表面のデザインや、箱の形などに注目が集まるパッケージデザインですが、そもそもパッケージの一番の目的は「中身の保護」。美しいデザインや外見の形状も、この中身の保護があってのこと。
そんな中身をがっちり守っている縁の下の力持ちが、中ゲスなどと呼ばれる「仕切り」です。
仕切りの役割は、箱の中で商品が動いて破損しないように、文字通り「仕切る」ことですが、時には額縁となって商品を引き立たせ、より良く見せるという効果もあります。
そんな訳であまり注目されない「仕切り」ですが、昨年とても「仕切り」に魅せられた商品がありました。
名菓ひよ子
有名なお土産「ひよ子」の期間限定、地域限定の商品です。浅いフタの組箱にシールというデザインも素敵なのですが、最も印象に残ったのは斜めの「仕切り」でした。
パッケージを作る時はまず中身(商品)のサイズ、入り個数、配置の方法から、内径を割り出して身箱のサイズが確定します。この斜めの仕切りの素晴らしいところは、商品を魅力的に見せるにはどうすればよいかを表面デザインや紙の素材だけに頼らず、「どう置くか」からはじめたところだと思います。
商品を作る際に意外とこの発想は出てこないもの。コストをかけにくいところなので、つい一般的な商品の配置で、表面デザインだけに注力しがちです。このパッケージの場合は、この斜めの配置が生きる表面デザインとの相乗効果でより完成度が高まっていて、魅力を感じるのでしょうね。
また、変わった仕切りにすることでアッセンブル(商品詰め)の手間や輸送テストなども必要になり、想像以上に工数は増えているはず。それを乗り越えての商品なので、なおさら凄い!と思いました。
実は以前から「ひよ子」でもうひとつ気になっている「仕切り」があります。それがこちら。
五角形の箱に「ひよ子」が入っているのですが、この仕切りもまた見事なのです。先ほどの東京メープルひよ子と同じ系列の、株式会社ひよ子の商品でした。
仕切りを取り出して広げたら五角形になるところも美しいです。
5つの空間をほぼ同じ面積にする計算はすぐにできても、前出の商品同様、紙の厚みや反発、組み立てやすさ、アッセンブルのしやすさ等、商品になるまでの多くのハードルを超え、最終形がシンプルで美しいところに感銘を受けます。
ル・ショコラ・アラン・デュカス マカロン3つ入り箱
もう一点紹介したいのは、ル・ショコラ・アラン・デュカスのマカロンボックス。フランス発のチョコレートブランドですが、日本にも工房があります。ショッパーを兼ねた外箱も秀逸です。
大きな3つのマカロンが入っていたのですが、この仕切りが半円の曲線だったのです。丸くてふんわりしたマカロンとこの仕切りがとてもマッチして感激しました。
仕切りを取り出すとこのような形状。マカロンとマカロンの間も限界ぐらいの幅で、ラインがとても優雅です。
トムソンで抜くには紙の幅をもっと太くした方が安心、でもマカロンを入れやすくするにはこれぐらいの空きがほしい、そして曲線の角度はこれぐらい、などなど、できあがった展開図をみるととてもシンプルですが、様々な調整がなされたことは想像できます。
花王ソフィーナ アルブラン 薬用美白ハンドクリーム リミテッドセット
最後に、仕切りにデザインが入ってより効果的に見せている商品を紹介します。花王のアルブランというブランドから期間限定で販売されたハンドクリーム。シロクマのデザインがとても可愛らしいパッケージです。
フタが二重になっていて、片方をあけるとストーリーが出てきます。さらにもう一方を開けると...
商品と仕切りが一体になって、ストーリーの世界観が広がります!こちらは「ひとりで使っても良いし、誰かとシェアしても良い」というコンセプトとのことで、違うデザインの2つのハンドクリームがペアになっています。
中身を取り出してもまた違うイラストが出てきて和みます。ハンドクリームの入れ方も上下逆にすることで無駄なスペースを生まず、きれいに収まっています。ちょっとゆるめのイラストで優しい雰囲気ですが、計算され尽くしたパッケージですね。こんなに本体と仕切りに一体感のある商品はなかなかありません。
たがが仕切り、されど仕切り。
商品を守る大切な役割だけど、目立たないのでコストは抑えたい...誰もがそう考えます。「商品の保護」という機能が大前提ですが、そこに着目してデザイン性のあるものにすることで商品の見え方が変わったり、ブランド感がアップしたりするのではないでしょうか。
今後も「仕切り」が素敵な商品に注目していきたいと思います。
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