魅力的で個性あふれるパッケージが多く存在する領域であるコスメ。
最近では男性向けのコスメも普及し、売り場で男性の姿を見かけることも当たり前の光景になってきました。
そして男性のスキンケアも極々当たり前のものになっています。
元々は女性に向けられてデザインされることが当たり前だったコスメのパッケージは男性に向けてどのようなチューニングがなされているのでしょうか。
また一方でこういったジェンダーを感じやすい製品カテゴリーの中でも、ジェンダーの枠に括らずにコミュニケーションしているブランドも存在しています。
ターゲットを性別という枠で括ることが多く、手元での滞在時間も長いコスメのパッケージはジェンダーに合わせたビジュアルやコミュニケーションを学ぶ上でとても良い教材なのではないでしょうか。
さてコスメといっても一つのブランド内でもアイテム数がとても多いのであるスキンケアやベースメイクに絞って見ていきましょう。
THREE(スリー)
モードな印象の化粧品ラインが人気のブランドTHREE。
「FIVEISM x THREE」という性別という概念に囚われないコンセプトの製品と男性向けスキンケアラインの「FOR MEN GENTLING」の2つのブランドが存在しています。
それぞれのパッケージの一番の特徴はグレーの色使いでしょう。グレーと一言で言ってもここまで多様で表現力があることに驚かされると共に、その繊細なバランス感覚がブランドを体現しているようにも感じます。
TIRTIR(ティルティル)
韓国発のコスメブランドTIRTIR。
ポップな色使いのパッケージや卵型のファンデーションも特徴的ですが、一番はコミュニケーション面でイメージモデルに男性アイドルを起用し、全面に押し出している点でしょう。
美しさを表現する上で男性アイドルを起用する発想は話題性だけでなく、現代的な価値観にも則していると言えます。
uno(ウーノ)
ヘアスタイリング剤から洗顔、メイクまでトータルでサポートしているブランドであるuno。
理容室、バーバーを思わせる雰囲気の上品な中に力強さを感じるロゴと文字を活かしたグラフィックが特徴的なパッケージ。
深めのシルバーを用いたBBクリームは清潔感と男性的な印象を受けます。
どの製品においてもunoのロゴが強く飛び込んでくる点は、主な売り場であるドラッグストアの店頭でも存在感を発揮し埋もれることはないでしょう。
雪肌精
ロングブランドである雪肌精。その中でもクリアウェルネスシリーズはロゴのエンボスが添えられただけのボトルがシンボリックであり、透明感がブランドそのものを表しているように感じます。
余計な情報を排した透明なボトルもさることながら、ブランドカラーでもある深い青が印象的です。
新たなキービジュアルでは羽生結弦選手と新垣結衣氏が採用され、性別を問わないコミュニケーションが図られています。
またボトルやリフィル、外装のパッケージと一貫して環境への配慮がなされており、その姿勢にブランドの誠実さを感じます。
無印良品
ブランドの世界観の延長線上にあるユニセックスな印象が特徴の無印良品。
最低限に抑えられた色は使う人の性別や年代を選びません。
しかし間口を広げイメージを均一にするということは、それだけユーザーに深く刺すことが難しいということでもあります。
これは販売される場所が基本的に無印良品の店舗であるということ、そのブランド力があるからこそ成立するバランスでもあると言えるでしょう。
BAUM(バウム)
木材が使われた特徴的なパッケージが象徴的なブランドです。
その木材は家具の製造過程で出る端材を使用しています。
木材を利用することで既製品ながらもひとつひとつ表情が違ったものになっています。
これは通常のガラス容器やペット容器にはない唯一無二の魅力です。
そしてグリーンの色相で展開されている外箱は豊かな樹々を想起させます。
コンセプトである樹木の恵み、自然との共生が中身からパッケージデザイン、環境への配慮と一貫しておりブランドの誠実さを感じると共により世界観を強化していると言えるでしょう。
パッケージの「色と質感」が与える印象の重要性
今回様々なパッケージを見た上で、ターゲットのジェンダーを左右する一つの大きな要素が見えてきました。
それは「色」と「質感」です。
分かり易い例として普段の生活の中で私たちがジェンダーを識別するサインとしてトイレのシンボルや銭湯の暖簾の色、といった色で識別する場面が多いのではないでしょうか。
信号や標識のように色はシンプルに素早く認識されます。
これを今回のパッケージに当てはめてみるとTHREE FOR MEN GENTLINGのようなニュアンスのあるグレーでも濃くクレイのようなカラーになると硬質な男性的な印象になりますが、FIVEISM x THREEのような少し軽く湿度感のあるしっとりとしたグレーになると急に中性的な雰囲気を醸し出します。
またunoで使われているようなガンメタのようなメタリックやヘアラインといったテクスチャは力強く男性的な印象を受けるのではないでしょうか。
無印良品や雪肌精の透明感のあるパッケージはその色も相まって性別をそこまで意識することはないでしょう。
またBAUMのような木のテクスチャも中性的な印象を受けますが、このブラックと木のテクスチャのバランスが変わり、黒の割合が増えてくるとアイアンの家具のようなインダストリアルで男性的な雰囲気に変わっていきます。
このように同じカラーとテクスチャでもそのバランスによって印象は大きく変化します。
ラグジュアリーな製品ほどそのウエイトは大きく、言葉やビジュアルなどの構成する要素が絞られ、色や質感といった物質としての存在感が大きな差となって現れてきます。
表面がツルツルしているのかサラサラとしているのか、それともしっとりと肌馴染みがいい手触りなのか。
コスメという自分を高めるために毎日素肌で触れるパッケージだからこそ、こういった繊細な部分が大きな差となります。
今回は色と質感、テクスチャに焦点を絞りましたがロゴや全体のシルエットもまた印象を大きく左右する要素です。
それはまた別の機会に触れることができればと思います。
参考
THREE|https://www.threecosmetics.com
TIR TIR|https://tirtir.co.jp/index.html
uno|https://brand.finetoday.com/jp/uno/
無印良品|https://www.muji.com/jp/ja/store
BAUM|https://www.baumjapan.com
▼パッケージと関連性のある記事
紙器は軟包装にとって代われるか?
日本3大パッケージコンテスト