日本でも環境負荷に対する意識が以前にも増して高まっています。SDGsやサステナブル、脱プラにエシカルといった言葉を頻繁に耳にするようになりました。
同じような製品であれば、少しでもエコなものを選びたいという消費行動も当たり前のものになってきているのを感じます。このような環境負荷に対する認識は拡がり、パッケージもその例外ではありません。
パッケージデザインに特化した世界的なアワードであるペントアワードにも持続可能なデザインというカテゴリーが新設されるほど、いま環境に対する配慮が重要視されています。
物を包装して保護するという性質上、パッケージと製品は切り離すことができない関係性です。エコを謳う製品であれば尚更、その製品の一部であるパッケージも環境に配慮された存在であるべきでしょう。
さて今回はエコなパッケージについてです。
なにがエコなのか、その理由にも注目してパッケージを見ていきます。まずはパッケージが主にどのような素材によってできているのか少し振り返ってみましょう。
代表的なものとして身近な存在であるペットボトル飲料を例に挙げました。
容器となるペットボトル本体とキャップにラベル、そしてラベルの印刷に使用するインキ。
缶や瓶に箱と容器の形状や素材は異なりますが、容器とそれを識別する為の印刷物の組み合わせがパッケージの基本となる構成要素でしょう。
これらの構成要素それぞれに対してエコになるような取り組みがなされています。その方法と併せてさっそくパッケージに移りましょう。
消費する資源の量を減らす
環境配慮の代表的な例として消費する資源の量を減らす、という方法が多くの容器で行われています。コカコーラの「ボトルtoボトル」やサントリーの「サステナブルボトル」では、使用済みのペットボトルを資源としてまた新たにペットボトルを作り出す資源を循環させる活動をしています。
また小さな部分ですが、分別の際にラベルが綺麗に剥がれボトル本体には糊が残りにくいように糊本体にも工夫が施されリサイクル性に貢献しています。
近頃ではラベルレスも一般的なものになってきました。
ラベルそのものをなくす、というとてもシンプルな方法です。ECサイトの普及によって製品本体に情報を載せ差別化する必要がなくなりました。また消費者側の環境に対するリテラシーが高まり、受け入れる土壌が出来上がったことによって実現したデザインとも言えるでしょう
容器の軽量化も挙げられます。構造デザインによって強度を維持しつつ使用する資源の量を減らしています。またボトルの軽量化や小型化は輸送にかかるエネルギーの削減、効率化に繋がります。
適切な素材を使う、または置き換える
環境とパッケージで一番初めに挙がるのは脱プラではないでしょうか。ネスレのキットカットが主力製品の大袋を全て紙製に変更したことはまだ記憶に新しいですね。また衣料品のパッケージも紙へと切り替える活動が無印良品をはじめとしておこなわれています。最近では紙製のハンガーもよく見かけるようになりました。
カルビーでも環境に配慮したパッケージ施策が進んでいます。
一見何の変哲もない普通のプラスチックのように感じますが、バイオマスPETという生物由来の再生可能な資源が用いられています。またパッケージ本体に使われる資材だけでなく、その印刷に使用されるインキにもバイオマスインキが使われています。
環境に配慮されたさまざまな素材のパッケージが登場していますが、誤解してはいけないのがこれら以外のマークが入っていないパッケージがエコな素材ではないかというとそういう訳でもありません。
一例としてFSC認証という紙製品に多く見られるマークがありますが、これは生産から加工、流通に至るまで関わる全ての組織が認証を受けることによって初めてそのマークを表記することができます。
逆に言えば例え同じ素材を使用していても、その製品に関わる一部の組織が認証を受けていなければ表記することができないということです。
パッケージだけではエコは成り立たない
エコなパッケージもそれ単体ではポテンシャルの全てを発揮することはできません。ユーザーの手に渡ったあとに、分別や回収といった適切なプロセスを経なければなりません。
どれだけエコな製品であろうとも使う側次第で無意味なものになってしまう可能性があります。その為にもエコな製品だけでなく、それを啓蒙していく活動も必要になってくるでしょう。
パッケージを使いきる、ゴミにしないという考え方
最後に環境とパッケージの繋がりで少し寄り道していきましょう。
多くのパッケージはその包装という役割から、そのまま普段使いの容器として再利用することができます。アイデアと少しの手間だけでゴミにならずにパッケージの寿命を延ばすことができます。
ファミリーマートのコンビニエンスウェアはパッケージにあえてジップを使い、スタイリッシュなグラフィックを用いることで小物入れとして再利用してもらうことを狙ったデザインになっています。
エコなパッケージ
パッケージは主ではないですが、欠かすことのできない存在です。だからこそすぐに消費されることを前提としたものに留まらずに「ゴミにされない」という視点も忘れてはなりません。
野菜や果物の皮が新しい料理や堆肥に生まれ変わるように、パッケージもまた余すことなく使い切れる魅力的なデザインを心がけていきたいですね。
<参考資料>
●コカコーラ・ボトルtoボトル
https://www.cocacola.jp/sustainability/
●サントリー・サステナブルボトル
https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1204.html
●ネスレ
https://nestle.jp/fun-picks/topic/creation/22508.php
●FSC
●バイオマスPET樹脂(岩谷産業)
https://www.iwatani.co.jp/jpn/business/material/functional-plastics/products/biomass-pet/
●バイオマスインキ(東洋インキ)
https://www.toyoink1050plus.com/sustainability/environment/biomass.php