毎年、旧暦の十五夜にあたる「中秋節」の前に月餅を贈り合う習慣があることは、昨年の記事でもご紹介しました。
▼昨年の記事
伝統×ブランディングで競い合う、香港「月餅」の華麗なるパッケージデザイン合戦(前編)
今回は、2019年にいただいた月餅から、パッケージが際立っていたものをご紹介します。
2019年の傾向として見えてきたのは「再利用可能なボックスデザイン」であること。中秋節が終わると食べきれなかった月餅とともにボックスが捨てられてしまうため、かねてから過剰包装や大量廃棄が問題視されていました。
しかし贈り物としての格の高さが重要視される月餅では、ただ簡易包装にすればいいという訳にはいきません。結果として辿り着いたのが「より高級化して、中秋節後も使いたくなるようにデザインを工夫する」という方向性です。
実用性と高級感という点で、もっとも優秀だったのが2019年3月にオープンした「ローズウッド 香港」の月餅ボックス。レザー風素材で、色味もシックでシンプル。これなら大抵の方が自宅で使えるレベルなのではないでしょうか。端正な雰囲気が、ブランドのイメージともぴったり合っています。

Photo:ローズウッド香港の月餅ボックスはレザー風。中身は人気の高いミニエッグカスタード味。

Photo:二段式で、ネックレスや時計などの収納に良さそう。
錠前付きのヴィンテージトランク風デザイン
次に本気を感じさせたのが、「リッツカールトン香港」。某ブランドを思わせなくもない色味とモノグラム、実はすべてウサギや月餅など、中秋節にちなんだ模様になっていて、月の満ち欠けが中心に描かれています。

Photo:リッツカールトン香港の月餅ボックス。ヴィンテージトランク風のデザインにびっくり。

Photo:各面に異なる月の満ち欠けが描かれている。
妙に感心してしまったのが、錠前の部分。いただいた時はビニールで保護されていました。

Photo:品質重視を感じさせるビニールシート

Photo:月餅を出したところには、鍵が!

Photo:こんな一工夫に担当者の気合いが感じられる。
こちらも相当に「すぐには捨てられないボックス」を目指したことが伝わってきます。

Photo:蓋を開けたところにも大きな満月が。
ちなみに月餅本体には、リッツカールトンのロゴが入っていました! とても精巧です。

Photo:おなじみのライオンマークが美しく刻まれている。
エレガントなチャイナデザインが見事
アイデア豊かなデザインで心が華やいだのが、インターコンチネンタル・グランフォードのもの。これ自体が、中秋節の提灯をイメージさせます。

Photo:中国の組紐が付けられた麗しいデザイン。
筒の中にはミニカスタード月餅6個入り。センスのいい方への贈り物にぴったりです。

Photo:エレガントで落ち着いた色味。
提灯+引き出し型で、ホテルのイメージと同じく思い切りカラフルで華やかなのが、ウィン パレス。

Photo:ホテル自体の華やかさや色味ともぴったり合っている大胆なデザイン

Photo:広東オペラの舞台装置でも見ているかのよう。
例年通り、伝統の蓮の実餡の月餅が、各引き出しに1個ずつ入っています。

Photo:引き出しの中に月餅が。
引き出し型ボックスを長く採用しているインターコンチネンタル香港では、箱のデザインはシンプルに、月餅はイベリコ豚入りでひと味違う美味しさでした。

Photo:広東シェフのクリエイティビティーを重視している。
満月と蓮の花を描いたシンプルな箱ですが、デザインがすっきりしていてこれは使えると思ったのが、ギャラクシーマカオのもの。

Photo:プリントや色味に高級感たっぷり。
蓋をあけると、ギャラクシー=銀河にまつわる詩が書かれていました。書類などを入れるのに良さそうです。

Photo:月餅4個入り。蓮の花が続き模様で描かれている。
ティーセット入りの引き出しタイプ
引き出しタイプの箱に並々ならぬ気合いを感じさせてくれたのが、ペニンシュラ ブティック。

Photo:人工皮革の持ち手が高級感を増すアクセントに。
三段の引き出しを開けると、上二段にミニ月餅、そして下段には月餅とぴったりなプーアール茶の茶葉缶と、茶器が入っているのです。これは嬉しい贈り物になりますね。

Photo:ティータイムの提案になっているのが楽しい。
ちなみに毎年人気ナンバーワンであるペニンシュラ香港のミニカスタード月餅は、潔いほど毎年同じデザインです。「これが欲しい」と誰もが思い描く定型デザインとのブランド化が成功しています。

Photo:広東料理店スプリングムーンのロゴ入り。
同じく老舗ホテルのマンダリンオリエンタル香港も、毎年、ホテルのロゴになっている扇型の素敵なボックス入り。ひと目見て分かる象徴的デザインも大切だということが分かります。

Photo:扇型ボックスを開けると、中に伝統スタイルの月餅が。
永久保存版にしたくなる図鑑のようなデザイン
一方、毎年クラシックなデザインだった老舗のシャングリ・ラは、星座をテーマにしたモダンなデザインを採用。とてもロマンチックで斬新です。

Photo:こちらの深みがかった赤も、印象的でモダンなトーン。

Photo:図鑑のような美しいボックス。

Photo:有名広東料理店「香宮」のロゴ入り。
名人技が光る巨大月餅

Photo:限定800個で販売。
画期的デザインを追求するのはホテルだけではありません。広東料理店「星月居」では、まるでパイのような大型の月餅を作り話題になりました。缶を開けるとこんな風に!

Photo:缶の中にビニール包装で巨大月餅が。

Photo:見たことのない大型月餅に宴が華やぐ。

Photo:ケーキのように切り分けていただく。
とにかく見事な木型を使っています。この大きさを美しく仕上げる技術に脱帽です。
旧暦の2020年が始まったばかりながら、そろそろ今年の月餅デザインを担当者が始める時期でしょう。昨年の反政府デモに続き、新型肺炎の流行という大きな波乱とともに始まっている香港の2020年。先が見えない不安に包まれる中、平和と幸福を祈る担当者たちの想いがこもった優しさのあるデザインや、ヘルシー志向を取り入れたタイプが多くなるのではないかという筆者の予想は当たるでしょうか。どうぞお楽しみに!
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