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日本3大パッケージコンテスト

日本には3つのパッケージコンテストが存在します。
公益社団法人日本包装技術協会の日本パッケージコンテスト、一般社団法人日本印刷産業連合会のジャパンパッケージコンペティション、公益社団法人日本パッケージデザイン協会の日本パッケージデザイン大賞(隔年開催)の3つです。

それぞれの主催団体の特性を反映して、大枠的には日本パッケージングコンテストが技術志向、ジャパンパッケージコンペティションがマーケティング志向、日本デザイン大賞がデザイン志向の特徴を持っています。
今回はこの3つのコンテストを通じて日本のパッケージのトレンドを整理してみたいと思います。

日本パッケージコンテスト

まず2022年6月28日に発表された日本包装技術協会の日本パッケージコンテストの最高賞であるジャパンスター賞の経済産業大臣賞は、物流に絡む『海外向けシート輸送固定材のオール段ボール化改善』スズキ株式会社/王子コンテナー株式会社が受賞しました。
従来の海外向けシート輸送にはスチール製固定材を使用しており、高コストなことに加え組立や製品固定にボルトを使用するため梱包作業に時間がかかること等、改善の余地がありました。

今回、輸送固定材を段ボールにすることで、収容効率の向上(33%)や作業性の向上(固定作業の削減)資材の軽量化(77%削減)低コスト化とカーボンニュートラルの削減を実現しています。

日本パッケージコンテストは2021年の最高賞に日立物流の『大型装置の国内輸送用梱包材開発』を選んでおり、ロジスティック分野の動向に注目しています。

スズキニュースリリースより@https://www.suzuki.co.jp/release/d/2022/0825/

日本パッケージコンテストのジャパンスター賞は同時にWPO(World Packaging Organization)のWORLDSTAR GROBAL PACKAGING AWARDの出品資格を得ることができます。

2022年のジャパンスター賞にはスズキに加えて、P&Gジャパン合同会社の『PE 単一素材詰め替えパウチ「新パンテーンエフォートレスシリーズ」』が経済産業省産業技術環境技術賞を受賞しています。軟包装はバリア性などの機能を高めるために、複数のプラスチックフイルムで構成されることが多く、それぞれのフイルムを分離してリサイクルする必要があるため、なかなかリサイクルが進まない状況にあります。

モノマテリアル化はそのネックを解消するための打開策です。その他のジャパンスター賞でも株式会社東芝の『リチウムイオン電池100%リサイクルEPSと極限収納』、株式会社豊島屋『鳩サブレーのパッケージ紙化 「紙ピロー包装」』などリサイクルや紙化対応の持続可能性対応案件が授賞しました。

パンテーンホームページより@https://pantene.jp/ja-jp/ecopouch

ジャパンパッケージコンペティション

1962年より開催されているジャパンパッケージングコンペティション(JPC)展は、時代のニーズを先取りするコマーシャルパッケージ(商品包装)の優秀さを競う展示会です。

近年パッケージデザインには、使いやすさなど従来の機能に加えて、安心・安全、環境への配慮など多様な要求がなされており、社会的責任も増大しています。JPC展は商品化されたパッケージを広く募集しそれらを総合的・多角的に評価しています。

ジャパンパッケージコンペティション2022は最高賞の第1部門(保護、機能、構造、デザイン等、市場性に最も優れているもの)に花王株式会社『量り売り堂』、第2部門(安全性、リサイクル性、環境対応等が特に配慮され、最も優れているもの)に、コーセー株式会社『雪肌精クリアウェルネス UVディフェンスシリーズ』の2点が経済産業大臣賞に輝きました。

『計り売り堂』は洗剤など4品の量り売りを店舗・期間限定で試験的に展開しました。店頭で購入できる独自ボトルか使用済ボトルを持ち込めば希望量を繰り返し購入できます。

全体的なコンセプトはのれんや風呂敷などをモチーフとし、日本古来の「もったいない精神」がベースになっています。SDGs 達成への意識が高まる中「容器を捨てない」という大胆な選択肢を消費者に提示し、独自ボトルに付されたロゴやサインもごく小さくシンプルで、家庭でも親しめるミニマルデザインが採用されています。

ウエルシア薬局の2店舗で期間限定にて開始したこの試みはゴミを削減するという身近なサステナブルな取り組みに加えて、少量から試せるというメリットに対するユーザーの好反応とリピート需要も取り込み高評価でした。

『雪肌精クリアウェルネス UVディフェンスシリーズ』は地球環境に対応して、外装パッケージに紙素材だけを使ったパウチを採用し容器は水滴形状を元にした造形でバイオマス素材を採用。プリントレス、ラベルレスで、製造工程を減らして生産から使い終わるまで持続可能な工夫が凝らされています。

経済産業省製造産業局長賞は強度を維持しながら紙使用量を大幅に削減したアサヒビールのエコパック、紙を基材として、プラスチックと比較してCO2排出量を18%削減した日本コカ・コーラ株式会社の『1,2,CUBE』が授賞しました。

アサヒビールニュースリリースより@https://www.asahibeer.co.jp/news/2022/0524_1.html

日本パッケージデザイン大賞2021

日本パッケージデザイン大賞は隔年開催なので最新の2021年度を取り上げます。

2021パッケージデザイン大賞に輝いたのはパッケージコンペティション2021でも最高賞を授賞した『サントリー緑茶 伊右衛門600mlペット ラベルレス』です。デザインを担当したサントリーによれば、美しい水色を活かしたいこととそれまでの竹筒のイメージを大きくて変化させたいという思いを実現しています。

パッケージデザイン大賞はパッケージデザイン協会に所属している企業及びデザイナーなどの個人会員が中心で審査をしているので、企業中心のコンテストと異なり製品の売上やシェアなどのマーケティング的な要素よりは純粋にデザイン的な視点で審査されます。

サントリーニュースリリースより@https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1215

 

大賞に続く金賞には株式会社つと『小金井生はちみつ』、株式会社BULLET『人と木とひととき』などきらりと光る作品が選ばれています。

『小金井生はちみつの』ラベルデザインは文字中心でシンプルに構成されています。文字中心のデザインは海外のデザインコンペティションでもトレンドになっており、クリエイティブなフォントや、カスタムレタリング、ハンドレタリング、ミニマリストデザインが良く使われています。

つとホームページより@ https://tsuto.jp/works/474/

パッケージの世界も持続可能性

プラスチックゴミによる海洋汚染問題に対して、2030年までにすべてのプラスチックをリユース、リサイクル、回収可能にすることを目指す各国のプラスチック規制強化に基づいて日本の包装業界および関連業界も対応が強化されています。

これを受けてパッケージにもさまざまな動きがでています。具体的には、包装容器の減量化、プラスチックから紙素材への転換、フイルムのモノマテリアル化などが進められています。

3大パッケージコンテストもこのような背景を受けて、サステナブルなパッケージがクローズアップされています。中でも今回のジャパンパッケージコンペティションの「計り売り堂」、パッケージデザイン大賞のラベルレスパッケージはある意味でパッケージの本質を否定するようなメッセージが含まれた作品であり、今後のパッケージ業界の変革を予想させます。

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