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伝統×ブランディングで競い合う、香港「月餅」の華麗なるパッケージデザイン合戦(前編)

はじめまして。香港に住んでまもなく13年になるジャーナリストの甲斐美也子です。元女性誌の編集者で、今は日本の雑誌を中心としたさまざまな媒体への執筆を中心に活動しており、香港特集が組まれる際のコーディネーターも務めています。2019年4月には、初著書『週末香港大人手帖』が発売されたところです。

ハイエンドなレストランとバーの取材をもっとも得意にしていまして、現地のメディア向けのイベントにも日々参加しています。そんな中で目にした面白いパッケージやアイデアを、これから毎月、皆さんと共有してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。

毎年恒例、華麗なるパッケージデザイン合戦

さて、香港では旧正月に次ぐ大きな祭事なのが、中秋の名月を称える「中秋節」。旧暦の8月15日(日本で言う十五夜)であるため、新暦では毎年9月末から10月頭になります。

この中秋節前に、日頃お世話になっている方に「月餅」を送る習慣があります。広東料理店、高級ホテル、ファッションブランドなどが、月餅自体の味やデザインはもちろん、パッケージにも凝りに凝って、自分のブランドのコンセプトやイメージに合わせたトータルデザインを競い合うのが恒例になっているのです。

高級店の月餅はすべて手作り。香港の高級ホテルには、顔となる広東料理店があり、販売期間の1ヶ月ほどは、そちらのシェフが総出で毎日月餅を作り続けます。もっとも月餅の人気が高いペニンシュラ香港では、広東料理店「スプリングムーン」で毎年10,000箱以上を売り切るのだそうです。

Photo:ペニンシュラ香港「スプリングムーン」の月餅。

Photo:現在主流になっている、ミニエッグカスタード月餅を1986年に発明した元祖で、毎年オンライン予約開始時間に瞬時に売り切れるプレミアム商品。こちらのパッケージは毎年ほとんど変わりません。

私の場合は、日頃お世話になっているホテルやレストランから、有りがたいことに毎年多数の月餅をいただいています。そこからひしひしと感じさせられるのは、これらの月餅がほぼ利益度外視で、センスの良さ、発想の面白さ、品質の高さ、新しいことに取り組む本気度を表現する重要なブランディングの手段であること。いずれも手作りで保存料なども不使用なため、在宅かどうかを必ず確認してから配達を手配するという念の入れ方なのです。

百花繚乱、月餅パッケージの傑作選

それではさっそく、過去数年間の月餅の中から、印象に残ったものをご紹介しましょう。

香港が発祥の地であるマンダリン オリエンタルのロゴと言えば扇。2018年の月餅は、まず箱自体がこの扇の形になっていて、スライドさせて開けると、中にはこのように4個の月餅が。月餅自体も扇の模様が入った型から抜かれています。

Photo:マンダリン オリエンタル香港の月餅。

Photo:リボンの手提げが付いていました。

Photo:個包装されています。

月餅は大きく分けて2種類あります。1つめが、大型の伝統的タイプで、蓮の実餡を使い、アヒルの塩漬け卵の黄身が中に入っていて、切ったときに満月のように見えるもの。もう1つはミニサイズで、カスタード餡など、モダンで食べやすい餡を使ったタイプ。

こちらはシャングリ・ラ・ホテルズ&リゾーツからいただいた、伝統タイプ。きれいな満月が見えますね。パッケージも優雅で美しく、満月に向かって飛んでいく鶴を描いていました。

Photo:シャングリ・ラ・ホテルズ&リゾーツからの2018年の月餅。広東料理店「香宮」のロゴが入っています。

エコを意識したジュエリーボックスタイプ

一方で、多数の月餅を受け取ると食べきれずに捨てる羽目になるため、年々豪華になる月餅デザイン合戦への問題提起もされています。環境意識の高さは今や香港の高級ブランドに欠かせない属性ですから、なるべく箱を再利用してもらおうということで、ジュエリーボックス風のデザインがとても多くなっています。

麗しさでは毎年群を抜いているのが、こちらのマカオのウィン・リゾート。2017年と2018年のデザインです。このように数年は似たデザインで柄や色を変えるというのもよく見かけます。

Photo:ウィン・リゾート月餅2017年版

Photo:ウィン・リゾート月餅2018年版

Photo:中身は伝統タイプ。

インターコンチネンタル香港では、過去2年は引き出し形式になったボックスタイプのデザインでした。側面にホテルの自慢である、香港の摩天楼が並ぶスカイラインが描かれています。大型の月餅は、蓮の実餡とカスタード餡の両タイプがあり、中に金箔が含まれていたりして、とにかくゴージャス。

Photo:インターコンチネンタル香港、2017年版

Photo:インターコンチネンタル香港、2018年版

同じジュエリーボックスデザインでも、レザー遣いがぐっとモダンなのが、ザ・ランドマーク マンダリン オリエンタル 香港。こちらはマンダリン オリエンタルの系列ながら、最高級ファッションブランドが多数入ったザ・ランドマークの中にあるブティックホテル。そんなスタイリッシュなホテルの個性が見事に表現されています。月餅自体も、扇のロゴはついているものの、ミニサイズのカスタード味です。

Photo:デザイン性が高いザ・ランドマーク マンダリン オリエンタル 香港。

Photo:2017年版

Photo:2018年版

アートコレクターがオーナーでギャラリーを兼ねた広東料理店になっているダドルスでは、有名アーティストによるボックスデザインと、ミニカスタード月餅が定番です。

Photo:2017年のダドルスは、香港人アーティストCheng Ting Tingが箱をデザイン。

贅を尽くした麗しいパッケージ、どれも作り手の気合いが感じられるものばかりですね。香港月餅レポートの後編では、チョコレートやウィスキー、中国茶など、さまざまな風味を生かした、ひと味違う月餅と、今年さっそくいただいた最新月餅のあっと驚くパッケージをご紹介します。

▼後編はこちら

伝統×ブランディングで競い合う、香港「月餅」の華麗なるパッケージデザイン合戦(後編)

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