フランス、パリのバレンタインは多様化の時代へ。サステイナブルと楽しみを同時に
恋人たちのイベント、2月14日のバレンタインデー。その祝い方は、日本とフランスでは少し様子が異なります。
フランスでは男性から女性へのプレゼントのほかに、様々なイベントが用意されていてちょっとした「フェスティバル」のような雰囲気もあります。
一般的には、男性から女性に赤い薔薇(1本もしくは花束、本数にも意味があります)を贈り、レストランでディナー、という方法が毎年の定番となっています。
しかしパリを中心とした大都市では文化の多様化・エコ志向に伴い、ユニークなイベントそしてギフトアイデアもどんどん幅広くなっています。
それではパリでどんなイベントが行われ、どんなアイデアが生まれたのか見てみましょう。
定番の薔薇の花束もサステイナブルに
フランスでは毎年、全国で約150万本の薔薇がバレンタインデーの日に販売されるといいます。しかし少しずつ明るみになっているのが、花の輸送時にかかるCO2問題と、花の過剰栽培が環境に与える悪影響について。
フランスはフラワーアレンジメントの本場と言われていますが、実はその花の9割近くが中東やオランダ等から輸入されているとのことです。
中には長い輸送時間に耐えるために冷凍されているといい、その際のCO2排出量は国内で生産される花の30倍にもなるそうです。
切り花は確かに美しいですが、一週間も経てばやはり元気がなくなってしまい、最終的には処分しなくてはなりません。気持ちを上げてくれたとはいえ、花を捨てるには食べ物を捨てる時のようなちょっとした罪悪感も生まれてしまいます。
パリにあるフラワーショップ「LUV BOX(ラブ・ボックス)」は、そんな薔薇を「長く愛でる」ことをコンセプトにした新しい場所です。
販売されている花は薔薇がメインで、そのほとんどはプリザーブドフラワーになっています。
プリザーブドフラワーとは、生花を長い間楽しめるよう保存加工を施した花のことを言います。こちらでは、薔薇が最も美しく華やかに咲く時期に色素を抜き、特殊な染料を吸わせ、鮮やかに発色させます。そのため薔薇はピーク時のみずみずしさを保ち、花びらはふっくら・生き生きとしているのが特徴です。
プリザーブドフラワーのメリットは、枯れることがなく水やりの必要もないこと。
さらに「LUV BOX(ラブ・ボックス)」ではプラスチックの製造工程を徹底排除しているので、環境負荷が大幅に軽減されているのだそうです。数年間は持続するとのことですから、罪悪感なく薔薇の美しさを楽しめますね。
またパリでは最近、サステイナビリティの一環としてドライフラワーも流行しつつあります。こちらも「生花に第二の人生を」というコンセプトが掲げられており、「LUV BOX(ラブ・ボックス)」での取り扱いはもちろんですが、パリの中心ではドライフラワーの専門店までオープンするようになりました。
パッケージはやはりハート一色
さて花束以外のバレンタインデー・ギフトとしては、香水や服飾小物のほかに、やはりスイーツがあります。日本ですとチョコレートが一般的ですが、フランスにおけるバレンタインデーは「スイーツ全般」といったところでしょうか。
そのパッケージデザインはハート一色、といって良いほどです。
色もほとんどが赤で、パッケージだけは奇をてらったものがなく王道スタイルを守っている、という印象を受けました。
ただ、特徴はその数が本当に多いことです。パリでは1月後半よりデパートのウィンドウや売り場にハートが増えますが、郊外のパン屋さんやワインショップでもハートマークが散りばめられており(中には不動産のウィンドウでも見かけました)、バレンタインデーのメインがスイーツだけではない、ということも分かりました。
もう一つの特徴は、2月14日を過ぎてもポップアップを行っている場所があることです。
例えばパリの老舗デパート、プランタンでは3月の半ばまで継続してバレンタインフェアが行われていて、外のウィンドウもメインエントランスの広場でも、ハートのディスプレイをまだまだ見ることができます。
フランスではクリスマスの飾り付けも、12月25日を過ぎても続きます(だいたい1月の半ばにツリーを片づけます)。クリスマスは宗教上のしきたりもありますが、こうしたビッグイベントは名残惜しそうに緩やかに続いていくのが特徴かもしれません。
バレンタイン×美術館のイベント
またパリならではのイベントとして、美術館におけるバレンタインデーの特別企画があります。有名なところはパリ7区にある「ロダン美術館」です。これは閉館後の19時以降に貸し切りで行われる予約制のイベントで、展示されているロダンの彫刻に薔薇の花びらが撒かれたり、ミニコンサートが行われたりするカップルのための特別なイベントです。
ロダン美術館のバレンタイン特別企画は、パリのイベントの中では比較的大人の男女向けです。この日は愛をテーマにしたロダン作品についての哲学的な観察会や、『考える人』が置かれた中庭に特別な仮設バーが登場していました。
またお土産屋さんも2月14日のみバレンタイン仕様に切り替わります。ほとんど全ての商品に「AMOUR(愛)」というメッセージが添えられ、徹底したアイテムが並べられていました。
電光掲示板に愛のメッセージ
フランスにはもう一つ、バレンタインデーの風物詩があります。
それは「パリ市内170ヶ所の電光掲示板にあなたの伝えたいメッセージを表示します」というもの。
これは何年も前から続いているバレンタインデーだけの企画で、パリ以外でもフランスの各都市で行われています。
申し込みは事前に自治体のHPにオンラインで応募するだけです。(文字数はアルファベットで160桁と規制があります)
2月14日のバレンタインデー当日には、通常朝6時から夜中24時まで、厳選された美しい愛のメッセージが国内数百カ所の電光掲示板に表示されます。
※ただしフランスは節電のため、2022年より夜22時以降の電光掲示板は消灯されるようになりました。
中にはこちらを使ってプロポーズする人も!また交際を申し込んだり、日頃の感謝の気持ちを述べたり、結婚50周年の節目に「永遠の愛」を告白するメッセージもありました。
ちなみに今年2023年の一例をご紹介します。
「76歳で運命の人を見つけた喜びを、世界中に知らせたい!でもまずはパリ市から始めることにするわ」
バレンタインデーを楽しむ
いかがでしたでしょうか。フランスのバレンタインデーはアムールの国らしく、イベントを心底楽しんでいるといった雰囲気があります。
以前は薔薇の花束&ディナーだけといった正統作戦も、ここ数年ではぐんと幅が広がり一種のお祭りのようにもなりました。
ただフランス社会におけるエコ意識の浸透で、プレゼントもイベントもサステイナブルなものになりつつあります。そしてエコにワクワクするような楽しさを乗せているのが、フランスの特徴だと言えます。
▼関連性のある記事
フィンランドのバレンタイン商品のパッケージ
パッケージから見るバレンタインのロンドンとは?