ビジネスパーソンが読むメディア。マーケティング、セールスプロモーション、パッケージの企画・開発に役立つアイデアと最新の情報を、世界中から配信。

リフィルステーションモデルは定着するか

 

詰め替え市場、あるいは計り売り市場は定着するのでしょうか。

京都で営業する斗々屋京都本店は、2021年にオープンした日本初のゼロウェイストスーパーマーケットです。斗々屋では、商品の使い捨て包装がなく繰り返し使える袋や容器を使って量り売りをしています。

計り売りは貨幣経済が普及した12世紀頃から普及したといわれ、お酒の流通には柳樽と呼ばれる樽が酒屋の貸し樽、売り樽として運搬用に使われました。江戸時代にはお酒は樽に入れられ原酒のまま酒屋に届けられ、 各々の酒屋が独自に加水したりブレンドしたりして販売していました。

そんな計り売りの販売形態を取り入れたのが、斗々屋京都本店です。
日々の買い物を通して「地球1個分の暮らし」の概念を根付かせサステナブルな未来のための消費や生活のあり方を広げることをミッションに掲げています。

お客様が商品棚から商品を取り出すとその情報が近くの電子測りに送り出され、容器に入れた商品を乗せるとそれを感知した商品名がスクリーンに映し出されます。購入商品を選択すると、バーコードが出てくるので、それを容器に貼ることでレジにて決済が可能です。
また同店はコーヒーかすの回収も行い、業者を通して京都の農園などに堆肥として提供。家で飲んだコーヒーかすも無駄にならないエコな仕組みを提供しています。

斗々屋京都本店ホームページより

詰め替えや、計り売りが注目されているのは日本だけではありません。
調査研究機関のSmithersの「The Future of Refillable and Reusable Packaging to 2027」は、詰め替え可能および再利用可能な製品のパッケージ売上高が2017 年の推定 351 億ドルから 2022 年には 420 億ドルに増加し、毎年 5% の継続的な成長で、2027 年には 535 億ドルに達すると予測しています。

それではどんな分野で、詰め替えモデルが成功しているのでしょうか?
日本でも瓶ビールの回収は早くから普及しており、ビール酒造組合によれば、空いたリターナブル瓶を販売店に戻せば5円の補償金が戻ります。最近はすっかりそんなことも忘れてしまっていますが、飲料市場では再利用と詰め替えのビジネス モデルが確立されており、すべての再利用詰め替えパックの 75% 以上が飲料関連といわれています。

The Coca-Cola Company は、2030 年までに同社の飲料ポートフォリオの 25% を詰め替え可能またはリターナブルなガラス製またはプラスチック製のパッケージで利用できるようにすることを宣言しており、他の飲料メーカーも興味をもっています。
コカコーラ社は2022年7月からフランスとスペインでNewCompactFreestyle®ディスペンサーのトライアルをスタートしました。

NewCompactFreestyleディスペンサー

飲料の進捗に対し、食品、ホームケア、化粧品、パーソナルケアを含む分野はまだ初期段階で、より大きな市場規模に到達するには繰り返し使用しても長持ちする耐久性のあるパッケージが求められています。
Hubbubの調査では消費者の 26% が再利用可能な容器の傷、汚れ、または損傷を懸念していますが、それにもかかわらずこれらの新しいセグメントが 2027 年までに前年比で 30% を超える成長を遂げる可能性があると予測しています。
同社は、これは主にCOVID-19 のパンデミックによりオンラインへの移行が進んだ後の e コマース サブスクリプションの売上高の増加によるものと考えています。

現在再利用および詰め替え分野のビジネスモデルとして考えられている内容についてご紹介します。

サブスクリプションモデル

一つ目は、軽量または高濃度のリフィルを携帯リフィルまたはサブスクリプション サービスによってユーザーの自宅に届けるものです。
英国の小売業者である Marks & Spencer、Morrisons、Ocado、Waitrose & Partners、および CHEP による最近発表された詰め替え試験は、店舗を超えた詰め替え可能なソリューションを可能にするために計画されたプログラムです。

店舗モデル

店内補充モデルでは買い物客が再利用可能な容器を店内のディスペンサーに持って行き、補充する必要があります。同様に店舗での返品モデルはデポジットをスキームとして機能させ、ユーザーはパッケージを指定場所または店舗に返却して返金を受けます。
これらのモデルは、Tesco を含む小売業者によって再利用会社ReReを介してLoopおよび ASDA との再利用トライアルの一環としておこなわれています。
TESCOでは88商品のLOOP商品を取り込んで実験がおこなわれました。

ASDA ホームページより

スマートフォンモデル

店舗モデルに加えてスマートフォンを活用し、近くの補充場所を見つけたり、商品情報や調理情報、交換のタイミングなどの情報をやり取りすることで、よりきめ細かい詰め替えビジネスを展開することができます。
特に滞りがちな返品を奨励するアプリやプロモーション、近くの補充場所などの情報提供は効果的です。スマートフォンの位置情報システムを組み込んだトラックアンドトレースを使用してより効率的な収集システムを考案できます。

ドイツのスーパーマーケットチェーンREWEは小売市場で再利用可能なパッケージングのためのデジタルソリューションを発表しました。スタートアップのVYTAL社とともに、REWEスーパーマーケットでサラダバー用の無料の再利用可能なシステムを顧客に提供しています。

提供される硬質プラスチックボウルは1,250mlの容量があり、食器洗い機や電子レンジの使用も可能です。このレンタルシステムは再利用可能なボトルシステムとは異なり、デポジットを必要としません。代わりにユーザーはアプリを介してサービスプロバイダーに登録します。
お客様はサービングステーションでQRコードをスキャンし、サラダをボウルに入れます。
ボウルは24時間以内に返却すれば洗わずに返すことができます。それ以上かかる場合は、完全に空にして綺麗に洗ってから返却する必要があります。
スーパーに返却する方法は、QRコードをスキャンしてボウルを返却場所に戻します。
利用者は再利用可能なパッケージを同サービスを採用しているテイクアウトレストランなどのVYTALパートナーに返還することもできます。

店内拠点の拡張モデル

現在は店内補充プラットフォームの補充場所のスペースや展開が限られています。当面の優先事項は、スーパーマーケットの棚と同等の幅広い移動式詰め替え設備とマルチプロダクトディスペンサーの開発です。

ボトル洗浄技術の開発により、既存の飲料小売システムで回収可能なボトルの数も増加し、このセグメントを引き続き押し上げる可能性があります。
自動化された分散型のマイクロクリーニング施設や、より耐久性のあるペットボトル構造などのソリューションがもとめられています。

花王株式会社は、衣料用洗剤「アタックZERO」と「エマール」、柔軟剤「フレア・フレグランス IROKA」、食器用洗剤「キュキュット」をお客さまの希望量で販売する専用売り場「量り売り堂」をウエルシア薬局と連携して、ハックドラッグ美しが丘店とイオンタウン幕張西店に設けて実験を行いました。
消費者が来店時に持参したボトル、もしくは量り売り堂オリジナルボトルを持参して充填します。
日本古来の「もったいない精神」を尊重し「量り売り堂」という親しみのある名前をつけ、未来のための新しい生活文化の実現を目指す花王の実験です。
期間限定の実証実験でしたが大手企業が取り組んだことで、高い注目を浴びました。

花王は従来の詰め替え用製品に加えて容器を捨てない新たな選択肢として量り売りを提案し、利用者の声を聞き新しい生活文化の実現を提案しています。また実験の成果を踏まえてカテゴリーの拡大や売り場の拡大も視野に入れたいとしています。 

ウエルシア薬局によると、利用客からの共感やお試しに少量から購入できるメリットなどへの賛同などが寄せられています。
詰め替え比率が7~8割に達するカテゴリーもある日用品業界にあって、量り売りという選択肢を得て、購入可能な場面が広がる中、消費者がどういう反応を見せるかが注目されています。
また専用の陳列台を用意することで、消費者の認知促進を期待しています。

花王株式会社 プレスリリースより

 

リフィルステーションモデルは定着するか

世界的にもBody Shopが2021年、2022年にリフィルステーションをそれぞれ400店舗展開。
ユニリーバが英国全域でリフィルサービスを展開、ロクシタンもリフィルステーションを発表し、日本でもナチュラルローソンにおけるエコストアのリフィルステーションなど、確実に流れが進んでおり、計り売り、詰め替え需要が注目されます。

 

▼関連記事はこちら

SDGs対応とエシカル消費、問われるパッケージの役割

ついに日本でも「LOOP」プロジェクトが始まる——テラサイクルと消費財メーカーが挑む、ゴミゼロ社会

このライターの記事

Top