で当たるほか、1ユーロ・2ユーロ・3ユーロの割引券のどれかが当たるという仕組みです。目新しい企画ではないものの、期間中は毎回挑戦できるので「少しでもお得のあるアンテルマルシェに行こう」となりますし、ほとんど全ての買い物客がこのキャンペーンを利用していました。

外れてしまいましたが、難しいことは何もなくまた挑戦したくなるシステムでした。

別日に行くと、当たりが出ました。

景品はキーホルダー。

良かったポイントは、煩わしいポイントカード登録などが不要なことです。あの一手間を省いたことでスムーズな人の動きが見て取れました。もちろん公式グッズの内容も魅力的ですが、驚いたのは総額3千万ユーロというその金額です。世界各国のスーパーマーケットと同じように、コロナ禍でフランスの各スーパーの売上高も大幅に伸びました。今回のこのキャンペーンはお客様還元プログラムといったところかもしれません。

BIOとSNS

フランスでスーパーやマルシェへ買い物に出かけると、必ずといっていいほど目にするのがBIO製品。フランスでは老若男女、多くの人にBIOは人気です。どんなスーパーでもある程度BIO製品にスペースを割いているところを見ると、フランス人にとっていかに必要なものであるかが分かります。
(ちなみにBIO製品とは、日本でいうところのオーガニック(有機栽培由来)製品のことです。 フランス農務省が認可する有機栽培(Agriculture Biologique・アグリキュルチュール ビオロジック)由来製品に対しては「ABマーク」と呼ばれるマークがつけられ、それが政府認定のBIO商品であることの証となります。)

アンテルマルシェではBIO製品がかなりの売り場面積を占めています。

アンテルマルシェは、2020年3月の初回のロックダウンからオフィシャルインスタグラムにてオリジナルレシピのみを投稿し続けています。コロナ以前はアンテルマルシェ自体のPRの投稿だったのですが、コロナを機に消費者に寄り添うイメージに。投稿された画像を見ているとまるで料理研究家のアカウントのようです。

BIO製品を用いたレシピの一つ。
https://www.instagram.com/p/CNAO79HKqfo/
出典/ アンテルマルシェ公式インスタグラムより

フランスでは、コロナ禍で人々の健康志向が高まったこともあり、自己管理や環境保護に関心の高い若い世代を中心に、オーガニック・BIO製品の需要は急激に高まっています。元々、右肩上がりの分野ではありますが、フランス政府の調べではBIO食品の売上は、2020年よりも年間で15%増になったそうです。もちろんアンテルマルシェもSNSを駆使してそんなBIOアイテムを紹介することが増えてきたようです。そしてアンテルマルシェではBIO製品を買うと特典があります。

BIOコーナーのポップ。

アンテルマルシェの会員になると、乳児用のBIO離乳食は毎回10%還元、そしてペットフードといったある一部のメーカーの製品も毎回10%還元となります。詳しい内容はアンテルマルシェのFacebookをフォローすると見ることができます。

その他のBIO製品は月に4回以上の購入で10%還元に。(会員のみ)

日常生活ほぼすべてのアイテムをBIOで取り揃えることも可能。

フランスでは、多少高くてもBIO製品を選ぶ人はたくさん存在します。食品だけでなく、今日では衣料や洗剤、シャンプーなどもBIO製の需要が高まっていますので、消費者にはありがたく、提供する側は「より勢いを感じられる」オブジェクトなのではないでしょうか。

清潔志向に向かうフランス、タオルの需要

コロナ禍を通して変わったことといえば、「フランス人の衛生観念」が筆頭に挙げられると思います。清潔な日本人からすると考えられないほど、以前のフランスはちょっと不潔でした。

例えばタオルです。
一家族で一枚のバスタオルを使いまわす、という家庭もありました。
ところが消費者の清潔志向が高まり、共用タオルを避け、個人個人でタオルを持つようになるといった現象がちらほら見られるように。もちろん洗濯の回数も増えました。

期間限定で開催されているアンテルマルシェのお買い得品。こちらは既に値下げされた価格が表示されています。

アンテルマルシェでは、2021年の5月26日から8月29日まで生活応援のため、生活雑貨が最大75%オフになっています。対象アイテムはスーパーごと、期間ごとに変わるようですが、今回はタオルが対象になっていました。一枚2ユーロ~5ユーロほど(約260円から650円)です。

スローガンは「我が家へようこそ。」
小さいことですが、自宅で過ごすことの増えたアフターコロナには嬉しいお買い得品です。

家族全員分を購入すると高価になるバスタオルも、この値段なら大丈夫。クオリティも悪くありません。

こういった小さいながらも持続性のあるプロモーションが、アンテルマルシェが地元の人に愛される理由となっているのは言うまでもありません。

行きたくなるスーパー

自宅で長時間過ごす人が増えたことで、巣ごもり消費や自炊需要が高まりました。​食品・生活必需品を扱うスーパーマーケットは各国で売上が増加傾向にあると言います。

レストランが再開されたとはいえ、アフターコロナでも基本は内食傾向にあると思います。アンテルマルシェのように「行けば何か楽しみがある」と消費者に思われるのが大手スーパーの強みかもしれません。

 

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