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今や欠かせない存在「除菌シート」のパッケージコレクション!ユニバーサルデザインを意識してみる【連載第32回】

画像:packagecollection

こんにちはpackagecollection(以後パケコレ)です。(パケコレのプロフィールページはこちら。)

今回のテーマは「除菌シート」!

規制が緩和され、日常を取り戻しつつある中で必須となった除菌シート。一番気になるポイントは「除菌の効果がありそうか?」ではないでしょうか。

大半の消費者は「有効成分塩化ベンザルコニウム0.05%が入っているからこの除菌シートは有効だぞ」なんて、成分に納得してから購入に至るのではなく、「なんか効果ありそうだな」と感じて購入するパターンが多いと思います。除菌シートのパッケージデザインは、何をどう評価するかによって様々な面白さが見えてきます。

それでは、今回手に入った4つの除菌シートを見ていきましょう。

クレシア「スコッティ ウェットティシュー消毒」10枚

ザ・王道で除菌できそう!という印象を持ちました。大きな「消毒」の文字に対して、手のイラストにグラデーションと赤色でポイントを加え、医薬品のような少しカッチリとした雰囲気ですね。日々持ち歩いているお気に入りの携帯品のお供にするには少しばかり固く、相性が良いとは言えませんが、手を清潔にする為に持ち歩くものですからね。

正直、「有効成分塩化ベンザルコニウム0.05%」は読まないし理解できません。筆者は、手荒れしなければそれでいいや、なんて思ってしまいました。

セブンプレミアムライフスタイル「しっかり除菌ウェットティシュー」30枚

セブンイレブンは、最近プライベートブランドのデザインを変えたことで有名です。「しっかり除菌」と機能を製品名で伝えることで、どんな商品なのかが伝わります。力強く視認性の高い書体と、ニュアンスが美しいブルー基調のシンプルなデザインです。強調したい「アルコールタイプ」が白抜きで引き立つように作られていると感じました。

「しっかり除菌って書いてるし、大丈夫やろ(なんとなく)」と思って買ってしまうようなイメージですね。「コロナ対策」としてはそれでいいのかわかりませんが、そもそも目的と役割が違うのではないかとパッケージからは感じました。

エーザイ「イータック抗菌化ウエットシート」10枚

こちらもスコッティ同様、医薬品のようなトーン&マナーのデザインで「抗菌化」という文字をセンターに配置し、訴求を行っています。「除菌・抗菌!!」という文字と全体的な雰囲気で購入してみましたが、筆者個人としてはかなり視認性が低く、文字組がヨコ・タテ混在で見づらいと感じるポイントもありました。

白黒で製品画像を印刷すると文字が読めないような気がするので、もしかすると、もう少し色に抑揚が必要かもしれませんね。

マンダム「除菌ウェットシート」20枚

こちらが一番驚いたマンダムのパッケージです。訴求内容も「99.99%除菌」と、攻め・攻め・攻めなデザイン。しかも「しっかり除菌」のとても見やすい訴求文言。こだわりの2重包装のため、外は訴求の役割のみ。

シルバーの包装がすっきりと美しくかっこいいですね。バッグの中に入れていたらボディーシートと間違えてしまいそうなデザインです。かなり攻めているので、筆者は「別にここまでしなくてもいいかな・・・」とは思うのですが、デザイン重視の方には好まれるかもしれないと思いました。

パッケージで何を表現しているか

除菌シートに対して、人々は「ウイルスを除去する機能」と「携帯することによる安心感」を商品に対して求めているのではないでしょうか。加えて、機能性に関しては「除菌と書いてあるからこれだ」「効果ありそう」というイメージから購入に至っているのではないかと思います。

それらのインサイトに対して、今回取り上げた4商品はどれも手法を工夫しながら訴求ができているように思えました。

■スコッティ:「消毒」という文字をメインに訴求しているため、機能がわかりやすい

■セブンイレブン:「しっかり除菌」という商品名で機能を伝えられている

■イータック:「除菌・抗菌!」というコピーにで機能を訴求できている

■マンダム:「99.99%」という数値と「しっかり除菌」などの文言で、機能を2軸(数値的エビデンス・除菌というワード)で訴求できている

機能に加えて、携帯することによる安心感や出かけ先でも持ち歩いていたいという気持ちをカバーをしているデザインが、セブンイレブンとマンダムです。両社は訴求情報を極力抑えつつも機能をしっかりと伝えています。

逆に、スコッティやイータックはアイコンを入れて使い方までパッケージで訴求を行っている特徴がみられました。どちらが良いという話ではなく、ターゲットが少し異なるのではないでしょうか。

大衆的に好まれるデザインはセブンイレブンとマンダムで、理解・納得・安心をして購入したい人は、スコッティやイータックを選ぶのかもしれません。心理的な部分も多くあると思うので、時と場合によって人々は無意識で買い分けているのではないかと思いました。

パッケージの評価軸と文化的背景

「ウイルス対策」が当たり前になった今、求められているデザインは「生活に馴染むもの」「長く使っていけるもの」。そうなると、大容量パックでシンプルなデザインになってくるのではないかと感じました。

逆に、スコッティやイータックは従来のポイント使い(たまのピクニックやお出かけで急に必要になった人たちに向けて作られた商品)だったのではないでしょうか。スコッティに関しては、これら背景からシンプルな大容量の除菌シートを販売し始めたようです。

ユニバーサルデザインに基づいた考察

また、今回気になったのが、スコッティのユニバーサルデザインです。

上の画像をご覧下さい。基本的に文字が大きく読みやすいとは思いますが、緑と赤を使っているので色覚特異体質の方にとっては少し見づらいものがあるように感じました。

イータックは青と黄色を使っているので見やすいですね。マンダムとセブンイレブンも全く問題なく見えます。こういった衛生用品や生活必須用品に関しては、よりユニバーサルデザインの考え方を取り入れたデザインが広がってくると素敵ですね。

まとめ

「世の中に出回っている除菌シートのデザインなど、全然工夫されていないのでは?」と疑っていましたが、各社工夫を凝らしていて考察が楽しかったです。どれが良い・悪いデザインという話ではありませんので、デザインを作るときの参考や、自分だったらどれを所有したいかという価値基準で、今後売り場や商品を意識して見てもらえたら嬉しいです。

また、筆者は今ユニバーサルデザインに興味があります。ユニバーサルデザインの考え方は10年前に定義されてから暫くはもてはやされましたが、最近は再び忘れられていたり、知識のないデザイナーがどんどん進出してきているように感じているのもまた事実。

昔のユニバーサルデザインの定義もなんだか更新されていない部分もあるので、この際、分析・分解して、再定義しちゃえば面白いかなと思っております。豊かなパッケージの知識を持って、どんな価値観の人でも楽しい世界を作っていきたいですね。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。以上、パケコレでした。

  

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