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香港「ハーバーシティ」の最強ノベルティグッズ開発(前編)——お正月は最大の宣伝チャンス

780,000㎡以上ある広大な敷地に、最高級国際ブランドからカジュアルブランドまでのファッションを中心にした450軒以上のショップと、ミシュラン星付きフレンチからファストフードまで60軒近くの飲食店を含む、香港最大のショッピングモール「Harbour City(ハーバーシティ)」。

旧正月からクリスマスまでの季節の行事や、世界の有名無名アーティストを招聘してのイベント開催で、一年中アクティブに動いているこのショッピングモールには、ノベルティグッズ作りの達人という顔があります。

Photo:ビクトリアハーバーに面する広大な敷地にある香港最大のショッピングモール「ハーバーシティ」。

トートバッグ、カレンダー、ポーチなど、年に3~4点、各10,000万点以上製作されるアイテムは、もはやノベルティグッズというレベルを遙かに超えています。しかもすべて非売品で、国内外の得意客、メディア関係者、取引先に配られるそう。

今月は、ハーバーシティの毎年定番の二大人気アイテムという、お年玉袋と傘にフォーカスして、そのコンセプトやデザインの変遷などを前後編でじっくりご紹介します。

ノベルティグッズの訴求効果に着目

「多数のブランドが入っているハーバーシティ自体をマーケティングするためにどうすればいいか」というのは常に課題で、テレビや雑誌などで広告を打っても、モール自体のコンセプトはあまり伝わらないというのが悩みでした。

「ただ規模が大きいショッピングモール、というだけでないコンセプトや品質の高さを、効果的に伝えられる手段として、広告予算をノベルティグッズ作成に回そうと決めたのが2002年でした」と教えてくれたのは、ノベルティグッズの担当者で、ハーバーシティのプロモーション&アドバタイジング シニアマネージャーのアンドリュー・ヤンさん。

Photo:毎年恒例アイテムの1つであるカレンダー。

これは2019年のもので、たとえば木製ブロックおもちゃのデザインで有名なMiller Goodmanを起用し、Hong Kong Blood Cancer Foundationとハーバーシティのチャリティ目的のコラボによるパズルとして4種類の絵柄を作れるほか、数字を並べる万年カレンダーにもなる。デザイン、アイデア、素材、プロダクションのすべてが高品質という例です。

「お洒落できれいなもの、高級なものは世の中にいくらでもあるけれど、ノベルティのデザインはそれだけじゃなくて、実際使えるもの、使いやすいことを必須と考えています」

試験的にトートバッグを作り始めた2002年頃は、外部のデザイン事務所に委託していましたが、2004年頃から、アンドリューさんを中心とする社内チームが、外部のイラストレーターやデザイナーとのコラボによって展開するという形にまとまったんだとか。

Photo:後編で登場するノベルティ傘を持つ、アンドリュー・ヤンさん。

「単発のアイテムではなく、全館で展開するイベントと連動するようになったのは、2007年の草間彌生さんの展覧会とのコラボが、大きな話題になってからでした。これをきっかけに、世界のアート界とのネットワークも広く太くなり、この国のこんなアーティストが面白いのでは、という情報がどんどん入って来るようになりました」

「お年玉袋」の文化まで変えた

現在、ノベルティの担当チームは、まとめ役のアンドリューさんと、デザイン系スタッフ3人と外部エージェンシー。すっかり毎年恒例になったノベルティの1つが、香港で最も重要な年中行事である旧正月のお年玉袋です。

香港のお年玉は、日本と違って、大人同士で受け渡しされるので、社会的に非常に重要な意義を持ちます。子供はもちろん、会社の部下、日頃お世話になっているマンションの管理人や清掃業者、さらには年齢にかかわらず既婚者から未婚者に渡す習慣があるため、既婚の新入社員が未婚のベテラン上司にお年玉を渡すなどという場面も珍しくありません。

以前にお伝えした月餅のデザイン合戦と同様に、お年玉袋についても、今では多くのブランドが目を惹くデザインを競っています。

「かつては、自分の名字の漢字一文字が印刷された伝統的なデザインの袋を、旧正月前にあちこちに出る屋台などで買って使うというのが一般的でした。ハーバーシティが2004年からオリジナルのお年玉袋を作り始めたことが、デザイン合戦が始まるきっかけになったのです」とアンドリューさん。

Photo:2004年の記念すべきオリジナルお年玉袋第1号はクラシックなデザイン。@harbourcity

一年で最もおめでたい場面で、ブランドを体現したデザインのお年玉袋が使われるというのは、香港人にとって大きなインパクトがあるのでしょう。

「最初の数年はかなり伝統的なデザインでした。家族単位、夫婦共同で配ることが多いお年玉は、必ず奥さんがまとめて持って歩き、バッグから取り出して相手に渡すという習慣があるため、お年玉袋にコーディネートされた専用ポーチも作るようになりました。

Photo:2007年のクラシックタイプは、がま口風ポーチ付き。@harbourcity

その変遷を追っていくと、どんどんデザイン性が高まっていることが一目で分かります。

Photo:@harbourcity

Photo:2008年は、かなり派手さを増している。@harbourcity

2009年には香港人イラストレーター、ドロシー・タンを起用。ユーモアあふれるオリジナルイラストのお年玉袋とポーチです。

Photo:@harbourcity

Photo:@harbourcity

Photo:2009年のデザイン。さまざまな絵柄が揃っている。@harbourcity

この頃から、ルイ・ヴィトンやグッチなどの最高級ブランドまでも、オリジナルのお年玉袋を作るようになり、世の中の流れとしてお年玉袋の高級化が進みました。

2011年のうさぎ年は、こんな豪華なデザインに!

Photo:“Furry Rich”と名付けられた2011年。ポーチはそのままクラッチに使いたいようなデザイン。@harbourcity

より使いやすく印象的なデザインを目指して

初期の頃は、伝統タイプとモダンタイプの2デザインを用意していましたが、2011年から、両方のタイプを兼ねられる、格の高さがあるモダンデザイン1本に絞るように。

Photo:2014年の午年は、エレガントで華やかなデザイン。大小の袋を作り、絵柄にバラエティをもたせるスタイルが定着。@harbourcity

すっかり香港の風物詩でトレンドセッターになった、ハーバーシティのお年玉袋。世の中のお年玉袋が豪華さを競うようになってきたこともあり・・・

「2015年に一度コンセプトを見直しました。ダイヤモンドを付けるわけにもいかないですし、豪華さにはきりがありません。洗練度はそのままに実用性を高め、特にポーチは、旧正月が終わっても年間を通じて使える実用性とデザイン性をさらに重視するようになりました」

Photo:@harbourcity

Photo:2017年はしっかりした造りのポーチが主役。@harbourcity

ちなみに、日本の正月と同じく、旧正月には干支が主役になります。

「デザインに今年の干支の動物を入れることは必須ではなくて、たとえば申年なら、自然の中で自由奔放に遊ぶ猿の精神をデザインに反映しよう、という方向性になったりもしました。毎年、ブレーンストーミングしながらデザインを決めています」とアンドリューさん。

とはいえ、動物の可愛さとデザインの良さが揃えば、そのインパクトの強さは最大級に。2018年の戌年には、表面にさまざまな犬の顔、裏面にしっぽが入ったデザインのお年玉袋が作られました。色味をマッチさせたポーチも高品質で、大変話題になりました。

Photo:犬の鼻としっぽの可愛さを最大限に発揮した2018年のお年玉袋とポーチのセット。

2019年は、布製のミニバッグがついた、華やかでおめでたさ満点のデザインでした。

Photo:2019年は、カラフルながらエレガントなデザインに。@harbourcity

他のノベルティグッズと違って、お年玉袋のデザインだけはハーバーシティCEOによる最終承認を必要とするというほど、企業でも最重要なイメージ戦略として定着しています。前年の4月頃からデザインを考え始め、9月には試作品が出来ているというのが毎年のスケジュールなんだとか。

実は2020年のデザインは、取材前日に承認されたところでした。

「現在の香港は残念ながら政情不安定で、不安な気持ちに包まれています。だからこそ、来年はお金よりも心の安らぎを大切にして、もらった人が幸せな気分になることを目指したデザインにしました」

極秘裏に進められているこの新デザイン、楽しみで仕方ありませんね。

次回は、ハーバーシティのもう一つの人気ノベルティであるオリジナル傘について、その素敵なデザインと開発秘話をお伝えしましょう。

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