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パティスリー激戦区、パリで見た「日本らしい」パッケージデザイン

パケトラ読者の皆さま、こんにちは!パリ在住のライター、大内聖子です。

フランスは言わずと知れた「パティスリー(洋菓子)」発祥の地です。その歴史は古く、13世紀半ばには既に存在していたとか。芸術の都パリは、そんなパティスリーがひしめき合う世界最大の激戦区。グルメなパリっ子たちは、日夜「宝石」のようなスイーツに舌鼓を打っています。

流行に敏感なパリジャンのトレンドは、なんと、日本のスイーツ!
ラーメン人気と同じく、どら焼きや抹茶味のスイーツなど、日本ならではの味がパリでは大流行しているのです。

ということで今回は、パリで見つけた「日本らしい」和菓子のパッケージデザインをご紹介したいと思います。(全てお店の許可を得て撮影しています。)

あの老舗ならではの高級感、上品さ

日本らしさを体現したパリの和菓子屋さんと言えば、「とらや」さんです。「TORAYA」として愛され続け、早41年。パリの一等地でサロン・ド・テ(喫茶店)も併設する高級菓子店です。

お馴染みの暖簾が出迎えてくれます。

「TORAYA」に通うお客さんの7~8割は地元の人です。特筆すべきは、「手土産」としてギフト需要がとても高いパティスリーだということ。日本文化に通じているフランス人にはもちろん、日本を良く知らない、といった方にも「日本らしい」細やかさが伝わり、喜ばれるギフトと言って間違いないでしょう。

「日本らしい」細やかさとは何か。

それは「お包み」から見て取れます。

漢字で書かれた「御祝」の文字がより日本らしさを演出しています。

重厚感のある包装紙はフランス人の間で「かっこいい」と評判。

菓子折りに添える、紅白の水引や熨斗(のし)も日本独特の慣習です。
特に水引の本数や色、結び方はそれぞれ意味があり、この意味をきちんと守る必要があります。

飛鳥時代、遣隋使だった小野妹子から伝わったとされるこの水引ですが、「TORAYA」の「輪結び」は、あまった水引を切ることなく、輪にして締められていますね。
これには、“全て滞りなく丸く納まりますように…”という意味が込められていて、主に婚礼によく使用されるものです。

「相手を思う」ことが特徴の日本文化ですが、贈り物にちょっとしたサインを添える「粋」な心配りからも日本らしさが読み取れます。フランスではこのような心遣いに感動される人が多いので、ギフトを贈る時、この意味をそっと添えてあげると良いかもしれません。

フランスではまず見かけない、日本らしい包装紙。

こちらは家紋風のロゴですが、日本の「家紋」もフランス人にはとても好印象のようです。映画などの影響か、「家紋」は戦国時代の旗やサムライの甲冑を連想させるものだそうで、コアな日本文化を知るきっかけとなります。

和菓子が2~3個ほど入るギフト袋(2ユーロ/約260円)。

しっかりとした底で、アクセサリーや香水入れにもなります。

このような、「巾着」スタイルのギフトパッケージも日本ならではのものです。ヨーロッパではほとんど「巾着」を見かけないため、このように二次使用ができるパッケージは女性に喜ばれます。リサイクル精神の根付いたフランス人には好意的に受け入れられるアイテムです。

 

既にフランス人の何人かに「TORAYA」のギフトを贈りましたが、この紙袋は絶対に捨てないそうです。それほどデザインが良いとのこと。

日本の浮世絵がパッケージに

パティスリーではありませんが、日本のスイーツと並んで人気を博しているのが「日本茶」です。緑茶、抹茶、ほうじ茶…と、その種類はどんどん増えています。日本のお茶メーカー「LUPICIA(ルピシア)」パリ店では、日本の浮世絵が施された緑茶缶が並んでいます。

日本のトレードマーク、富士山をテーマにした3つの浮世絵。緑茶と浮世絵の組み合わせがマッチしています。

浮世絵は、18世紀ヨーロッパに「ジャポニスム(仏: Japonisme)」という流行を生み出した日本美術の一種で、ゴッホやモネといった著名な画家に大きな影響を与えました。
今でも定期的にパリの美術館やギャラリーなどで浮世絵展が開催されるなど、未だにその人気は色褪せることがありません。富士山・浮世絵と言えば、誰もが思う「日本の象徴」なのではないでしょうか。浮世絵のパッケージ、というのは日本国内なら少しベタかもしれませんが、やはり海外の人にとっては一目で「日本らしさ」を感じるものです。

「カワイイ」もまた日本文化

トラディショナルな「日本らしさ」も、「カワイイ」カルチャーも、どちらも日本の文化ですよね。

日本の「カワイイ」カルチャーを彷彿とさせる、軽食カフェ「BUDJI(ブジ)」。

この「BUDJI(ブジ)」は、猫のキャラクターがトレードマークとなっています。店内は若い女性であふれ、活気づいていました。

ポップなキャラクターデザインの抹茶ラテ。

ハート形のマドラー。こういった細かい工夫がパリジェンヌの心をキャッチしているのでしょうね。

既に「おにぎらず」も浸透しています。

日本らしさを感じる紙袋は、捨てたくないデザインのものが多いです。

フランスでは、こういったマスコット・キャラクター入りの食品パッケージはほぼ見かけません。例えば海外アニメのキャラクターがシリアルの外箱に登場することはあっても、食品パッケージのほとんどはシリアスなデザインをしています。
もし「BUDJI(ブジ)」のようなマスコット・キャラクターが描かれていれば、すぐに「日本のものだ」と判別がつくほどです。

トラディショナルな日本文化が海外で受け入れられるというのは周知の事実ですが、ゲーム・漫画に起因する「日本のサブカルチャー」も、こちらではかなりの影響力を持っています!

和紙テクスチャの魅力

身の回りからどんどんプラスチック製品が消え、紙のものが増えているフランス。
当然日本の和紙は、「日本らしさ」を伝えるとともに環境にやさしいアイテムでもあります。パリの和菓子パティスリー「TOMO(朋)」では、パッケージに和紙を使っています。

チョコレートやどら焼きを入れる和紙のBOX。

自然素材で土にかえりやすく、実は口に入っても安心という和紙は、現代のエコブームにも合っているのだとか。きちんと保管すれば、100年以上もの耐久性があるそうです。

先に挙げた「日本らしい」パッケージと比べると、和紙はフランスでは認知度は低いです。ですが見た目の美しさや心地良い手触りなど、さまざまな魅力を持つ和紙は、まだまだ無限の可能性を秘めていそうです。

トレンドの一つ、抹茶大福が入った紙製のパッケージ。

大福や饅頭などが入った紙製の簡易パッケージも、実はフランスにはありません。
そのほとんどがリサイクルのプラスチックフィルムやBOXなので、こういった優しい手触りの薄手のパッケージは、デリケートな食品にぴったりです。

ラグジュアリー感とポップの二極

今回パリを取材してみて、フランスで受け入れられる「日本らしい」和菓子のパッケージデザインは大きく分けて2種類ありました。
一つは伝統的かつラグジュアリー感にあふれているもの、そしてもう一つはポップカルチャーに沿ったものです。
ターゲットとなる年齢層にもよりますが、ゲームや漫画といったサブカルチャー的なデザインは、特に40歳以下のフランス人男女に人気があるようです。

デザイン性もさることながら、テクスチャーも「日本らしさ」を演出する重要なポイントです。また、フランスはエコ意識が非常に高いので、こういった「日本らしさ」にエコフレンドリーがプラスされればもっと良いのではないでしょうか。

 

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