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パッケージから見るバレンタインのロンドンとは?

街中がバレンタイン一色になるシーズン

イギリスではパンデミックの影響も徐々に弱まってきています。政府はビジネスの回復を狙ってか厳しい規制を取り払っていく方向にあり、ロンドナー*たちも通常に近いリラックスした様子を取り戻してきています。(*ロンドナーとは「イギリス・ロンドン出身の方」もしくは「ロンドン在住の方」のことを指す)

そんな中で迎えた2月14日のバレンタイン・デー。

1年のうちでも商業的にとても盛り上がる時期でもありますが、いちばん賑わうのは実はショップやデパートではなく、花屋さん。

伝統的に、愛する人に赤いバラを贈るのがこの国の習わしなのです。

バレンタイン・デー当日のリバティ百貨店。花屋さんが賑わっていました。

古来のイギリスでは、バレンタイン・デーは男性から女性へと愛を伝える日でした。

源流は古代ローマにありますが、比較的早い時期からヨーロッパにも風習が広まり、17世紀頃には早くもイギリス国内でよく知られるイベントだったのではないかと伝えられています。

19世紀半ばにイギリスで郵便制度が整えられてからは、男性から意中の女性へカードで思いを伝える風習が生まれ、同じヴィクトリア朝時代には赤いバラの花がロマンチックな情熱の象徴として贈られるようになりました。

また同じ頃にイギリスのチョコレートブランド、キャドバリー社が贈答用のチョコレートボックスを発売すると、「カード+チョコレート+バラ」という現在のバレンタインギフトの原型が出来上がり、そこに商業的なチャンスを見出した人々がバレンタインビジネスを育てていくようになったというわけです。

この時期は街中がハートやバラのモチーフで溢れ、パッションを表す赤やピンクに染まります。

レストランやカフェも特別メニューを用意し、インテリアを整えて幸せなカップルたちを迎えるのです。

バレンタイン・プレゼントの定番はコスメ商品

イギリスで男性から女性へ贈るギフトの定番と言えば、コスメやボディケア用品、そして香水が代表的なものです。

実はイギリスでは、特に若い世代がコスメに夢中だという調査結果があり、私自身も公共の場所で人間観察をしていると20歳前後の世代がメイクアップを楽しんでいるという印象を受けます。

特に目元メイクの斬新さでは、もしかするとイギリスの若者にかなう国はないかもしれません。

デパートにも様々な商品が並びますが、パッケージの面白さで言うとオンラインで見つけられるものの中にたくさんの工夫があります。

バレンタインを狙ったオンライン商品には、LOOKFANTASTICというイギリス発のメイクアップブランドが頑張っており、年々成長を続ける中で新商品をどんどん打ち出しています。

「ナチュラル」や「オーガニック」路線のものもありますが、昔風のギラギラとしたメイクグッズも多数発信し、パッケージにも力を入れて若い世代の注目を集めているようです。

バレンタイン用には赤やピンクをコンセプトカラーに、宝石箱をイメージしたボックスが目立ちます。

ナチュラルメイクと並行し、今もこの国ではバッチリしっかりとメイクを施すことで個性を際立たせるのが良いという考えが根強くあるため、アイメイク商品の色展開やつけまつげなど趣向を凝らした商品も多いようです。

クリスマス商品の流用にも見える2段構えのボックス

中央で開くタイプ

ブック型

マスク用の斬新なギフト・パッケージ

デパートはイースター戦線とのせめぎ合い

一方デパートの様子はどんな感じなのでしょうか。

売り場には確かにバレンタインコーナーがあるのですが、ディスプレイという意味では、今年はあまり目を引く感じではありませんでした。

もしかするとパンデミックによる顧客減少が影響しているのかもしれません。(その証拠に、ロンドンの代表的なデパートであるジョン・ルイスではクリスマス商品がまだ並べられていました。なるべく無駄なく売り切っていこうという姿勢なのでしょう。)

ジョン・ルイスのバレンタイン・コーナー

アルコールとチョコレートを組み合わせたギフト商品も人気です

ジョン・ルイスで見かけた子どもをターゲットにしたバレンタイン商品

こちらはリバティ。クラシックなパッケージが並びます

セルフリッジズのバレンタイン・コーナーにあったブック型のチョコレートボックス。 ヨーロッパでは本型パッケージは古典的でロマンチックなイメージがあるのかもしれません。

 

ユニークな商品を取り扱うことで知られるセルフリッジズでは、他にはない面白いものも扱っていました。

例えばこちらはデンマーク生まれのスイーツ・ブランド「Lakrids by Bülow」による、コスメ商品のような容器に入ったスイーツ。欧州で人気のフレーバー、リコリスに特化したブランドです。

またUK発のビスケット・ブラント、Biscuiteersの缶入りバレンタイン商品も目を引きました。自社ホームページには下の写真のようなバレンタイン商品もあり、あまりイギリスでは見かけない可愛らしいタイプのパッケージは、もらうと乙女心をくすぐられそうです。

セルフリッジズで見つけたビスケティアーズのバレンタイン商品

ビスケティアーズはパッケージに力を入れているビスケット・ギフトに特化したブランドです。 こちらはホームページに掲載されているもの。

可愛らしいデザインが得意

売り場ではイースター用の商品もかなりスペースをとっていました。

イギリスではバレンタインの次のイベントとして、3月・4月のイースターへ向けた商品も並行して展開されていくことがわかります。

ラグジュアリー贈答品のパッケージ

バレンタインに関連した商品として面白かったのはこのくらいですが、今回デパートをくまなく歩いてみて気づいたことをレポートしたいと思います。

それは以前のイギリスではあまり見かけなかった「ラグジュアリーな贈答品」の種類が増えていたことです。

イギリスには日本のような「お世話になった人に贈り物をする」お中元やお歳暮の習慣がありません。

またこちらに長く住んでいると実感することですが、イギリス人は、もともと手先が器用な人が少ないため、素敵なパッケージやラッピングに接する機会も少なく、ギフトの見た目を「より良いものにしたい」という思いも全体として少なかったのではないかと推察しています。

しかし市場がグローバル化し、他国ブランドの商品などに接するようになって刺激を受け、現在のような「見た目の良い贈答品」市場が発展してきたのかなと思っています。またビジネス側はあらゆるイベントを利用して贈答品市場を活性化したいという狙いもあると思います。

今回、特にジョン・ルイスが価格帯15〜35ポンド程度(約2,000〜5,000円)のボディケア用品や食品などの贈答品に力を入れているのが印象的でした。

家の形をしたボディケア・ギフト! イギリスでは中高年に受けそうなデザインです。

食料品の贈答用詰め合わせも以前より増えていました。

下記のCartwright & Butlerは近年急成長を見せているラグジュアリー食品ブランド。

菓子類から始まり、現在はジャムやドリンク類も扱っています。

私は同社パッケージの大ファン! ビスケットやチョコレートの缶は集めずにはおられない洗練されたデザインで、商品クオリティもさることながら、容器の質にも目を見張るものがあります。

容器に力を入れているため少しお値段は張るのですが、再利用できることを考えると結局はリーズナブルなのかなと思わせる力があります。

 同社のバレンタイン・ギフトはこちらで参照できます。

スコットランド発の食品ブランド、Edinburgh Preservesもサステナビリティを重視しており、プラスチックを使用しないパッケージを心がけています。

こちらのギフト・ボックスには、グラフィックに描かれているリスのように食べるのが止まらなくなってしまいそうな季節のジャムやチャツネがぎっしり詰まっています。

 

最後にバレンタイン・ギフトとしてもおそらく活躍したと思われる、ボディケアやウェルビーイング分野のパッケージで最先端となるナチュラル系のものをご紹介します。

WanderflowerというUK発のウェルネス・ブランドは、今やイギリス各地の小売店で求めることができるトップ・クオリティ商品レンジ。

究極のナチュラル志向を表現するために、木材や布などの再利用可能な素材を多用しており、どこか東洋的なしなやかさを感じます。

こちらはマークス&スペンサーの「Apothecary」という自社開発ブランド。ボディケアやフレグランスの分野をカバーし、容器もミニマル&シンプルを表現。

こういったナチュラル思考の商品ブランドは、今後もますます増えて行きそうな予感です。

イギリスのバレンタイン事情

さて、イギリスのバレンタイン事情と贈答品市場活性化のレポート、いかがだったでしょうか。

バレンタイン商品は今年も赤やピンクを基調に、ラグジュアリー感のあるものという定番路線でした。

そういった直接的なメッセージが込められた商品を避け、ご自身の個性を主張して相手の気を引きたい場合は今回ご紹介したような贈答品路線で攻めてみても喜ばれそうですよね。

 

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