サンフランシスコの「非接触テクノロジー」が、コロナ時代の新たな食生活を生み出している
スーパーのレジで、現金での細かいやり取りをする習慣がなくなる日は、すぐそこまで来ているかもしれません。
サンフランシスコ・ベイエリアでは、コロナウイルス感染が拡大した3月から現金を触る人が激減しました。コロナ禍でより安全なデジタル、ロボット、キャッシュレスが日常化しているのです。この変革期に、私達の食生活は非接触で効率的な「ニューノーマル」へと向かっています。
アマゾンのハイテクスーパー「Amazon Dash Cart」が間も無く稼動
非接触、非対面、キャッシュレスコンビニの「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」がオープンしたのはもう3年前の事。今では日本でもキャッシュレスコンビニがオープンし始めているようですが、アマゾンはまた次の一歩を踏み出しました。
この秋に、キャッシュレス、レジレスを可能にした「Amazon Dash Cart (アマゾン・ダッシュ・カート)」を導入したスーパーがオープンするというニュースが話題となっています。
アマゾン・ダッシュ・カートは、カートの中に入れた商品をコンピュータが瞬時に計算するシステムです。あの煩わしいレジに並ぶタイムロスを無くし、レジを通らず効率的な買い物が出来るニューノーマルな社会を実現しようとしています。
巨大企業、アマゾンが食業部門に参入したのは2017年。それからアマゾンゴー、アマゾンロッカー(買物保存)やアマゾンパントリー(買物代行宅配)などの開発で、私たちの食生活はより便利になりました。
次世代の食品買い物テクノロジーは、コンピュータービジョン・アルゴリズムとセンサーを搭載したスマート・カート。商品を手元のカゴに入れ、バーコードを自動読み取りさせるかコードを入力すると、商品の画像と価格がカートに表示されます。
もちろん決算もペーパーレス。アマゾンのアカウントに紐付けられ、登録しているクレジットカードから引き落とされます。買い物の明細はアプリまたはメールで受け取ります。
既にサンフランシスコ周辺の住人はこれら一つひとつの仕組みには慣れていますが、大量の商品購入でレジをスルーするのは未体験です。ネット通販とは異なり、実際に目で見て手に触れ商品を選べるスマートカートの買い物革命に大きな期待が寄せられています。
フードデリバリー革命。AI搭載ロボットが配達に出動
3年の試験走行を経て、まるでコロナ時代に合わせるようにデリバリーロボット「スターシップ」が始動し始めました。歩行者と一緒に信号を待ち、横断歩道を渡り、サイドウォークを行進するロボット達は街の人気者になっています。
スターシップは、それぞれの指定地域のデリやレストランから注文の品を素早くターゲットの場所まで運びます。スマホのアプリ等で位置情報をライブ確認し、玄関前で迎える事もできます。
3月から外出禁止令が3ヶ月間も続いたサンフランシスコ周辺では、レストランの営業はテイクアウトのみとされていました。食べ物を取りに外出することを不安に思う住人との橋渡し役として、市議会からの前倒し認定も後押しとなり、デリバリーロボットの活躍が街で見られるようになりました。
このロボットを開発したのは、サンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業「Starship Technologies」です。スターシップに人は乗せられませんが、事実上、完全自動運転車の公道走行第一号となります。
AIを駆使したロボットには10台のカメラが搭載され、360度背景をサーチします。センサーで歩道の凸凹や人混みを避けたり、信号などを見極められるのはもちろん、障害物がない場所では速く、人混みに遭遇すればゆっくり、信号の無い道路を渡る時は安全を確認して慎重に走ります。
また、配達を終えたロボットはオーナー元に帰り、次の出動まで行儀良く一列に並びます。
ただしバッテリー寿命が短い為、距離制限(2マイルまで)や歩道のみ走行可能という規制があり、使用場所は限られています。しかし、コロナ禍で人に変わるロボットの働きは安全で、テイクアウトのみの規制がかけられている飲食店の経営において、まぎれもなく画期的な新サービスです。
将来的にはより広範囲な住宅街、病院、ホテル、大学、スーパーなどでの活躍を目指しています。
レストランで活躍するロボットサーバー
コロナで大打撃を受けたカリフォルニア州の飲食店は、ロックダウンから4ヶ月目にようやく、アウトドアダイニング(野外飲食)が許可されました。完全閉店を強いられた3ヶ月間、経営者は生き残りを懸けて、従業員を解雇せざるを得ませんでした。特にサンフランシスコの人件費は時給約$16と高額の為、雇用は常に経営を困難にさせています。
ロックダウンが緩和されても、コロナ感染の状況により再び規制が厳しくなったりと飲食店のオーナー達は振り回されています。一度解雇した従業員を再採用するのは至難の業。そういったことから、これから成長しそうなビジネスとして、人の代わりにスイッチ一つでオンとオフを切り替えられるロボットサーバーが注目を浴びています。
既にシリコンバレーの飲食業界は、ロボシェフ、ロボバリスタ、前文のロボデリバリーと非接触サービスの連鎖が広がっていますが、ロボットサーバーはその中でも、プログラミングをするだけで店の即戦力になる配膳員です。
創業したのは、シリコンバレーを拠点とするベンチャー企業「Bear Robotics(ベア・ロボティクス)」。3年前に起業したばかりですが、去年までに3,200万ドルの投資を集めています。コロナ禍が追い風となり、非接触、人材雇用の救世主としてソフトバンク・グループをはじめとする投資家からも熱い注目を集めています。
また、非接触だけではなく、今まで人が運べなかった大量のドリンクを一気に運べたり、客席との往復に費やされる労働力を緩和する役割も担っています。24時間スタンバイするロボットサーバーは、店内飲食が再開されれば忽ちに活躍の場を増やす事でしょう。
アメリカ発、進化した自動販売機が拡大
自販機後進国のアメリカでは、それまでコカコーラ等ごく限られたメーカーの自販機しか見かけませんでした。しかし今ではサンフランシスコ周辺に、お店の味を彷彿させるヌードル自販機が拡散され始めています。ヌードルと言ってもカップ麺ではありません。生麺と新鮮な具材がのった本格的な食事なのです。
3年前、「Yokai Express(ヨーカイ・エキスプレス)」と名付けられたヌードル自販機が、ダウンタウンの映画館が入った「メトリオン・モール」に登場しました。しかしその横に設置されたロボットバリスタ の「CafeX」と同時期だった為、人気はロボットバリスタの方へ。まだ見慣れないその自動販売機は、知る人ぞ知る存在でした。
しかし、今年のウィズコロナ生活で、非接触、非対面、さらにクオリティーの評価も加わったことで自販機は進化し、一気に増産、拡大しています。
ヨーカイ・エキスプレスは、シリコンバレー発の元IT企業の従業員により考案されたベンチャー企業が開発しました。たった45秒でレストラン・クオリティのヌードルをサービスする、全米唯一の自動販売機です。名店とコラボし、例えばラーメンなら豚骨、味噌ベースに黒にんにくオイルや激辛など種類も豊富。さらに、うどんやベトナム麺料理のフォも追加されました。
すでにサンフランシスコ周辺では、モール、映画館、遊園地、空港、IT企業のテスラ他、IT企業オフィス等各地に14台が設置されていますが、これからも続くであろうウィズコロナ時代の追い風を受けて、さらに飛躍しそうです。
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