よく「紅茶の国イギリス」と言われますが、これは本当です。イギリスでは長年に渡って一人が1日に2杯弱の紅茶を飲むという統計でしたが、ロックダウン中はその数字がさらに2倍になったという調査結果が出ました。イギリス人がリラックスするときに紅茶が欠かせないアイテムだということがよくお分かりいただけると思います。
イギリスで暮らす私たちが日常的に飲む紅茶は、スーパーマーケットで売っているものが主流でそのブランドはさまざまです。スーパー独自のブランドはもちろんのこと、PG Tips、Tetley、Typhooなどの伝統的ブランドは一般庶民から愛される国民的な紅茶で、お値段もお手頃。階級や収入に関係なく「この味が好きだから」という理由で飲んでいる人は多いと思います。
TwiningsやYorkshire Teaなどもスーパーで購入できるものですが、上記3つに比べるとクオリティ面では少し上。こだわりのある人たちが贔屓にしているブランドです。これらの日常的に飲む紅茶で日本と徹底的に違うのは「ティーバッグそのものを個別包装していない」ことだと思っています。
例えば私が普段飲んでいるのはClipperの「Everyday Organic Tea」(ちなみに私も紅茶を1日に2杯飲みます!)。ティーバッグ100個が大きな紙の箱に入っているのですが、各ティーバッグはヒモなしで裸のまま。素材はブリーチしていない植物繊維で生分解性もあるので、安心して飲んでいます。
イギリス市場ナンバーワンと言われている王道のPG Tipsは、すでに4年前に生分解性のあるノンプラスチック素材を取り入れていますが、Tetley、Typhoo、Yorkshire Tea、Twiningsは残念ながらまだ一部プラスチックを含んだ素材だということです。
紅茶の国イギリスで見かける伝統的なパッケージ
さて、前振りが長くなってしまいましたが、今回は紅茶パッケージをレポートします!
茶葉が少し高級になってくるとティーバッグも個別包装となり、パッケージや容器も高級感を増してきます。紅茶容器の歴史を紐解くと、その昔非常に高級な舶来品だった紅茶を保管した木製「ティーキャディー」に行きつきます。
18世紀頃、高級な紅茶を召使い達がこっそり持ち出したりしないように保管には鍵付きキャディーが一般的だったことがわかっています。その後陶器製の茶筒が中国から渡来し、同時期に金属製で湿気防止のため首のところが一段細くなっているものが登場しました。その直系のスタイルがこちらです!
現在は上のスタイルを基本として様々な進化系が生まれています。ベルリン生まれの紅茶ブランド「Paper & Tea」の缶はモダンな形で蓋は首からではなく、上蓋だけを取るタイプで、シールで封もしてあります。
お土産に人気のリーフティーは缶に入っており、スーパーで最もよく見かける上質なティーバッグのパッケージは窓が付いている紙のパッケージです。
ごく一般的な四角いパッケージにも種類が多くあります。ロンドンにもたくさんの店舗があるオーストラリア発「T2」は商品の豊富な種類が魅力で、ボリューム感を感じる奥行きのある四角いパッケージがトレードマーク。缶入りもスクエアラインを大切にしていて、カラフルな色の組み合わせを特徴としています。
インドにルーツを持つ英国ブランド、「JP’s Originals」は機能性ウェルビーイングにフォーカスした茶葉で知られ、こちらでは高級デパートなどで扱っています。水溶性CBDを溶かしてブレンドに混ぜ、免疫力をアップさせることに狙いを持たせた機能性紅茶は、富裕層をはじめ健康に良い習慣を日常に取り入れたい人たちから注目されています。
機能性を持たせたCBDブレンドの茶葉は12ティーバッグで25ポンド(約4,000円、化粧箱入り)。 吊り下げ可能なヒモがついたデザインで「CBD TEA」の部分を特殊加工にして高級感を出しています。
モダンな紅茶パッケージ
今回のリサーチで、最も現代的な若さ溢れるブランドかつパッケージであると思ったのが、「OFFBLAK」です。2018年にロンドンで誕生し、その後のパンデミック期に正式に立ち上げられた後に急成長を遂げたブランドで、そのポテンシャルの高さから業界で熱い注目を集めています。
ポッキーの箱のようなスリムさは、イギリス一般家屋の郵便受けに入ることを想定してデザインされたもの。ポップで遊び心に溢れたグラフィックも含め、食品デリバリーへの抵抗の少ない若い世代をターゲットにしています。
「OFFBLAK」はブランディングにも優れています。その名の通り「紅茶はブラックだけじゃない」というコンセプトで、アイスティーを作ることも想定したさまざまな茶葉ブレンドを提案。
12種類ある植物ベースのフレーバーで、インスタ映えするティータイムと健康的なライフタイルをZ世代+ミレニアル世代に訴えています。
購入方法もとてもユニークで、立ち上げ当初はサブスクのみでした。
スタートアップ・キットで全種類を試した後は、好みのフレーバーを数種類選んで毎月送ってもらうことで飽きずにティーライフを楽しみ、お洒落でヘルシーなライフスタイルを送ってもらおうというアイディアです。
現在は特定の小売店などでも購入できるほか、米国市場への進出で勢いにのっています。
一方、「Doyen Tea Co」も2019年のパンデミック期創業の新しいブランド。
サステナビリティをキーワードに掲げた会社で、パッケージにはリサイクル素材を使い印刷インクには植物性のものだけを使用するといったこだわりがあります。
また提携茶園には温室効果ガスの相殺に取り組んでいる生産者を選ぶなど、先見性を売りにしています。
横に細長いパッケージはOFFBLAKと同じくデリバリーに便利なスリムタイプ。裏側にある留め口はこんな感じです。
紅茶は今でもイギリス土産として誰もが求める商品で、化粧箱入りのものは贈答品にも最適。各社がしのぎを削るマーケットでもあります。
以前もご紹介したことがあるプレミアム食品の「Cartwright & Butler」では、美しいキャニスタータイプの紅茶を揃えています。とてもセンスある贈り物ですし、全種類コレクションしたくなりますね。
これは東ロンドンを拠点に展開している伝統的なティーブランド「London Tea Exchange」が提案しているパッケージ・アイディア。「ノベル・コレクション」と呼ばれる書籍型のTea Bookシリーズは皮製書籍を思わせる作り。扉を開けると「ロイヤル」「ワイルド・ミードゥ」などコレクションごとに選別されたリーフティーが4種類入っていて、説明書きでもあるティーブックが1冊付いています。これで20ポンド(約3,200円)なら、お得感がありますね。
外側の素材は金属なので、全ての紅茶を飲み終わっても小物を入れる容器として活躍しそう。もちろん収納場所は本棚。クラシックな体裁が中年以降の層に好評で売れているそうです。
さて、こうやって紅茶商品ばかり眺めているとお茶が飲みたくなってきました。
ロンドンのティールームではどんなカップ&ソーサーを使っているのか少しだけご紹介しましょう!
ヴィンテージのカップ&ソーサー
独立系のショップでよく見かけるのが、「mix & match」と言われるスタイルで、ヴィンテージのカップ&ソーサーをバラバラに混ぜて組み合わせるやり方です。こちらをご覧ください。古いカップ&ソーサーがいっぱいです!
イギリスでは蚤の市その他のマーケットやチャリティ・ショップなどでこういった古物はお安く簡単に入手できること、見栄えも可愛らしいことからよく見かけるスタイルです。
写真左は、レストランのアフタヌーン・ティーで提供していたストーリーのある絵柄のカップ&ソーサーです。こういったファンタジー系や物語を感じさせるパターンは近年、人気が出てきています。
下の写真はロンドン・ピカデリーにあるホテル「Ham Yard Hotel」のアフタヌーン・ティー。インテリア・デザイナーのキット・ケンプさんが共同オーナーのホテルでもあり、彼女がデザインした遊び心のあふれるカラフルなインテリアはさることながら、レストランやラウンジ用のカップ&ソーサー類は海をモチーフにしたストーリーのある絵柄が大好評。クジラや人魚、漁師、灯台、船など、絵本から飛び出てきたような情緒ある絵柄が食器を賑わします。
実は動物や人をデフォルメしたファンタジックなパターンはカップ&ソーサーだけでなく、インテリアやプロダクト、グラフィックのデザイン全般で流行の兆しがあると思っています。より個性的な絵柄で人の目を引く作戦だと思いますが、なかなかセンスのあるものが多くてついつい見入ったりアイディアに感心したりする日々です。
一方、コーヒー用のカップ&ソーサーはそれとは真逆でどこか東洋風の素朴で無地のものが好まれる傾向にあります。例えばここ10年ほどのトレンドとして、カフェで出されるカップ&ソーサーとしてよく利用されているのが、「Steelite International」という伝統ある英国ブランドの和風食器です。
和風食器はここ何年もの間、イギリスだけでなくヨーロッパ全体で食器トレンドとして確実にあり、独立系の小さなレストランになるほど食のジャンルを問わず和風食器を好む傾向にあります。これは“手作り”や “温かさ”がキーワードとなる食文化に合っているからで、いわばムードメーカーとしての食器なのです。
さて、紅茶パッケージと器のお話、いかがだったでしょうか。和みのティー文化、今後も楽しんでいきたいですね。
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