筆者の住むクーパーズタウンは農村地帯に囲まれ、自然豊かな谷に位置しています。そんなクーパーズタウンでは夏になると、必ず見かけるようになるものがあります。それがファームスタンド(Farm Stand)です。
ファームスタンドはその名の通り、農家の直売所のこと。農家の敷地内に直接設置され、基本的に無人の販売所となっています。日本でも野菜などの無人販売スタンドを見かけることはありますが、それをさらにアップグレードしたようなものがクーパーズタウンにはたくさんあります。
実際にエリア内にどれだけのファームスタンドがあるかは不明ですが、筆者が知っているだけでも10以上!それぞれが特徴的で、販売されているものも異なります。
例えばこちらのかわいい小屋風のファームスタンドは、中に入ると冷蔵庫が2台あり、卵や肉、チーズなどを販売しています。肉はすぐ向かいの牧草地で育てられた牛のものであることを示すポスターが貼られていました。
現在アメリカではより倫理的・道徳的に優れた消費を促すエシカル消費の風潮が高まっています。エシカルな消費へのアプローチは様々な観点のものがありますが、例えば包装のゴミを減らしたり、商品の輸送にかかる二酸化炭素を削減したり、またフェアトレードの商品を選択したりといったことが挙げられるでしょう。
そう考えると、農家の直売であるファームスタンドは、エシカルな消費の理想の形であるとも言えます。この記事では、コロナをきっかけに大きく進化したクーパーズタウンのファームスタンドを紹介します。
コロナ禍で進化したファームスタンド
コロナ以前はこの場所に小さなカートが置かれ、トマトやきゅうりなどの野菜が少し販売されているだけでした。しかしコロナウィルスの蔓延で対面販売やお店に行くことを避ける人が増えたため、無人販売所の人気が大きく上昇。小屋を建てるなどして販売所を拡大する農家が増えました。このスタンドも新しく小屋が整備されたものの1つです。
今では野菜に加え、ハーブの苗生や古本まで販売されています。
こちらは無人ではなく開店時間が決まっている有人の販売所です。JAMAICA FARMと呼ばれる地元では有名な大きな農場が経営しており、野菜やフルーツの種類が多くて人気です。ファームスタンドは夏休み中の高校生のアルバイト先としても人気があります。
商品の価格も、ファーマーズマーケットやスーパーで買うよりも安いことがほとんど。例えばトマトはファーマーズマーケットだと1ポンド5ドルですが、スタンドでは1ポンド2ドルでお手頃です。
採れたての果物や野菜が並ぶ様子は美しく、絵になります。こちらの販売所ではさらに近隣の農家とも提携してピクルスやジャムなどの加工品も直売していました。
農家提携により多様な商品を販売
このスタンドのように、1つの農家だけでなく、他の地域の農家と提携して共同で商品を販売するスタンドも多くなっています。
例えばこちらは、ペンシルベニア州にある農家と共同のもの。そのため、クーパーズタウンではまだ季節ではないモモやトウモロコシを一足先に手に入れることができるのです。
このように農家のネットワークが存在することで、消費者が手に入れることのできる商品の種類が豊かになっています。
近隣の農家と提携することで、野菜や果物だけでなく、他の商品も販売できるようになります。このスタンドで人気なのは、バーベキューに最適なスパイスです。
キャンプ客をターゲット
クーパーズタウンの近隣は湖や州立公園があり、夏はキャンプ客で賑わいます。そんなキャンパーたちをターゲットに、バーベキュー用の野菜+スパイスをセットで販売しているのはなかなかの戦略です。
さらに、こちらのスタンドではキャンパーをターゲットに、キャンプで使える焚き木を販売していました。
新鮮なハーブも必要な分だけ購入できる仕組み。キャンプに便利なだけでなく、料理の途中なのかエプロン姿で買いに来る人も見かけられました。
多様な決済方法に対応
有人のスタンドもありますが、ほとんどは無人。そのためお金は各人の信頼に任せて回収する「Honor System」が取られています。しかしそれでは盗難がどうしても発生してしまうため、最近では監視カメラを設置しているところが多くなっています。
基本的にファームスタンドは、現金を箱に入れることで購入できる仕組みです。しかし最近では、他の方法で買い物ができるスタンドも登場しています。
QRコードを読み取ることで、クレジットカードで支払うことのできる仕組みを採用したスタンド。 キャッシュレス化が加速する現在、無人販売所でもカードで決済できるのは嬉しいですね。
セルフレジを設置したスタンドも。
使い方ガイドも丁寧に解説がついており迷わず簡単にカードを使って決済ができました。
VenmoやZelleといったモバイルマネーを受け付けているところもあります。またクーパーズタウンでは今でも小切手(Check)を使う人も珍しくありません。ファームスタンドの多くはこのように多様な決済方法に対応するようになっています。
野菜や果物だけじゃない!
ここまで見てきても分かりますが、ファームスタンドで販売される商品は野菜や果物がメインですが実はそれだけではありません。
納屋を改造して作られたこちらのスタンドには大型の冷蔵庫が設置されており、新鮮な花で作られたブーケが販売されています。
またギフトに最適なジャムなども販売。こちらは農家が作る激辛のアップルソース。
パイや卵、コーヒー牛乳など、お店かと思うほど多様な商品がファームスタンドでは販売されています。
他にもメープルシロップなど地元の特産品、手作りのキャンドル、近隣の町のベーカリーから直送されたパン、ハンバーガーやホットドッグなどなど「こんなものまで売ってるんだ」と驚くほどバラエティ豊かな商品が並びます。
エシカル消費への道
ファームスタンドは農家の敷地内にあることが多いため、場所を知らなければなかなか存在を知ることはありません。しかしそれでもこれだけのスタンドがあるということは地元の人にはきちんと認知されており、リピーターも多いことが分かります。
コロナをきっかけにアメリカでは大型店舗に行く機会が減り、接触を避けるなど消費行動に変化がありました。それを機会としてFarm to Table(農家からテーブルへ)のエシカル消費が少しずつ拡大していることが、ファームスタンドの人気から見て取れます。
もしかしたら日本でも、これからこういったファームスタンドが増えていくかもしれませんね。
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