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フランス流、捨てない文化——「ブリジットタナカ」が提案する、モノに第二の命を吹き込むスピリット

2017年6月30日、パリにオープンしたコンセプトショップ「Brigitte Tanaka(ブリジット・タナカ)」。フランス人オーナーのBrigitte(ブリジット)さんと、日本人の田中千恵子さんの二人が手掛ける、パリでも1、2を争うホットなスポットとなっています。

Photo:インタビューに答えてくれた田中千恵子さん。shopの前にて

お店に並ぶアイテムの7割がクリエーション、3割がセレクトorコラボ商品というラインナップは、他のショップと一線を画すものばかり。そこでは、今世界で最も急ぐべき問題でもある「ライフサイクル・アセスメント(ひとつの製品が、その寿命を終えるまでの影響を評価すること。サステイナビリティの一環)」の重要性を身をもって体感することができました。

今回は「古き良きもの」に第二の命を与える大切さを私たちに教えてくれる、「Brigitte Tanaka(ブリジット・タナカ)」のアイデアをお伝えしたいと思います!

パリの中心地にある小さなヴィンテージ・コンセプトショップ

高級ブティックが立ち並ぶパリのサントノーレ通り、サンロック教会の片隅に存在するブリジット・タナカ。小さいながらもひときわ存在感を放っています。

Photo:店内はセンスの光るアイテムが並んでいます。

オープンは2017年6月30日。以前は現地フランスのジュエリーブランドにて働いていたという田中さんは、現在のビジネスパートナーであるBrigitte(ブリジット)さんと一緒に仕事をしていたそうです。

旅すること・アンティークマーケット・古くて面白いものが好き、と語る田中さんは「自分たちでもっと楽しいことをしたいね」と、ブリジットさんと共にお店をオープンすることに。

お店のコンセプトは、日本とフランスのブレンド、そして遊び心のあるアイテムを提供すること。そのアイテムは世界中のあらゆる場所で見つけてくるそうです。「例えば、蚤の市など道を歩いていても見つけるし、サロン(展示会)でも見つけるし、自分たちが面白い!と思えば何でもOKなんです」と田中さんは言います。

Photo:人気商品のクロワッサン・ランプ。日本の会社から輸入しているそう。

ただ、他のコンセプトショップを決定的に違うところは、田中さんのセンスでモノに第二の命を吹き込んでいることです。

Photo:老舗香水ブランド『CARON(キャロン)』のアンティーク・ミニボトルをネックレスにリメイク。

例えば写真のように、アンティークの香水ミニボトルをネックレスにリメイクしたりと、古き良きものを現代版にリバイバルしています。

Photo:こちらは古本。

Photo:見開きページ。

Photo:古本をノートにアレンジ。

このように、本来なら捨ててしまう物を見逃さず、独自の審美眼で再生していることに、私は感動すら覚えました。渡仏してからというもの、フランス流の「捨てない文化」に徐々に慣れてきたとはいえ、やはりフランス人の「モノを大事にする姿勢」にはいつもハッとします。

パリの街を歩いていると"La Retoucherie"という看板をよく見かけます。これは街の洋服お直し屋さんのことですが、最初はこんなに沢山あって需要があるのかな?とさえ思いました。

やはりフランス人は服を捨てません。ボロボロになっても捨てることはなく、お直しに出して長く着るのです。そして母から娘へ、父から息子へ、さらには祖父母から孫へと、思い出と共に伝わっていきます。「エコ大国フランス」と言われて久しいですが、この国民性と“サステイナビリティ”が非常に相性が良く、相乗効果でここまで浸透しているのではないか、と思うのです。

長く持ちたいマイバッグがここに

さて、ブリジット・タナカで大人気商品となっているマイバックの魅力をご紹介したいと思います。日本でも大人気というオーガンジーのバッグ。現在4種類の展開です。オーガンジー素材に総刺繍で仕上げた特徴あるショッピングバッグ。透け感とデザインが光る一品です。どの国の人にも人気で、オンラインショップでは特に受注が多かったそうです。

Photo:「BOUCHERIE」バッグ。

Photo:「POISONNERIE」バッグ。

Photo:「PHARMACIE」バッグ。

Photo:「BOULANGERIE」バッグ。

「オーガンジーは破けやすい、というイメージに反して実は頑丈な素材なんです。そしてオーガンジーに刺繍はとても珍しいので、インドの工場に刺繍を頼んでいます」と田中さん。「プラスチックバッグが透明なので、より透明に近く仕上げたかった」とのこと。

確かにコットン素材のバッグよりはるかに軽くかさばらないので、マイバッグとしてぜひ一つは持ちたくなります。壁掛けの食材入れとしても重宝しそうです。

Photo:「SAC POUR LA LUTTE CONTRE LE SAC PLASTIQUE(プラスチックバッグに対抗するバッグ)」のメッセージ入り。

日本では2020年7月1日より、プラスチックのレジ袋有料化が義務となりました。しかし日本での今回のレジ袋有料化は、世界中で大きな問題となっている「海洋プラスチック問題」解決に向けた第一歩にすぎません。

懸念しなければいけないことの一つとして挙げられるのは、ダイバーシティ(多様性)が進むにつれ、また使い捨て文化が浸透してしまうのではないか?ということです。

「オシャレなエコバッグ」を持つことがトレンドとなりかねない今、「マイバッグに変える意味」を、根本からきちんと理解する必要があると思うのです。マイバッグを使うなら、できるだけ多くの回数を利用することが重要です。危険なのは、人々がそのようなことに気を使わないことです。

少し汚れてきたから、あるいは新しいデザインを手に入れたいという理由で別のマイバッグを買ってしまえば、環境に対して健全なことをしているように見えても、実際にはプラスチックバッグを使う以上に多くの環境資源を消費することになるのです。

大好きなものをより長く、継続的に使用する。ブリジット・タナカで扱うマイバッグに込められたメッセージと共に、環境問題と向き合いながら大事に使いたいものですね。

「今後はさらに6種類増やす予定で、同じ素材でリュックも作ろうとしています。」とのことでしたが、永久的に使える素敵なバッグの登場が楽しみです。

あの素材もリメイク・マスクに

コロナ禍で必須アイテムとなったマスク。今や世界の主要都市で着用義務となっているわけですが(2020年9月28日現在、フランス大都市部ではマスク不着用だと135ユーロの罰金が科せられます)ここにも田中さんのリメイクのセンスが光っていました。

Photo:ショーウィンドウには日本でよく見るあの素材が。

Photo:日本の風呂敷をマスクにリメイク!新発売になったばかり。

Photo:田中さんの友人である刺繍作家さんが施したリメイク・マスク

Photo:色合いとデザインが絶妙です。

なかなか見かけないデザインですが、これはオーナーのブリジットさん宅の古い壁生地をリメイクしたもの。「絶対に捨てたくない!」と思わせる商品力も見事です。

ヴィンテージの魅力を伝えたい

既製品でも魅力的なものはたくさんありますが、ヴィンテージの魅力は、リメイクをすることによって「楽しみ」が倍増することです。「物を大切に」とスローガンを掲げるのは簡単ですが、やはり心から楽しまないと続かないものですよね。

ブリジット・タナカの今後の展望を聞いたところ、「まずは、色んな出会いを大事にしていきたい!意外性のある物と出会える幸せ。それが人であってももちろん、自分たちが知らない物を探したり、ワクワクしたりすることが一番です。」と、コロナ禍をものともしない明るさに満ち溢れていました。実際にお店に入るとワクワクした気持ちになります。

Photo:オリジナルのミニマッチ。コラボ製品も豊富です。

リメイク商品がこれほど嬉しい気持ちにさせてくれる。それは、意外性があるのはもちろんのこと、原点回帰の必要性を自己に訴えかけるものでした。

「やはり日本とフランスのフュージョンをコンセプトにしているので、今後は日本の会社とコラボしたり、実際に日本にもお店を出してみたい!」と語る田中さん。人気のオーガンジーバッグをはじめ、アクセサリーやカバンなど、OEMにも力を入れたいとのこと。

フランスでは、2025年までに国内で使用されるプラスチックを100%リサイクル可能なものにする方針が打ち出されました。世界中の国々が遅かれ早かれこの取り組みを急がなければいけません。

プラスチック・フリーの概念だけでなく、まずは「自宅にある身近なものに愛着を持つ」というスピリットを今回は教えていただいたような気がします。ブリジット・タナカのリメイクアイデアと共に、「モノの大切さ」が世界中に広がっていけばいいなと心から願っています。

Brigitte Tanaka(ブリジット・タナカ)
https://shop.brigitte-tanaka.com/ja
18 rue Saint-Roch 75001 Paris
+33 (0)1 42 96 30 49
paris@brigittetanaka.com

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