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おいしさはマイクロウェーブに乗って:イリノイのレンジアップ商品

日本在住時にお世話になっていたレンジアップ商品は、イリノイでも豊富に販売されています。ただし、商品企画の傾向には少し違いがあり、私と電子レンジとの関わり方も変わりました。

ちなみに「レンジアップ」という言葉は和製英語で、アメリカでは「マイクロウェーブ(microwave)」と表記されています。日本では電子レンジにオーブン機能がついているのが一般的ですが、こちらでは電子レンジは主に温めや解凍に使用される家電です。大きなオーブンは別途メインの調理用具として設置されていて、各々役割が異なります。

『BIRDS EYE』という野菜中心の冷凍食品ブランドでは、電子レンジ料理シリーズ(画像1)は「MICROWAVE(電子レンジ)」をメニュー名より大きく表記しています。一方のオーブン料理シリーズ(画像2)も 「OVEN(オーブン)」の表記がメインに。

このようにパッケージ表記でも明確に分けているように、この二つは別物感が強いことがお分かりいただけるのではないでしょうか。

BIRDS EYE』という野菜中心の冷凍食品ブランドの電子レンジシリーズ

画像1

電子レンジシリーズ

画像2

一口大の朝食:エッグバイツ『JUST CRACK an EGG』

「エッグバイツ」はアメリカの朝食の定番メニューで、直訳すると「一口分のたまご料理」という意味です。オムレツや目玉焼きのようなボリュームのあるたまご料理ではなく、よりライトな感じです。溶き卵にほうれん草やベーコンなど、好みの具材を入れて加熱するだけで出来上がり。

このエッグバイツ、スターバックスコーヒーの朝の人気メニューでもありますが、手軽に作れるため、家庭用レンジアップ商品も一人分を1カップ単位で販売されています。様々なメニューのバリエーションも豊富で、売り場では目立つ位置を陣取っています(画像3)。

棚に並んだエッグバイツ

画像3

この写真の棚2段目にある『JUST CRACK an EGG』は、直訳すると「たまご一個を割るだけ」という意味になります。このブランド名は非常にキャッチーですし、たまごの形をした看板も視覚的に分かりやすく、"an"に下線が引かれているのは「たった1個」で手軽に調理できることが強調されています。

私もスクランブルエッグを購入し、試してみました。(画像4)

シズルカットも中身がわかりやすい。具材がこんな風にカットされて入っているのかな?そうだとしたら手間要らずですね。

エッグバイツ単品

画像4

では実際中身はどうなっているかというと…。蓋を剥がしてみたらこのように(画像5)。おお…具材ごとに分厚いフィルムのパウチ包装…。

蓋を開けた状態

画像5

外見から受けていたお手軽な印象が一気に失われましたが、気を取り直して作っていきましょう。全ての具材のパウチを開き、たまご一個を割り入れて混ぜ混ぜ。このようになりました(画像6)。

作る過程

画像6

具材は個別包装されているので全てフレッシュですね。そしてチェダーチーズとベーコンとポテトの王道の組み合わせ!美味しくできそうな予感がします。

オーブンと違い、電子レンジだとプラカップのまま調理できるのはいいですね。

40秒ほど加熱して一旦取り出し、よく混ぜて再度レンジに戻して30秒加熱。

うーん、具材ごとのパウチのゴミもたくさん出ましたし、分割して加熱するなど結構手間もかかってめんどくさいような気がしてきましたが、私がズボラだからでしょうか?

…とにかく30秒待って、とりあえず完成です!(画像7)あんまり見た目はよろしくないですが、スクランブルエッグですからこんなものでしょう。

完成

画像7

ここまでの工程で、私の中ですっかり手軽なイメージを失ってしまったので、手軽さポイントを挽回してもらうために、あえて器に移さずカップのまま試食しました。

お味は当たり前のようにたまごとベーコンとポテトとチーズの味。悪くはないのですが、具材の味がそのまま感じられるのみといったところでしょうか。

改めて振り返ると、調味料は一切同梱されていなかったのです。もしこれが日本の商品だったら、何らかのシーズニングや調味料が添付されていて、家庭では再現できない味とか価値を持たせて販売されている気がする…そんなことを考えながら、自分でケチャップをかけて食べ切りました。

レンジで炊き立てパックご飯:VeeTee/Minute

近所のスーパーでは、去年までパウチタイプの湯煎ご飯しか売られていなかったのですが、最近はいろんな種類の商品が並ぶようになりました。ヴィーガン需要が増えた影響でしょうか。

最初にご紹介するのは、日本でもお馴染みの姿のトレータイプのレンジアップご飯です(画像8)。

レンジアップごはん

画像8

白米ではなく、フレーバーのついたご飯がメインのシリーズですね。作り方は日本の商品と同じで、シール蓋をちょっと剥がして蒸気を抜き、レンジで数分温めるだけです。アジアのイメージが強いラインナップからか、グラフィックもアジアン雑貨のようでおしゃれでかわいいです。

次は白米のレンジアップ商品、Minuteです(画像9)。このブランドは元々湯煎タイプのパウチご飯で有名ですが、最近レンジアップタイプも入荷しました。

カップタイプで、トレーではないのが面白いですね。中まで均一に熱が通るのかは気になりますが、それは他のカップタイプのレンジアップ食品も同じことですしね。きっと美味しく温められるのだと思います。

白米のレンジアップ商品Minute

画像9

これは2カップ入りでスリーブに入れて販売しています。最初は違和感がありましたが、徐々にカップもご飯茶碗ぽくていいかも?という気がしてきました。シズルカットは白米の中心に赤い梅干し…ではなくてミニトマトの輪切り。さすがに日の丸弁当の写真ではありませんでした。

アジア料理の普及とともに、炊飯器がない多くのアメリカの家庭では、ちょうど良い炊き加減のご飯が一食分ずつ作れるのは便利でしょう。このレンジ対応パッケージはまさに炊飯器の代わりとなっているわけです。

聴覚で作るポップコーン:『POP・SECRET』

日本でも人気のポップコーン店『ギャレット』は、イリノイ州シカゴ出身のブランドなのです。『ギャレット』で出来立ての缶入りポップコーンを買って来て食べるのも魅力的ですが、家庭で作ることも一般的です。

いろんなメーカーからレンジアップのポップコーンが販売されており、その作り方はだいたい同じです。今回はこの『POP・SECRET』(画像10)を例にして作り方をご紹介します。

POP・SECRET

画像10

こちらはダブルバター味の6袋入りです。耐油紙でできた茶袋(画像11)の中にポップコーン用のとうもろこしが入っています。

茶袋に入った状態

画像11

早速作ってみましょう。フィルムを剥がして茶袋を広げます(画像12)。作り方は英語だけでなく、フランス語とスペイン語でも記載されているので、カナダや中南米でも展開されている商品のようですね。

広げた状態

画像12

平たいままの袋をレンジの中に寝かせて、4分間セットしてスイッチオン。

大抵のレンジアップ商品にはワット数と時間が記載してありますが、この商品には具体的な目安は書いてありません。作り方は「電子レンジを使い、ポップコーンが弾ける音をよく聴く」(画像13)と書いてあります。この耳をそば立てている解説イラスト、ちょっと面白くないですか!?「ポンポンと弾ける音の間隔が開いてきたら電子レンジを止めること。4分以内にできるけど、袋によっては1分30秒でできることもある」と記されており、かなりアバウト。

音が聞こえる様子

画像13

スイッチを入れて最初は静かだったレンジですが、だんだんと音が大きく、激しくなり、2分も過ぎれば徐々に静かになってきます。まるで生きたエビを熱いフライパンに閉じ込た時のような罪悪感が湧いてきます。

それでもダブルバターの豊かな香りが漂ってくれは、食欲も湧いてくるというものです。

弾ける音の感覚が1秒間隔になってくれば、ちょうど良い頃合い。レンジを開けると元々の薄い袋が信じられないほどパンパンに膨らんでいました(画像14)。

膨らんだ状態

画像14

熱い蒸気をはらんだ袋を、火傷しないように注意深く開きます。

袋が破裂しそうになるくらいに詰まったポップコーン(画像15)は、おおよそ丼に二杯分ほどの量です。

完成したポップコーン

画像15

熱々で出来立てのポップコーンは、お店で買うのとは一味違うフレッシュさで、食べる手が止まりません。

ただ、今回は残念ながら、大成功とは言えませんでした。少々レンジを止めるのが早かったようです。うつわの底にポップコーンになり損ねたとうもろこしがかなり残ってしまいました(画像16)。

豆が残った状態

画像16

毎回成功させるのは難しく、今回のようにとうもろこしが残らないように加熱時間を長めに設定すると逆にポップコーンが焦げてしまうこともあり、成功率は結構低めの調理です。それでもデジタルな家電を使いながら聴覚だけを頼りに作られるアナログさは、誰が作っても均一でハイクオリティに出来上がる日本の商品にはみられない面白みがあります。

最後に:手軽さだけでないレンジアップ商品

いかがでしたでしょうか。アメリカの電子レンジは1000Wか1200Wとかなり高出力で、加熱時間も短めに設定されています。これは早く出来上がるという利点がありますが、少しでも設定時間が長過ぎると熱が入りすぎたり焦げてしまったり。日本から来たばかりの時は設定温度の感覚がつかみづらく、ラップやプラスチック容器を溶かしてしまったこともありました。

ワット数同様、レンジアップ商品には素早く加熱できる時短のニーズを感じさせるコンセプトのものが多いのですが、今回ご紹介した商品のように、それだけが特長ではないことがわかります。国の食文化や電子レンジの調理習慣が、商品開発の方向性の差異にも影響を与えていることがはっきりと感じられます。

 

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