米国のプライベートブランド(PB)は、2024~2025年にかけて過去最高の成長を記録し、シェア・売上・消費者評価のすべてで上昇傾向にあります。特にインフレと消費者の節約志向を背景に、PBは「安い代替品」から「品質と価値を兼ね備えた選択肢」へ進化しています。
PBは米国消費財の約21%の市場シェアを占め、2019年の18%から継続的にシェアを拡大しています。2025年のPB売上は2,828億ドルで過去最高となりました。単価ベースでもPBはナショナルブランド(NB)の3倍の成長率を示しています。
中でもPB比率が高いのが「Trader Joe’s」と「ALDI」。「Trader Joe’s」は、ロサンゼルス郡を本拠とする、1958年に誕生したグロサリーストア(食料品スーパーマーケット)チェーンで、設立時の社主はドイツ人の実業家テオ・アルブレヒト。アルブレヒト家はドイツでチェーン展開しているスーパーマーケット「ALDI Nord」を所有しています。

Trader Joe’s
「Trader Joe’s」は"ワクワクする独自PB"、「ALDI」は"徹底した低価格PB"がブランド政策の中核となっています。どちらもドイツ系ALDIグループの流れを汲み、PB比率が非常に高い点は共通していますが、方向性は大きく異なります。「Trader Joe’s」のPB比率は90%以上で、ほぼすべてがオリジナル商品。オーガニックや健康志向の商品が多いのが特徴です。限定品・季節商品・販促商品を展開し、"宝探し感"を演出しています。店内POPや試食など、エンタメ性の高い売り場が特徴です。また、Trader Joe’sは顧客参加型のレシピ開発などにより、顧客の囲い込みを進めています。

Private Label Share at Major Retailers
米国最大の小売業「Walmart」が展開する「Great Value」は、約1万アイテムを持つ米国最大級のPBで、米国世帯の90%が購入していると言われています。「Great Value」は2026年に刷新され、「Walmart」のPBは現在「二極化(低価格の強化×プレミアム化の拡大)」が同時進行しています。
「Great Value」の改善点は(1)パッケージの栄養表示・特徴の配置を統一、(2)モダンで視認性の高いデザインへ変更、(3)店舗・ECで商品を見つけやすくするデザイン設計、(4)2027年1月までに食品から合成着色料を排除など、低価格PBの品質・信頼性を強化する方向が明確になっています。
それに対し、「bettergoods」は「Walmart」のプレミアムPBを掲げ、高品質×低価格を掲げる新しい食品ブランドで、冷凍食品・乳製品・スナック・飲料など約300商品を販売しています。シェフ監修のレシピやユニークな味を強調、大胆な色彩・シンプルで洗練されたパッケージを採用しており、「Walmart」はこれを"新しい高級体験"と位置づけ、従来のPBの枠を超えたブランドとして展開しています。

walmart bettergoods
PBの進化
かつて、PBは価格訴求でNBと競合していました。ジェネリック製品という呼称で、NBよりも低価格で販売され、高い利益率で収益に貢献しました。しかし、最近PBは「節約のため」だけでなく、品質・健康・サステナビリティでも選ばれる傾向が強まっています。
成長を支える主要トレンド
食品インフレが長期化し、消費者はPBを"賢い選択"として受け入れ、PBの品質向上がその流れを後押ししています。
PBは低価格帯だけでなく、プレミアムラインの投入が増加し、小売各社も「品質+差別化」を重視したブランド戦略へ移行しています。PBのプレミアム化を代表するブランドは、「Trader Joe’s(米国)」と「Marks&Spencer(英国)」に代表されます。
どちらも「NBより安い代替品」ではなく、PB自体が"選ばれるブランド"へ進化した成功例として評価されています。
Trader Joe’s(米国)
アメリカで最も成功したPBブランドの一つです。店内商品の約90%がPBとされ、NBより"安いのに高品質"という評価が強く、グルメ食品、オーガニック、エスニック食品など、独自性の高い商品ラインが人気です。PBが店の世界観そのものを形成しており、PB=ブランド体験の代表例です。
Marks&Spencer(英国)
英国の高品質PBの代名詞となっているM&S。食品はほぼすべてがPBで、NBより高価格帯の"プレミアムPB"として確立しています。特にデリ・惣菜・スイーツは「NBより美味しい」と評価され、PBの高級化の象徴になっています。
PBのブランド化
「Walmart」「CVS」「Lowe’s」などが新PBブランドを積極的に立ち上げ、PBを"単なる安価品"から新たなブランドとして育成しています。
消費者のPBへの信頼は上昇し、PBは米国小売の成長エンジンとして位置づけられています。小売企業もPBを軸に価格戦略・差別化戦略・サステナビリティ戦略を展開しています。さらに高級小売業者がストアブランドに踏み切ることでプライベートラベルの存在を高めています。
パッケージがプレミアム化を支援
PBのパッケージは、地味な存在から目を引くものへと変化しました。今日のPBは、洗練されたデザイン、独創的な形の多色ラベル、高解像度画像のパッケージが常識です。また、マルチパック化もPBの武器となっています。大量購入に美的洗練性と品質の互換性が加わり、プライベートラベル製品は競争上の優位性を獲得しています。
「Whole Foods」は「365」というPBを立ち上げました。現在「365 Everyday Value®」と呼ばれ人気です。その理由は一目見ればわかります。クッキーや缶詰の野菜に描かれた食欲をそそる食べ物の写真から、おむつから乳製品まであらゆる商品の目を見張るようなビジュアルや配色で、パッケージは決して凡庸ではありません。
印刷技術が進歩するにつれ、拡張色域印刷の適用とコスト効率が向上し、PBは従来のCMYK印刷の限界を超えて進化してきました。現在では多くの製品にオレンジ、グリーン、鮮やかなリフレックスブルーなどの色が取り入れられ、Pantoneライブラリの95%以上がカバーされています。また、特色印刷に伴う複雑さやコストも必要ありません。
こうした高度な印刷技術が手頃な価格で利用できるようになったことで、PB製品がNBに追いつくことも可能になりました。パッケージ印刷は魅力的であるだけでなくコスト効率も向上したため、PBはデザイン要素をより頻繁に更新でき、進化するトレンドや季節ごとの展開が可能になり、さらにデジタル印刷の普及が機動性を促進しています。また、インクやコーティング技術、ホログラム技術、紙器構造技術の進歩により、PBの感性的価値を高め、包装材料の削減を進めています。
持続可能性を訴求するPB
多くのPBが、持続可能性の向上に向けた取り組みを先導しています。「コストコ」と「サムズクラブ」が乳製品のミルクをリサイクル可能な高密度ポリエチレン(HDPE)に移行するという取り組みや、「ALDI」は冷凍野菜の袋をリサイクル可能な素材に移行する計画です。「コストコ」はカークランド オリーブオイルを使い捨てプラスチックのマルチパックから、より持続可能なEnduraGrip®ペーパーボードに切り替えています。
箔押しやエンボス加工、カスタマイズが可能な可変印刷、ストーリーテリングとレシピ、独自のクーポンオプション、消費者の参加を促進するQRコード。消費者体験が向上し、プライベートラベルの製品が有名ブランドと同等の「ストアブランドロイヤルティ」を獲得し、二流というイメージから脱却し、一流ブランドへと成長しています。
プライベートラベル製品が急増し、成熟するにつれて、パッケージもそれに追随して、品質を高めています。高品質の製品と巧妙な機能的かつ美的なデザインが融合したことで、ストアブランドに対する劣等感の時代は完全に終わりました。
「ALDI」の品揃えの90%以上はPBで、低価格小売業者である同社は、大規模なブランド再構築を通じてPBを目立たせたいと考えています。
「ALDI」のPB商品は、リブランディングの一環として変更されていますが、変更内容はそれぞれ異なります。いくつかのブランドは、新しい「ALDI」の名称に置き換えられました。クランシーズ、シンプリーネイチャー、スペシャルリーセレクテッドなどの商品は名称を維持しますが、パッケージには「ALDIオリジナル」という新しいファミリーブランド名が付けられています。プレスリリースによると、他の商品は「レッドバッグチキン」のように、買い物客が付けたニックネームを正式名称として採用しています。
「ALDI」は今後数年間にわたり、すべての製品パッケージにブランド名を記す予定です。「ALDI」はソーシャルメディア戦略を刷新し、エンターテイメント性、トレンド性、そして文化的に関連性のあるコンテンツをより多く発信しています。このアプローチは功を奏し、InstagramとTikTokでのエンゲージメントが2桁成長を記録しました。
「Walmart」は、主力PBである「Great value」の全面的なリニューアルを発表しました。これは10年以上ぶりの本格的なブランド刷新となりました。
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