毎日の買い物で実現するSDGs。エシカル消費の先駆的スーパー「Good Earth」
今日はサンフランシスコにあるスーパーに注目していきたいと思います。
サンフランシスコの周辺地域で「オーガニック」ムーブメントが始まったのは1970年代初期。今、日本でブームとなっている「SDGs」を語る人は殆どいません。
「サステイナビリティ」(持続可能)という言葉はすでに30年以上前から使われていたし、市では20年前からゴミゼロ目標が徹底され、SDGsな暮らしがすでに根付いているからです。
今回、50年以上前から小さな商店から始まり、持続可能な社会作りを牽引してきたスーパーマーケットを紹介します。
「Good Earth 」から始まったムーブメント
サンフランシスコ郊外の「フェアファックス」という小さな町にある「Good Earth」は、1969年にナチュラル、オーガニック系ストアとして開業しました。アメリカでまだ「オーガニック」の認証もなかった頃、「オーガニック農家を支援して健康的な社会を作りたい」と立ち上がった若者が始めました。当時はまだ人が10人も入ればいっぱいになるような小さな個人商店でした。
「Good Earth」を支えたのは地域住人です。1960年代、大量生産、大量消費、大量廃棄が横行していた「商業的で不健康な社会を変えたい」という思想が若者を中心に広がり、次第にナチュラル、オーガニック系スーパーを支持する住民が増えていきました。
そのうねりは、サンフランシスコとその周辺にも拡大し、70年代になるとナチュラル系ストアがあちこちで見られる様になり、71年には、今や世界的に有名になったオーガニックレストラン、「シェ・パニーズ」が開業し、ムーブメントが起こりました。
この波に政府も動き出します。
73年にカリフォルニア州のCCOFオーガニック農家認証、続いて90年にUSDA(米国農務省)は作物から化粧品までのオーガニック認証が施行されました。同時に官民共に持続可能な海、農産物、家畜を守る活動が続いています。
「Good Earth」は、食品の一生を無駄なく使い切る循環型経済、「サーキュラーエコノミー」を地域と共に実践してきました。
エネルギーも再生可能:スーパーが取り組むSDGs
1、再生可能エネルギー
「Good Earth」から発信されるメッセージは商品だけではありません。2008年に2度目の移転で大型店舗となった同店は、100%再生可能エネルギーを使用するスーパーに生まれ変わりました。
4万スクエアフィートの屋根に敷き詰められた最新のソーラーパネルは、日照条件にもよりますが、50~75%の店内の需要を賄っています。残りの必要な電力需要は、地域のグリーンエネルギーサービスの風力、水力発電で補充しています。
2、「フードプリント」と「フードロス」:食物の一生に責任を持つ
フードプリントとは足跡と フードを掛け合わせた造語で、ここでは主にフードロスの概念に使用されています。植物の種から生産、流通、加工、消費、廃棄に投じるエネルギーまでの過程、「フードプリント」に環境負荷がないよう透明化し、個人や企業が協力し「食物の一生に責任を持つ」循環が実施されています。
「Good Earth」で扱われる食品は、パッケージも含めリサイクルかコンポスト(生ごみや落ち葉などを分解し、堆肥化させること)のどちらかに分類さます。食べ残しやキッチンで使い残した野菜はコンポストにしてまた仕入れ先の農家の土に戻す「循環農業」を実施しています。オーガニック野菜からの生ゴミはまた土壌を肥しながら、農家では次に仕入れる野菜を作っています。
「フードロス」を回避する為に生産者とスーパー(または消費者)の距離が近いのが特徴です。
3、教育:モノはどこから来てどこに行くのか
そんなスーパーの取り組みは地元の子供達の教育現場にもなっています。「食はどこからきてどこに行くのか」を子供達が知る事で食品に対しての感謝や地球環境への思いやりなどが芽生え、学校や家庭環境の向上にも繋がっています。
4、自社ブランドとキッチン
「Good Earth」では、良い商品をリーズナブルに提供する為、なるべく仲介業者を省いています。生鮮食品は地元で長年のパートナーである農家から直接入荷し、店内のキッチンで自社ブランドの食品や惣菜、弁当なども作っています。食材は全て記載してあり、常連客は信頼できるオーガニック食品をリーゾナブルな価格で購入できます。
5、「サステイナビリティ」な環境
「Good Earth」は入った瞬間から居心地の良さを感じます。派手な広告や音声宣伝など一切なく、花売り場から迎えられ、ナチュラル食品からのエネルギーを感じます。
圧迫されないゆったりしたレイアウトは、買い物客だけではなく、ここで働く従業員にも気持ちよく働く環境が与えられます。ストレスのない「働き方」もサステイナビリティ(持続性)の一環となっています。
6、「エシカル消費」
無駄なモノを無くし、「本物の食べ物」を適正価格で提供するのが「Good Earth」のモットーです。究極の「エシカル消費」となるバルク売りコーナーでは、買い物客が率先して容器を持参し詰めていく光景が当たり前になっています。オリーブオイル、ナッツ、米や小麦粉、ソースから液体ソープ、そしてシャンプーまで日用生活品に至るまで、「ゴミゼロ」の目標を掲げています。
7、ラベリングと表示
常連客は各商品の特徴を知っていますが、普段利用しない客はどのように商品を見分けているのでしょう?
通常、パッケージの裏の成分表を見て買う人もいますが、ここでは一目でどんな商品か見分けがつくように、全ての商品にラベリングを表示しています。
例えば、地元カリフォルニア産(半径100マイル以内)、グルテンフリー、ビーガン、ノンGMO(遺伝子組み換えナシ)フェアトレード(良い労働環境で生産されたモノを適正価格で取引をする)、砂糖含まない、などの表示で、自分のライフスタイルに合った商品をスムーズに選ぶ事ができます。
8、シンプルなパッケージ
食品棚に並ぶ加工食品のパッケージは、再生可能な植物由来の素材、または紙から作られていることで、形はどれも似たり寄ったりなのですが、それが故に商品の強いアピールを感じます。
アピールと言っても色やロゴで「目立つ」のではなく、シンプルでデザイン性に優れ、生産者の想いを込めたメッセージの力強さがあります。
それが逆に消費者を魅了し、より良い商品を選ぶ目安となっています。
さいごに
「Good Earth」が開業して以来、「フェアファックス」の小さな町にはオーガニックやクラフトショップが増え、それを支持する人が集まり、確実にSDGsの模範シティとなっています。
一人一人が「何を、誰から買うか」の良い選択が、生産者への支援となり、社会を変え、サステイナブルで住みやすい町を作る「力」になる事がここで実証されています。
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