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ロボットとテックシステムから生まれた、シリコンバレー流「時短」ランチ

去年、サンフランシスコで一番高いビルとなったテック界の巨人、「セールスフォース」タワーがオープンし、サンフランシスコのシリコンバレー化が益々進んでいます。テック大手企業の流入に伴い、スタートアップ企業の急増で、お昼時になると若年層のエンジニア達がスマホを片手にランチを物色する姿があちこちで見られます。忙しい彼らを惹きつけているのが、ロボットカフェやテクノロジーを駆使した「時短ランチ」カフェです。

バリスタロボット「カフェX

 

Photo:ダウンタウンの目抜き通りにある路面店舗。(https://cafexapp.com/locationsより)

Photo:金融街に設置されたテントタイプのCafe X。(https://cafexapp.com/locationsより)

Photo:映画館と商業施設の一階に登場したブースタイプのCafe X

今年で3年目に突入した「カフェX」は、「スピーディー、キャッシュレス、クオリティー」を軸にすっかり定着しています。疲れ知らずのバリスタロボットは、顔などがあるわけではありませんが、ダンスをしたり、手を振ったり、注文のない時にも愛想を振りまき、オフィス街の人気者になっています。

同店(またはキオスク)では、常連客が素早く設置されたタブレットを操作し、コーヒーやラテを手にしていきます。レシートは自動的に各自のメールに送られます。

キオスクは移動可能で空きスペースとテントさえあればカフェが作れます。その手軽さが評価され、最近ではトラックカフェもブームを迎えつつあります。現在、「カフェX」はダウンタウンでキオスクを合わせ3店舗を展開しています。

 

Photo:固定店舗にはスナックやパンが置いてあります。

同カフェの特徴はロボット導入のほかに、豆から惹く本格的なコーヒーの品質にもあります。メニューにはコーヒーや抹茶ラテもあり、コーヒー豆は地元で人気の「リチュールコーヒー」、ポートランド、カナダブランドから選べます。コーヒーに使用するミルクは牛乳かオートミルがあるので、ビーガンダイエット者にも適しています。

注文は備え付けのタブレットの指示に従い順番に操作を進めます。まず飲み物の種類、コーヒーなら豆、ミルクの種類、カップの大きさという順に選び、名前を入力しクレジットカードで決済します。それぞれの「マイコーヒー」は注文から1分以内に仕上がるので便利です。一杯の量は他のコーヒー店よりやや少なめで、素早く少しだけ飲みたい時にはぴったりです。平均価格は$3とリーズナブルです。

Photo:設置されたタブレットの操作は簡単。クレジットカードの名前がそのまま記録されます。

Photo:受け取り口のドアが開き注文の品が出てきます。

しかし、たまにシステム上のトラブルが発生します。完璧に無人のキオスクもありますが、旅行者やハイテクが苦手な人にも対応する為、通常1人の監督役が常駐しています。

Photo:フォームもしっかりした良質の抹茶ラテです。

利点
・初期投資のみで人件費削減が可能
・キャッシュレスでスピーディー
・営業時間内休み無しで働くので効率が良い
・同じクオリティーを保てる
・キオスクは移動可能
・ロボットなので室温管理などは必要ない。

欠点 
・旅行者やお年寄りには使い辛い
・コンピュータシステムの不具合が稀に発生する
・メニューのバラエティーが少ない
・カフェスタイルではなく、トゥーゴー(持ち帰り)のみ

IT出身者が考案したアプリ+キャッシュレス チーズサンド「The Melt (ザ メルト)」

Photo:ダウンタウンの中心地のTHE MELT

サンフランシスコ、ベイエリア(その郊外)のファーストフードにキャッシュレスの波が訪れたのは2011年頃。当時、スタートアップ企業が毎日のように立ち上がり、テクノロジーイノベーションの最盛期です。「エアービアンドビー」や「ウーバー」もこの頃から急成長ました。

テクノロジーはやがて外食部門まで拡散し、元シリコンバレーのIT起業家、ジョナサン氏が考案した「The Melt」(チーズサンドファーストフードチェーン)が注目を集めました。

「The Melt」は、注文から決済までアプリで完結するファーストフード店スタートアップで、巨大な投資マネーを集めました。しかし当時、2015年までに500店を目指していた店舗は、現在サンフランシスコと南カリフォルニア内10件以内に留まっています。理由としては「メルティングチーズサンド」は当時爆発的なヒットでしたが、常食には行き着いていない風潮があります。

流行に左右されながらも、同店は改良を続け、人を介さずアプリだけでチーズサンドやバーガーがスピーディーに手に入る「クオリティと時短」フードとして若年層のITピープルに支持されています。今後どのようにリピーターを確保するかがビジネスの鍵となっています。

Photo:店内は広々とし、イートイン、テイクアウトは自由です。

ハイブリット式キャッシュレスストア

「The Melt」の特徴は、大手ファーストフードチェーンとの異なり、冷凍食材を使用したフランチャイズではなく、生鮮食材を使用し現地で調理するのが原則です。注文を受けてから調理する為、焼きたてサンドの香ばしさが特徴です。しかし従来の店頭注文だと待ち時間を要します。アプリから注文すれば待たずに店頭で出来たてを調達できるのが忙しい若者達に受け入れられています。

**アプリからの注文機能の流れ

1)アプリで注文する
2)注文をしたものは店内のパネルで注文番号と名前が表示される
3)番号を見せ受け取る

という3ステップです。さらに便利なのは、注文を先にアプリで済ませ、店に到着する直前に調理を開始するボタンをクリックし、出来たてを受け取る方法です。

また、アプリを持たない人には店内に設備された5台のタッチパネルを操作する事で、レジに並ばず注文順に商品を受け取る事もできます。店内で従来の対面レジもありますが、一台しかない為、混在時には長い待ち時間を要します。

実際お店でシステムを検証してみましょう。

Photo:オーダーをするとQRコードが出ます。これを店でかざすと調理が開始されます。

Photo:待ち時間は番号や名前で表示されるので予測が簡単です。

Photo:サイドオーダーも種類豊富で簡単に付け加えられます。

Photo:アプリ、店頭セルフオーダーとオーダー受付に分かれ、受け取りもスムーズ。

Photo:出来立てのバーガーとチーズメルトはファーストフードよりグルメで新鮮。

Photo:サラダも本格的です。

利点
・(利用者にとって)待ち時間がない
・作りたての商品が受け取れる
・注文者によるスマホやタッチパネルでの注文がほとんどなので人権削減ができる
・パーティーや会議の時に大量の商品を事前注文できる

欠点
・メニューのバラエティが限られている為、幅広い客層をつかめない
・デリバリーシステムがないので店舗の近隣のみとなる
・流行に左右されるメニュー内容

SF郊外で活躍するその他のテックフード店

飲食業界へのロボット導入は、郊外でも進んでいます。例えば、アメリカ人の大好物の一つでもあるピザ店にピザメイキングロボットを導入したSume Pizza (Mountain View)や、焼肉お運びロボットを導入した Gen Korean BBQ House (Freemont)が、注目を浴びています。焼肉店にまるで、お寿司レーンならぬ「焼肉注文レーン」が設けられ、スムーズに注文品がテーブルに運ばれるというシステムで、進出した「クラ寿司」に続いて、お運びロボットはアメリカ全域にも拡大しています。

家族連れに人気を博している「ファミリーレストラン」は、新しいサービスを導入することで、注目度浴びると同時にサーバー達の仕事量を軽減することにも繋がっています。

世界でキャッシュレスやロボット化したカフェが増える中、サンフランシスコ、シリコンバレーはこれからどのようにテクノロジーをリードしていくのでしょう?すでに部門は土を必要としないテック農業にまで進み、食材調達から科学で食物をクリエイトするフードテックへと技術革新が続いています。サンフランシスコのランチシーンで見られるように、食のイノベーションは生産性向上に大きな影響を与えています。

 

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