前回「リサイクルの進まないアメリカ社会」の記事で、アメリカの田舎の地方でリサイクルが普及しない様子を紹介しました。筆者の住むクーパーズタウンを含め、アメリカの小さな町や村はまだまだリサイクル制度に改善できる点がたくさんあるといえます。
しかし、だからといってアメリカの田舎町が環境問題に対して全く何の対策も取っていないのかというとそうではありません。クーパーズタウンのような小さな町は「リユース」の面では非常に優れています。ゴミ対策の3本柱の1つであるモノの再利用。クーパーズタウンがどのようにしてリユースの進んだ循環型社会を作り出しているのかを紹介します。
どの町にもあるThrift Shop
人口2,000人弱のクーパーズタウンには、小さな商店街があるだけで大型量販店などはありません。そこで、衣類や家具、身の回りのものを購入する際には地元の「Thrift Shop(リサイクルショップ)」を利用することが一般的です。中古品店は家計の豊かさに関わらず、町の人みんなに広く愛されています。
クーパーズタウンには主に家具など大きなものを扱う個人経営の店と、衣類など身の回りのありとあらゆるものを販売している店の2つがあります。後者は地元の動物愛護団体「Susquehanna SPCA」によって運営されており、売上は全額動物保護のために役立てられます。
ボランティアと寄付で成り立つお店
このSPCAのThrift Shopで働いている人は、マネージャー1人を除いて全員ボランティア。動物たちのために役に立ちたいと思っている人が有志でシフトを組み、商品の配置や価格付け、店内の清掃、レジの担当などを行っています。
ボランティアはシニアの方がほとんど。空いた時間を生かして仕事をするだけでなく、町の交流の場にもなっています。世間話をするためだけにお店にやって来る人も。毎週水曜日のシニアデーは、60歳以上の人なら全品半額となるため、毎週大変混みあいます。
販売されている商品は、全て町の人からの寄付で成り立っています。日本では不用品を買い上げするリサイクルショップも多いですが、アメリカでは加えてドネーション型のThrift Shopが多く存在します。大きな団体だとGoodwillやSalvation Army(救世軍)のものが有名ですが、このように地元の小さな団体でもチャリティーショップとして中古品店を営んでいる例は少なくありません。
これまでは、だれでも自由に寄付できるのを言い訳にして、ゴミなどを投棄する事例が絶たなかったといいます。しかし店舗を建て替えてからは寄付可能な時間帯を制限し、また受け付け役を常時配置したり、SNSなどで寄付ルールの告知を行ったりするようになりました。そのおかげで、販売できない状態の品物の寄付が大幅に減ったそうです。
寄付をするのは個人だけではなく、地元のビジネスの場合も。例えば、ホテルで余ってしまったタオルやシーツ、飲食店で不要になった食器などが寄付されることもあります。これらの商品は特に人気が高く、口コミが広がってすぐに売り切れてしまうのだそうです。
図書館や教会でも同様な取り組み
このように中古品をチャリティ目的で販売するのは、SPCAだけではありません。クーパーズタウンの図書館は年に2度「Book Exchange」と呼ばれるイベントを行っています。決められた古本回収日に町の人々から集められた古本を販売し、図書館の活動費用にあてる取り組みです。
また、教会やその他のチャリティ団体も毎年似たようなイベントを開催します。掘り出し物がお手頃価格で手に入ると毎年大人気のイベントです。コロナによって2年間中止になっていた町の教会によるバザーが今年は復活するため、楽しみにしている人がたくさんいます。
さらに、Yard Sale(ヤード・セール)やGarage Sale(ガレージ・セール)と呼ばれる、個人の家の庭で自宅の断捨離品を販売するのも、アメリカでは定番となっています。クーパーズタウンでは毎年「ガレージ・セール・デー」が開催され、町中の人たちが自宅の庭に不用品を集めて、フリーマーケットのように販売を行います。マップが配られ、特設の駐車場が設けられるほどの一大イベントとなっています。
リユースで環境対策
このように、クーパーズタウンでは町全体が一体となってモノの循環を進めていることが分かります。このため、家具や本、生活小物などの多くは町の中で何度も再利用されていくのです。これはクーパーズタウンだけでなく、アメリカの田舎町では特徴的です。
リサイクルの面ではまだまだ学ぶべきことの多いアメリカですが、リユースが日常生活に根付いている田舎の生態系からは学べることもたくさんあるかもしれませんね。
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