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広大な売り場で輝くPOPのショーケース

巨大な店舗面積、体積を誇るアメリカのスーパーやドラッグストア。日本で見かけるような棚に備え付けるタイプの販促ツールももちろんありますが、この店舗の広さや天井の高さを活かした大量陳列用の巨大なPOPもたくさんあります。また、日本ではあまり見られない強いニュアンスのメッセージが活用されている場合も。今回はそんな商品周りのクリエイティビティをご紹介いたします。

スポーツ観戦のお供に:地元チームを盛り上げる販促物

イリノイ州では、シカゴ・カブスやシカゴ・ブルズなど地元の様々なスポーツチームを熱烈に応援しています。各シーズン中には、テレビ観戦を楽しむためのスナックやアルコールの大規模なキャンペーンが展開されます。特に厳しい寒さのイリノイの冬は、暖かい家でくつろぎながらスポーツ観戦するのが定番の楽しみ方。販促活動も規模が拡大し、複数のブランドや商品が共同の売り場で展示されます。

アメリカの5大スポーツ(アメリカンフットボール、バスケットボール、野球、アイスホッケー)の中でも人気の高いアメリカンフットボールは、真冬の楽しみの一つ。スーパーボウルでは豪華なハーフタイムショーが全米を沸かせます。イリノイ州でも地元チームであるシカゴ・ベアーズの試合は多くの人が楽しみにしています。

焼き菓子系の大手メーカーとして知られるナビスコは、イリノイの企業モンデリーズ社の子会社だからか、ここでは常に大量の商品が陳列されています。スーパーボウルのテレビ観戦にはピザ、ナチョス、スパイシーチキンなどが欠かせないスナックですが、ナビスコはリッツなどのクラッカーをそこに加えるべく、キャンペーンに力を入れています。

ナビスコはテレビCMを頻繁に投入するだけでなく、スーパーにもリッツやオレオなどのナビスコ商品が陳列された巨大な売り場を構築しています。アメフト選手の等身大立て看板を中心に据え、スポーツ観戦の興奮を引き立てています。

ナビスコの什器

画像1

モンデリーズ社の商品が上段と両脇に配置されていますが、意外なことに中央下段のスイートスポットには乳製品の大手メーカー・クラフト社の「ヴェルヴィータ」というプロセスチーズが置かれています。

このチーズは、家庭で溶かしてクラッカーやナチョスのディッピングとして使われる、クラッカーになくてはならないものではあるのですが、スーパーの店員さんが勝手にナビスコ用の販促棚の真ん中に陳列しているのか、それともクラフト社とのコラボ企画なのか、いずれにせよ客側としては買い忘れを防ぐ、ありがたい構成となっています。

2月のスーパーボウルが終われば、バスケットボールのシーズン到来です。

穀物系商品の大手メーカー、ケラノヴァ(旧ケロッグ)の主力商品「チーズ・イット」を中心としたバスケシーズン向けの陳列棚が登場しました (画像2)。ケラノヴァ社もイリノイ州に本社を構えており、地元ならではの力を入れたプロモーションなのかもしれませんね。

ケロッグの什器はバスケシーズン向けになっています

画像2

選手じゃなくて審判を立体化しているあたりもちょっと面白いです(画像3)。

審判が立体になっている

画像3

アメリカではモータースポーツも盛んで、レッドブルの特設コーナー(画像4)もそのスケールの大きさが際立っていました。冷蔵ケースの扉を車のドアに見立てたアイディアも面白いですね。

レッドブルの什器は車型

画像4

それにしてもどの販促物も、かなり大きい上に組み立ても複雑で手間がかかりそうなのですが、それでもしっかり作り込まれています。全て美粧ダンボールで製作されていて、印刷もきれい。コストもかかっていると思いますが、これだけ目立てればリターンも大きいのでは?

イベントで感じる四季

こちら(画像5)は冬の間だけ出現する超巨大大量陳列コーナーです。これはコーナーというより、もはや立派に一つの売り場です。売られているのはチップス、トルティーヤや、それにつけるディップ、それに炭酸飲料など、メーカーやブランドにこだわらず冬の間を楽しむ商品が集められています。

この超巨大な大陳コーナーは冬の間だけ現れて、春になれば解体されて、置かれていた商品達はそれぞれの売り場に戻っていきます。こんなところに移ろいゆく季節のあわれを感じたりして。

冬限定の超巨大大量陳列コーナー

画像5

冬ならではの販促アイディアは他にもあります。雪だるま型のシェルフタイプ(画像6)や、クリスマスのギフトボックスをトップに配置したダンボール棚(画像7)など、寒い季節も楽しくなるような表現が満載で、季節感豊かに演出しています。

雪だるま型の什器

画像6

段ボール棚

画像7

春になると、イースターエッグにちなんだお菓子の売り場が登場します(画像8)。イースターのモチーフとしては、何と言ってもうさぎが代表的ですが、子供たちが楽しむエッグハントからインスパイアされた、たまごやひよこをモチーフにしたお菓子もたくさん販売されています。春を迎えた喜びに溢れた雰囲気が漂う販促が魅力的です。

イースター向けの什器

画像8

クリスマスやイースターに次いで、秋にはハロウィンにちなんだ巨大な販促コーナーが建ちます。ハロウィンは元々家をデコレーションするイベントでもあるため、売り場の飾り付けにも気合が入っているようですね(画像9)。

特にイメージカラーがオレンジのReece’sはハロウィンの覇権ブランドと言えるでしょう。Reece’sで建てられたダンボール城が建てられました。10月の初めにはジャックオランタンの風船や、魔女の人形などはなかったのですが、次第に城に追加されていき、31日のハロウィン当日には最高潮に達し、お菓子でできたオバケの古城が完成します。

ハロウィン什器

画像9

通常のお菓子売り場もご覧の通り、ハロウィン仕様の輸送段ボールが棚を占拠します(画像10、11)。左右でつながる絵にして、売り場を広く見せる手法は日本でもよく見られますが、このくらい棚の奥行きが広いとその効果も一層際立ちます。

売られているのは、トリックオアトリートで子供達に配るためのばら撒きやすい個包装のお菓子のアソートです。一袋が大きめの枕くらいのサイズとなっています。

ハロウィン仕様の什器

画像10

ハロウィン仕様の什器

画像11

企業を支える地元愛

イリノイやシカゴの企業の商品限定コーナーです(画像12)。この辺のスーパーにはよく見られる売り場ですが、アメリカのどこの州にもあるのでしょうか?「CRAFTED in ILLINOIS(イリノイ産)」の看板が掲げられた、この棚の上から下まで全部がイリノイの商品です。地元愛の強さを感じさせますね。

ローカル企業限定のコーナー

画像12

こういった地元産商品の販促棚は、地元愛を表現する様々な手法が使われています。例えば「We love local.(地元大好き)」と書かれた什器(画像13)には月替わりで異なるイリノイ商品がプッシュされ、地元製品へ注目させるようにしています。

ローカル企業の什器

画像13

ここまで大きな什器でなくても、プライスカードの下に地元産を示すPOPステッカー(画像14)がつけられているものも。イリノイ州のシルエットとともに書かれた『LOYAL TO Local(地元への忠誠)』のメッセージは、商品名を隠さんばかりの高い目立ち度です。「LOYAL」=「忠誠」、「忠実」といった言葉を使ってくるあたり、消費者に買い支えを推奨する響きとしては押しが強すぎる気もしますが、だとしても「引き」になるアピールポイントなのでしょう。

地元産のPOPステッカーが貼ってある

画像14

オーナーを消費者が支援

買い支えやサポートを促すのは、「地元愛」だけではありません。

「ブラックオウンドビジネス(黒人が経営するビジネス)」や「ウーマンオウンドビジネス(女性が経営するビジネス)」など、今までビジネスにおいて不利とされた経営者の属性を示して応援するような販促メッセージもよく目にします。

ドラッグストアで期間限定の特設コーナーにあったのは黒人がオーナーや設立者であるブランドの商品を紹介するPOPです(画像15)。

商品紹介用POP

画像15

これは多様性や包摂性を強調し、購買者にそのビジネスを支援するよう促す一環として採用されているのでしょう。今月2月はアメリカの黒人歴史月間ですので、特に力が入っているのかもしれません。

最後に

大量陳列を伴う巨大な販促コーナーは、地震が多く、店舗面積もアメリカほど広くない日本ではなかなか見られないスケール感で圧倒されます。また、設計が緻密で組み立ても丁寧。

地元応援やオーナー支援の販促策も、多様化や包摂性を大事にするアメリカのトレンドに則しているのか、販促の視点としてもメッセージに勢いがあります。

アメリカを観光ツアーで訪れる際には、スーパーに立ち寄る時間が限られるかもしれませんが、商品や販促物に対する感度が高いパケトラ読者の皆様にとっては、その価値は高いと思います。

 

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