パリでは今、空前の“クッキーブーム”が到来しています。ブームの中心になっているのは、しっとり・ソフトなアメリカ由来のクッキー。
カフェのサイドメニューとして見かける機会も多くなり、パリ中心部ではクッキーの専門店まで登場するようになりました。
このように、国外からのスイーツが定期的なトレンドとなっているパリですが、フランス発祥の「サブレ」も忘れてはならない存在です。
フランスからスタートしたサブレは、リッチなバターの風味・素朴な味わいが魅力で、水分が少なく固めに焼き上げられているのが特徴です。
また、サブレは地方色が強いことでも有名です。たとえば「ガレット・ブルトンヌ」はバターで有名なブルターニュ地方のご当地スイーツとなっていますし、バニラ風味の「サブレ・バスク」はバスク地方で欠かせないおやつとしてその名を馳せています。
もちろん、伝統的なサブレはBOXのデザインも素敵です。今回はそんなサブレの可愛らしいBOXデザインをご紹介していきましょう。
紙か缶か、二極化するサブレのパッケージ
まずフランスのサブレは、パッケージが紙製か缶製であることが多いです。
プラスチック包装もないわけではないのですが、だいぶ減ってきているなという印象です。これはチョコレートなどフランスのスイーツ界全般に共通していることで、他業界と同様に、「エコロジー」「100%フランス産」「素材の味そのもので勝負すること」が強く意識されています。
パリの名物サブレ、画家の絵が描かれたサブレ缶
エコ意識が当たり前となった首都パリで、昔から大人気だというサブレBOXがあります。
パリ中心地、サンジェルマン地区にある『ポワラーヌ(Poilâne)』の「缶」です。
『ポワラーヌ(Poilâne)』とは、パリでとても有名な老舗のパン屋さんのこと。無農薬の小麦を使用していて、材料のすべてがフランス産という丁寧なパン屋さんです。
また『ポワラーヌ(Poilâne)』は、“パリでいちばん有名なサブレのお店”と言っても過言ではありません。
「プニション」と呼ばれる名物サブレは、素材の良さが際立っており一度食べたら病みつきになる美味しさです。90年近く変わっていないそのレシピは、創業者ピエール・ポワラーヌ氏のおばあちゃんのものなのだそう。
『ポワラーヌ(Poilâne)』では、そんな「プニション」が900gも入るサブレ缶が販売されています。
これは仏東部・アルザスの画家、ギー・ウンテライナー氏によってデザインされました。
缶の絵はストーリー仕立てになっており、「プニション」が大好きな二人の子どもたちが、「どのようにしてサブレが作られたか?」を物語っているのだそうです。
とても可愛いデザインなので、サブレを終えた後はお子様のお道具箱としても良さそうですね。ゴールドの取っ手もおしゃれで大容量で、ご家族のいろいろな用途に使えそうです。
海に関わるものがサブレ缶のデザインに。そのワケは…
フランスのサブレ缶、そのデザインを見ていると、「海に関わるもの」がたくさん描かれていることに気づきます。
ブルターニュ地域圏・ポン=タヴァン(Pont-Aven)にあるサブレメーカー、『トラウ・マッド(Traou Mad)』を例に挙げてみましょう。
大西洋沿岸のブルターニュは、年間を通して降雨量の多い地域です。
雨が多ければ、牧草が青々と元気に育ちます。そして牧草が美味しければ、乳牛も伸び伸びと立派に成長します。
そこでチーズやバターの乳製品が、ブルターニュ地方の特産品となっていきました。ということでフランスでは「バターと言えばブルターニュ、ブルターニュと言えばバター」などと言われています。
ブルターニュ産のバターをたっぷりと使ったサブレは、100年ほど前からご当地スイーツとして定着しています。
サブレ缶に海の景色が描かれている理由は、ブルターニュ地方の風景をそのまま映し出しているからだということでした。
サブレメーカーの『トラウ・マッド(Traou Mad)』も海沿いの美しい街にあるので、サブレ缶には灯台やヨット、浜辺などが多く描かれています。
フランスらしい、ノスタルジックなデザインも
ブルターニュからそう遠くないところにある世界遺産「モン・サン・ミッシェル」でも、サブレが大変に有名です。
正確にはモン・サン・ミッシェルの麓にあるレストラン、「ラ・メール・プラール(La Mere Poulard)」が発案したサブレのことなのですが、現在では地元を通り越してパリのデパート、アメリカや日本のコストコでも購入できるようになりました。
真っ赤でレトロなデザインに、古き良きフランスを思い浮かべます。
フランスの「ラ・サブレジエンヌ(La Sablesienne)」は、サブレを工場化した国内初のお菓子メーカーです。
缶を見ているだけでも楽しい、といった華やかなデザイン・素朴な味わいが特徴で、添加物を使用していないことでも有名です。
しかし印象的なのはやはり、缶のデザイン一択でしょう。淡いカラーと丸い形が何ともフェミニンで、お土産やプレゼントとしても良さそうです。
パリのサロン・ド・テ(ティールーム)を思わせる、やさしい色使いにも癒されますね。
いかがでしたでしょうか。フランスのサブレ缶は、クラシックなデザインのものが多く、非常に「映える」といった印象を持ちました。
一方で紙製のものは柄なし・文字だけ・100%リサイクル紙と、どんどんミニマルなデザインに変わってきています。
やはり缶は捨てないことが前提なのでしょうか、ずっと見ていられるように、可愛らしくてキャッチーで、あたたかいデザインになっているのが特徴的でした。
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