廃棄食材で「紙」が作れる!
皆さんは、日頃使っている「紙」がどのように作られているか知っていますか?木から作られていることは、なんとなく知っている方が多いのではないでしょうか?
近年、エコ・サステイナブルな取り組みやSDGsへの関心が高まる中、木ではなく「本来捨てられるはずの廃棄食材」から紙を作る企業が生まれているのです。今回は、次世代の「紙」についてお伝えします。
一般的に紙はどうやって作られている?
紙は「パルプ」という繊維から作られます。木材や草などの原料から取り出された植物繊維が、紙のベースになっています。また、木材の他にも、古紙や合成繊維などを使用したパルプも存在しています。それらパルプに加熱や洗浄、漂白などの様々な加工を施すとパルプが完成します。
その後、パルプの繊維を毛羽立たせ、薬品を調合し、均一に繊維を広げるために「抄紙(しょうし)」という作業を行います。そして熱でパルプを乾燥させ、表面を滑らかにする加工を加えることで紙が完成します。
こちらは一般的な紙の作り方であり、紙の種類によって作り方は様々です。
「木」以外の素材でも紙は作れる
木以外の素材では、コットン、ケナフ、亜麻、古紙などが紙の原料になっています。また、維質の多いものを食べる象のウンチ(!)でも紙を作ることができます。
また、食べ物であればバナナの茎やサトウキビからも紙を作れることは既に認知されています。では、食べ物の中でも、本来捨てられるはずだった「廃棄食材」に絞ってみるとどうでしょうか。
例えば、食品を加工する際に排出されるビールや茶葉の搾りかす、おから、トウモロコシの表皮からも紙を作ることができます。これらで作られている紙は、総称して「シリアル繊維混抄紙 (せんいこんしょうし )」と呼ばれています。
廃棄食材から作られた、イタリア生まれの紙「Crush(クラッシュ)」
イタリアの製紙会社、Favini社は、オレンジ、コーヒー、アーモンド、キウイ、オリーブなどの廃棄食材から作られたエコフレンドリーな紙「Crush(クラッシュ)」を開発しました。
原材料の名残をあえて残し、色合いや手触りなどの風合いがそれぞれ異なるのが特徴です。捨てられるはずだった食材を上手く活かし、環境負荷軽減を通じてユニークな紙に生まれ変わらせています。
クラッシュは、モンテカルロで開かれた「Luxe Pack(国際高級品包装見本市)」で「Luxe Pack in Green賞」を受賞しています。革新的な製品かつ高級品向けの印刷にも適しており、サステイナビリティにも高い価値があるということが受賞に繋がりました。
和紙の老舗工房が作ったエコフレンドリーな紙「Food Paper(フード・ペーパー)」
日本でも、越前和紙の老舗工房「五十嵐製紙」が廃棄食材からエコフレンドリーな紙「Food Paper」を生み出しました。
たまねぎ・じゃがいも・にんじん・みかん、ネギ、ぶどう、ごぼうなどを使用し、手漉き和紙と同じ伝統的なプロセスで作られる「Food Paper」は、ノートやメッセージカードに使用されています。
五十嵐製紙は、日本国内のフードロス問題に対して紙づくりを通じて一端を担いたいという気持ちで、農家や飲食店から相談を募集されています。全国の給食センターや飲食店から出る野菜の端切れからも紙を作ることができるそうです。
こんな食材からも紙が作れる
ここまで野菜や果物から生まれた紙をご紹介しましたが、他にもこんな食材から紙を作ることができます!
海老の殻が紙になる!
せんべい等、海老を使った加工品を作る工程で出た海老の殻を細かく砕き、紙の原料に混ぜ合わせることで、海老の殻を使ったエコフレンドリーな紙を作ることができます。
つまり、商品であるせんべいを海老の身で作り、その製造工程で出た殻は廃棄せずに紙となり、商品を包むパッケージにその紙を使うといった環境にやさしい取り組みができるのです。
コーヒーかす・お茶の出がらしが紙になる!
コーヒーかすやお茶の出がらしからも、紙が作れます。
北欧などエコへの関心が高く発展している国では、コーヒーかすが石鹸、スクラブ、きのこ栽培セット、スニーカーなどあらゆるものに変身していますが、日本でも「紙」に生まれ変わらせることができます。さらに、コーヒーかすやお茶の特徴を生かし、それらの香りがほのかに漂う仕様することも可能なのです。
カフェやコーヒー・お茶の専門店でギフトを購入したときに、このような紙で作られたパッケージで包装されていたら素敵ですよね。
廃棄食材から作られた紙を使って、企業のブランディングを強化できる
食品会社やレストランなどから出た廃棄食品で紙を作れば、捨てる食材の量が減り、サステイナブルなビジネスに繋がります。また「自社で出た廃棄食材で商品を包むパッケージまで使っている」と謳えば、環境にやさしい取り組みをしているというブランディングにも貢献できます。
近年、企業がどういった理念を持ち、どのような対策をしているか、地球にも人にもやさしいエシカルな行動をとっているかなどを、消費者は厳しく見極めるようになりました。エコフレンドリーな紙を用いた包装を使用することは、企業にとっても大きなブランディング戦略に繋がるはずです。
まとめ
紙のメイン原料にはならない食材でも、他の繊維と混ぜ合わせることでサブの原料として使用することができる場合もあります。今後は環境に配慮した素材を使った紙がもっとたくさん増えてくるのかもしれません。
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