ボードゲーム「パンデミック」ついにAmazonでも1位に。新型コロナウイルスの影響で売上が伸びたもの、アメリカ編
世界中のニュースがコロナウイルスに染まる中、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
大規模なウイルスの蔓延によって、外出自粛やイベントの中止、ビジネスの休業などが相次ぐ中、人々の消費行動にも変化が見られています。ニュースでよく目にするのは、マスクやトイレットペーパー、食糧の買いだめではないでしょうか。これは日本に限らず、世界中どこでも見られます。
しかし、このような必要物資の他に、意外な商品の売り上げも伸びています。例えば日本では家で使えるフィットネスグッズが人気なのだとか。確かに、在宅ワークや外出自粛が続くので運動不足が気になりますよね。
この記事では、アメリカにおいてコロナウイルスの影響で急成長している意外な市場を紹介します。
健康食品を超えたオートミルクの可能性
ニールセン社のレポートによると、昨年の同時期に比べてオートミルクの売り上げが322.5%も増加したそうです。
オートミルクはオーツ麦を原料とした植物性ミルク。豆乳やアーモンドミルクなどと並んで、アメリカの「プラントベース」市場をリードする商品です。そんなオートミルクが、コロナウイルス下のアメリカで最も急成長した食糧・飲料カテゴリというのは驚きですね。しかも売り上げの成長率だけを見れば、マスクや消毒液をも大幅に上回っています。
このトレンドの秘密は、オートミルクの賞味期限の長さにあります。一般的な牛乳は開封前で約1週間、開封後は3日程度で飲み切ることが推奨されています。対してオートミルクは、開封前なら約2か月間も保管することができるのです(ブランドや製法によって若干の差はあります)。
さらに、ブランドによっては常温保存ができるものもあります。例えば、スウェーデン発のオートミルクブランド「オートリ―(Oatly!)」は、一般消費用と常温保存用の2種類のオートミルクを販売しています。常温保存用はその名の通り、開封まで冷蔵不要。なんと1年近くも保管することができるそうです。
といっても、保存料が添加されているわけではありません。違いはパッケージ。保存用のものは無菌状態で包装されるため、冷蔵する必要がないのです。(オートリーに関しては、パケトラの既出記事「ポスト・ミルク世代」——スウェーデン発、植物性ミルクブランド「オートリー」が新たな市場へ踏み出した でより詳しく読むことができます)
「ポスト・ミルク世代」——スウェーデン発、植物性ミルクブランド「オートリー」が新たな市場へ踏み出した
地震が頻発する日本では、災害に備えて食糧や必要物資を備蓄しておくことが欧米などよりも一般的です。乾パンや缶詰、カップラーメン等などに加えて「備蓄品としてのオートミルク」の需要も期待できるのではないでしょうか。
日本にならえ!子ども向けのドリル類がアメリカでも人気
コロナウイルスがアメリカに上陸してから、アマゾン(Amazon)のベストセラー商品の顔ぶれは大きく変化しました。その中で筆者が特に面白いと感じたのは、本の売れ筋ランキングです。なんと大半が子ども向けのドリル類で占められています。
休校が相次ぐ中、子どもに勉強をおろそかにして欲しくないと願う親の気持ちは万国共通ですね。日本では本屋に大量のドリル類が並んでいるのはもはや当たり前の光景。皆さんも子どもの頃、漢字ドリルや算数ドリルと格闘した思い出があるのではないでしょうか。
しかしアメリカでは、実はそれほど広まっているものではありません。本屋などで見かけることも少なく、ドリル類は「ホームスクールの子が使うもの」というイメージが根強く残っています。だからこそ、アマゾンの本ランキングは異様な光景なのです。もしかしたらコロナウイルスを機に、アメリカでもドリル人気が広がるかもしれませんね。
少し前に日本では「うんこドリル」のような面白い商品が流行りました。このようなユニークな日本のドリル文化をアメリカに売り込むことも可能かも・・・?
ボードゲーム「パンデミック」で遊ぼびながら学ぼう
アマゾンでは他にも、ジェンガや積み木、粘土、絵の具、ジグソーパズルなど、子どもが室内で遊ぶことのできるおもちゃが人気になっていました。ボードゲームもしかり。特に面白いのは、2008年に発売されたボードゲーム「パンデミック」の人気が再度急上昇していることです。
通常ボードゲームは、プレイヤー同士が勝ち負けを競うものですが、「パンデミック」は珍しく「プレイヤー全員vsゲームそのもの」という協力型になっています。プレイヤーは新型ウイルス対策チームの一員となり、パンデミックに立ち向かうという内容です。
作者のMatt Leacockは、2003年のSARS大流行がきっかけでこのゲームを思いついたそう。また、「21世紀におけるパンデミックの危険性をより広く人々に理解してほしい」という教育の意味も含めて、ゲームを作成したと語っています。
「パンデミック」はこれまで、医学部で医療の場におけるコミュニケーションを学ぶために採用され、良い結果を残したこともあります。さらにアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のギフトショップで販売されたり、5月下旬から開催予定の感染症に関する展示で採用される予定です。
コロナウイルスが拡大する中で「パンデミック」は再度注目されています。3月12日時点において「パンデミック」はアマゾンのボードゲーム売れ筋ランキングで1位となっていました。サンフランシスコでは、感染症拡大の原理を学ぶために「パンデミック」を授業に取り入れた高校もあるそうです。
もちろん「パンデミック」は実際の感染症拡大の様子を完全に再現したものではありません。しかし、原理やコンセプトを学ぶには非常に良い教材となり得るのではないかと思います。例えば、ゲーム内で隔離や入国規制などがどのような結果をもたらすのかが理解できれば、ニュースを読む際に各国が取る対策の意味が把握しやすくなります。
これから、ゲーム×教育の可能性が再認識されていくかもしれません。「休校で家にいる子どもがテレビゲームばかりで困っている。勉強しろと言っても聞かない」そんな悩みを抱えている方は、ぜひ家族でボードゲームで遊んでみるのも良いですね。
参考記事
■Nielsen: Coronavirus has CPG shoppers changing their ways (Supermarket News)
■As coronavirus infections spread, demand for oat milk is outpacing hand sanitizer (Market Watch)
■Oatly!
■Q&A with the Chicago creator of Pandemic, the board game that has become all too real (Chicago Tribune)
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