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コスメも使い切りの時代へ。「LUSH(ラッシュ)」がパリで打ち出す新コンセプトストア「Fresh & Flowers」

カラフルで香り豊かなスキンケア・ヘアケアやバスアイテムで人気の「LUSH(ラッシュ)」は、1995年にイギリスで生まれたコスメブランド。オーガニックのフルーツや野菜、エッセンシャルオイルなど自然由来の原材料を用いた手作りのコスメが人気です。

今回は、その「ラッシュ」が2019年10月に世界で初めてパリにオープンした「Fresh & Flowers(フレッシュ&フラワーズ)」という新コンセプトを掲げる店舗をご紹介します。

Photo:新店舗のあるマレ地区は、中世の面影を残しつつ、おしゃれなブティックやカフェが立ち並ぶ、パリの昔と今を体感できるエリア。

「Fresh & Flowers」の「Fresh(フレッシュ)」とは?

コンセプトの最大の特徴は、取り扱うすべてのアイテムから、ほぼすべての合成保存料をなくしたこと。これまでもラッシュは、水分・油分・自然由来の原材料の配合バランスを調整することによって、できる限り合成保存料に依存せずに保存が可能な商品を開発してきましたが、この新コンセプトでは考え方を転換して、「保存すること」を前提としない、本当の意味でフレッシュ(新鮮)なコスメを追求しています。

Photo:水と混ぜて使うキャンディのようなフェイスマスク。いかにも作りたてらしい新鮮さが伝わる。

採れたてのフルーツや野菜に含まれる栄養素やビタミン、ミネラルを、一番効果が高いタイミングで肌に届けられるよう、商品はなるべく少量ずつ製造され、28日以内に店頭に並びます。どれも使用期限は通常のラッシュの商品よりも短く、数日〜数週間で使い切らなければなりません。フェイスマスクや洗顔料などの水分量の多いアイテムは、さらに冷蔵保存が必要です。

Photo:デザートのように見えるのは、マスクと洗顔料が固形美容液の容器に入った3 in 1のセラム。

「Fresh & Flowers」の「Flowers(フラワーズ)」とは?

新コンセプトのもう1つの柱は「Flowers」、花です。フランス国内の選ばれた生産者が、化学肥料を使用せずに栽培した新鮮な季節の花のブーケやハーブの鉢を、コスメと同じように買うことができます。

長く保存することはできないけれど、命ある間、その美しさで私たちの心を癒やしてくれる花や緑の存在は、まさに、自然の恵みをありのままに取り入れようとするこの店の象徴とも言えます。花を身近に置くことで、気分が良くなったり、ストレスが軽減されたりするというのは科学的にも証明されています。

Photo:こんなに花やグリーンに満たされたコスメショップは意外とない。

Photo:生花が少ない冬だからか、インテリアアイテムとして再ブレイクしているドライフラワーもいっぱい。

「Fresh & Flowers」がパリで生まれた理由

イギリス発のコスメブランド「ラッシュ」の新コンセプト1号店が、フランス・パリに誕生したのはなぜでしょうか?それは、このコンセプトが伝統的に食材の新鮮さにこだわるフランス人からインスパイアされて生まれたものだからです。

たとえばフランスの食卓に欠かせないバゲットは、とにかく新鮮さが命のパンなので、食事どきにはパン屋さんに行列ができます。焼き立てが一番美味しいとみんな知っているからです。また、どんなにスーパーが便利でも、野菜や果物、肉、魚などの生鮮食品はマルシェ(市場)で買いたいと考える人もたくさんいます。

マルシェに行けば旬がわかり、より新鮮な食べ物が並んでいるうえ、お店の人と相談して食べ頃のものを買えるからです。買ったらなるべく早く使い切る、どうしても保存するなら冷蔵が必要、など、まさに「食べ物と同じくらい新鮮なコスメ」というコンセプトはこうして生まれました。

Photo:パッケージなしの商品が棚にずらりと並べられている姿は、まさにマルシェそのもの。

Photo:店内中央のテーブルと椅子が、まるで誰かのアパルトマンを訪れたようなリラックスした雰囲気を演出。

まるでコスメのマルシェ

Photo:マルシェの魚屋さんさながらに氷の上に置かれた要冷蔵のフェイスマスクは、ディップやアイスクリームのようで思わず味見してしまいそう。

どの商品も、作りたてのフレッシュさがダイレクトに伝わるディスプレイがワクワクさせます。ユニークなデザインとテクスチャ(質感)なので、「どうやって使うんだろう」「どんな匂いがするのかな」と好奇心をそそり、自然とお店のスタッフとのコミュニケーションが始まります。マルシェで見慣れない野菜を見つけたとき、お店の人に「これはどうやって食べるんですか?」と聞くのと同じですね。

Photo:チーズのように欲しい量だけカットしてもらって買う石鹸。

Photo:固形のマッサージオイルは色までバターのよう。

包装ゴミを減らす取り組み

Photo:カットした石鹸はワックスペーパーで包んでくれる。

フランスでは、マルシェはもちろんスーパーでさえも、きゅうり1本、バナナ1本から量り売りで買うことができます。肉屋さんでは大きな塊肉、チーズ屋では大きなチーズから、欲しい分だけ切り分けてもらえます。フランス人にとって当たり前の量り売りの習慣は、同時に、包装を削減する有効な手段でもあります。

ラッシュも創業以来、包装ゴミ、特に使い捨てプラスチックを減らす努力を続けてきましたが、とりわけこの「Fresh & Flowers」のお店では、「ネイキッド」と呼ばれるパッケージを必要としない商品が大半です。フェイスパックを入れる黒い容器は100%リサイクルプラスチックで、容器の回収も行っています。

Photo:「ラッシュ」が新たに開発したスマホアプリ「#LUSHLABS」

Photo:アプリで商品を認識すると、詳細情報が表示される。

「#LUSHLABS」は、デジタルテクノロジーを駆使して、ラッシュが新しい体験を提案していくアプリ。この中にある「LUSH LENS」は、パッケージのない商品に関する情報を代わりに教えてくれる便利な機能で、まさに包装を減らすうえでも大きな力になります。カメラをかざすと自動的に商品を認識して、商品名、価格、詳しい解説、原材料、さらに使い方がわかる動画が表示されます。

この店でしかできない体験を生み出す

店内のカウンターでは、生産者自身や店のスタッフが商品の最後の仕上げを行っている様子を実際に目にすることができます。まるで、パン屋さんでオーブンからバゲットが出てくるのを覗くように、パティスリーでケーキにクリームを絞るところを観察するように…こうして顧客は、ここにあるコスメの「フレッシュさ」をますます実感して、惹きつけられます。

Photo:フェイスとボディ用のフレッシュなソープの仕上げ中。

Photo:1個ずつ丁寧にカラフルな花びらをつけていく。

Photo:金箔やハーブ、花びらをまとった美味しそうなケーキに見えてくる。

Photo:自分だけのバスボムを作る。

「自分だけのバスボム」が作れるのもこのお店だけ。バニラとレモン、ダバナ(ハーブの一種)の香りのカラフルなバスボムから好きな色の組み合わせを選んだら、中に好みの花びらを閉じ込めれば、自分だけのバスボムのできあがりです。

「お風呂にこのバスボムを溶かしたら、花びらが広がってどんなにきれいだろうか」と楽しみに心躍らせながら家路につく、そんな体験はオンラインショップでは提供できません。

 

Photo:フルーツの成分とエッセンシャルオイルを閉じ込めたホイップソープ。

ラッシュは創立以来、環境問題や動物の権利、フェアトレード、地域再生など、様々な社会問題に積極的に関わってきた企業です。合成保存料や包装ゴミを減らす努力を続けてきた、その延長線上に「Fresh & Flowers」のコンセプトが生まれたとも言えるでしょう。

パリジャンがブランジュリーで毎日買うバゲットや、マルシェで買う野菜のように、新鮮さで勝負するコスメを提供するというこの新しいコンセプトは、まさにリアル店舗でなければ実現できないもので、そこでしか買うことのできないフレッシュな商品が顧客の心を動かします。

LUSH
18 Rue Vieille du Temple 75004 Paris
https://fr.lush.com(フランスの公式サイト)
https://jn.lush.com/(日本の公式サイト)

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