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朝食の常識を塗り替える、シリアル棚に並ぶ新哲学

アメリカの朝の風景に欠かせないシリアル。スーパーの広大な棚を占拠するのは、日本でもおなじみの「ケロッグ」や、オートミールの象徴「クエーカー」といった、いわば伝統を支える王者たちです。しかし、その鉄壁の棚の隙間を縫うように生まれた新しいブランドたちが、これまでにない哲学を武器に勢いを増しています。

アメリカのスーパーのシリアルコーナー
この棚は、単なる「手軽な朝食」を探す場所ではありません。グルテンフリー、ヴィーガン、高タンパク、低糖質…細分化された食の価値観やライフスタイルに合わせ、どれだけ自分の価値観やライフスタイルに合うかで選ぶ、いわば「食の価値観の縮図」となっています。

グルテンフリーでも満足感ある一皿:Three Wishes(スリーウィッシーズ)

「シリアルなのに、穀物を使っていない」。本来、穀物が主役であるはずのシリアル売り場で、「Grain Free(穀物不使用)」を謳う、アメリカらしいパラドックスを持ったこのブランドからご紹介しましょう。
グレインフリー、グルテンフリーでありながら、おいしさと満足感を両立したと謳うのが「Three Wishes」です。その「3つの願い」は、公式に何なのかははっきりさせていませんが、パッケージから察するに「グルテンを使わない」「砂糖控えめ」「タンパク質たっぷり」という3つの嬉しい特徴がメインのようですね。

Three Wishesのパッケージ
カラフルなパッケージは、見た目からも健康と楽しさを感じさせ、朝食だけでなく軽い健康的なおやつとしても手に取りたくなる存在です。

「日曜日の朝」を毎日に:Seven Sundays(セブン・サンデイズ)

機能性素材や数字を競い合うようなシリアル売り場で、少し異なる角度からアプローチしているのが「Seven Sundays」です。ブランド名には、「日曜日のようにゆったりとした朝を、週7日楽しんでほしい」という、なんとも素敵な願いが込められています。

Seven Sundaysのパッケージ
パッケージは手作り感のある楽しくて素朴なデザインですが、最近注目されている、フードロス対策としてのアップサイクルに、積極的に取り組んでいます。
オーツミルクの製造過程で生まれる副産物は、廃棄されがちな素材でもありますが、独自の技術によって「オーツプロテイン」として活用し、シリアルの原料に採用しているそうです。のどかな印象とは裏腹に、環境配慮の面でも先進的なブランドと言えそうです。

心と体を整えるレシピで贅沢な一皿を:Purely Elizabeth(ピュアリー・エリザベス)

スーパーフードを組み合わせたグラノーラを展開する「Purely Elizabeth」。創業者のエリザベス・スタインは、心身のつながりから健康を考える「ホリスティック栄養学」のカウンセラーという別の顔を持ちます。

Purely Elizabethのパッケージ
彼女が提唱するのは、食を整えて体の健康を支えるというコンセプト。その核となるのが、キヌアやチアシード、アマランサスといった「古代穀物」の起用です。他にもオーガニック素材をふんだんに使っているところも、作り手の誠実さが伺えます。ただ、素材への心配りだけでなく「シナモンレーズンアーモンド」「バニラブルーベリーアーモンド」「ハニーピーナッツバター」といった、ひとひねり効いたフレーバーの組み合わせが単純においしそうで、そういった心の満足感にも気を遣っていることがわかります。
パッケージは、ただのシリアルボウルというよりも、おしゃれな一皿に見えるシズルカットと、どこか「健やかな生活のための処方箋」を思わせる知的な佇まいで、大人のキッチンにも馴染みそうです。

寝る前に寝かせる:Oats Overnight(オーツ・オーバーナイト)

アメリカのオートミール文化の一つの進化形と言えるのが「Oats Overnight」です。伝統的なオートミールは温かいお粥タイプなのですが、こちらは冷たいオートミール。作り方は至ってシンプル、ボトルのキャップを開け、水や好みのミルクを注いでシェイクし、そのまま冷蔵庫に入れて一晩待つだけ。翌朝には、オートミールが水分を吸って絶妙なとろみのシェイクタイプのオートミールへと変化します。
「容器がそのまま調理器具兼食器になる」という設計が非常にユニークです。計量も、混ぜるためのスプーンも不要で、忙しい朝は冷蔵庫からボトルを掴んでそのまま家を出ることもできる、究極のモバイル朝食といえます。

Oats Overnightのパッケージ
ボトルの白地を背景に、チョコチップクッキーやピーナッツバターといったフレーバー名が、色鮮やかなアイコンと共に大きく配置されたデザインも印象的です。スタイルとしてはプロテインドリンクに似ていますが、シリアルとしてのナチュラルさやおいしさも忘れていないようです。

ボウルから飛び出したシリアルの進化:バーという選択肢

シリアル本体に劣らぬ面積を占めているのがシリアルバーの売り場です。厳密にはシリアルバーだけでなく、ナッツバーやクッキーバーなども含まれていますが、いまや多忙な現代人の一食分を担うほどの盛況ぶり。バラエティ豊かなだけに、スーパーでもこのカテゴリーになんと名づけていいのか悩んでいるようで、下の画像では「朝食バー」と書いてありますが、店舗によっては「トレイルバー」や「プロテインバー」など、さまざまです。

アメリカのスーパーのシリアルバーのコーナー

「土曜の朝」を現代にアップデート:Magic Spoon(マジック・スプーン)

というわけで、アメリカで高タンパク・低糖質な仕様で市場に旋風を巻き起こしたシリアルブランドの「Magic Spoon」も、もちろんこの売り場に進出しています。彼らはこれをシリアルバーではなく「Protein Treats(プロテインのおやつ)」と名乗っています。

Magic Spoonのパッケージ
創業者の二人がこのブランドに込めたのは、土曜日の朝にアニメを見ながら食べたあのワクワクする味やノスタルジーをエッセンスにして、いつでも食べられるシリアルの形にすることでした。(ところで「Seven Sundays」が家族をイメージして日曜を選んだのに対して、子どもをイメージしたら土曜の朝になるのがちょっと面白いですね。)

バーの形になってもその精神は生きているようで、効率よく栄養が摂れるというより、おいしいおやつとしての魅力が伝わってきます。パッケージに描かれた、ソースがとろりとかかったお菓子のようなシズル感も、その「楽しさ」の追求ゆえでしょう。ギュッと詰め込まれた子ども心が、彼らの作るバーの正体です。

学校へ持っていける安心感:KIND(カインド)の「SCHOOL FRIENDLY」

バーの売り場で、もう一つ独自の存在感を放っているのが「KIND」のキッズラインです。厳密にはシリアルではなくナッツバーの代名詞ともいえるブランドですが、同じ「手軽な朝食・軽食」として同じ通路に並ぶこの商品を、最後にご紹介させてください。このシリーズには「SCHOOL FRIENDLY」という、日本では見かけないコンセプトが掲げられています。

SCHOOL FRIENDLYのパッケージ
背景にあるのは、アメリカの学校特有の厳しいルールです。重篤なナッツアレルギーを持つ子どもたちへの安全対策として、アレルギーのない子も含めた全員にナッツ類の持ち込みを禁じる学校が少なくありません。親にとって、この表記は、「学校のルールをクリアしている」という、安心して手に取るための許可証のような役割を果たしています。

最後に

シリアルは、アメリカにおいて時代を超えて愛される伝統食です。ボウルで食べるその基本スタイルは今も変わりませんが、食生活の多様化や価値観の変化に伴い、常に新しいコンセプトが生まれています。今回見てきたブランドに共通しているのは、単なる新奇さを狙うのではなく、シリアルというカテゴリーが持つ「健康」や「安全」という核心部分にしっかりと軸足を置いている点です。伝統を守りつつ、今のライフスタイルに合わせて形を変えていく。アメリカのスーパーの棚に並ぶ無数のパッケージは、今の時代を生きる人々のニーズと誠実に向き合った結果の集合体と言えるのではないでしょうか。

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