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パリのミレニアル世代デザイナーが提案。パッケージの細部までゴミを出さない、これからのファッション業界のあり方

「ゼロウェイスト」とは、出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもゴミを生み出さないようにする活動のことです。

昨今、衣食住においてその概念が加速しつつありますが、パリで暮らす若手ランジェリーデザイナーの森上さくらさんは、自信のブランドで徹底したゼロウェイスト活動を示しています。

photo:ランジェリーデザイナーの森上さん。

「SOEUR」のブランド名でランジェリーデザインを行う森上さんは、文化学園大学でファッションビジネスを専攻し、日本の補正下着メーカーに勤務した後、単身渡仏。ランジェリーの本場パリでデザインを学びながら自身のブランドをクリエイトしています。

パリで暮らすうちにサステナビリティを意識するようになったという森上さん。2021年初めに、ビジネスパートナーの山下千賀子さんとローンチする「SOEUR」のファーストコレクションに向けて、クリエイションの他にもリビルドやアップサイクルのプロジェクトに力を入れています。

ファッションやランジェリーは身に付けるものでありながら、着る人・作る人、どちらにとっても自己表現の役割を果たすアートでもあります。

photo:アトリエにはたくさんのアイデアが。

ランジェリーデザイナーとして独自の創造を世に送り出す仕事を通して、どのようなサステナビリティ上の課題を感じ、どのように向き合っているのか。ランジェリーという特殊なジャンルにおいて、サステナブルなものづくりをしていく中で何を見ているのかを探るべく、森上さんに話を伺いました。

ランジェリーにおける固定概念の払拭とゼロウェイスト活動

「SOEUR」のブランドコンセプトは二つ。インとアウトを隔てていた扉を取り外し、アンダーウェア・アウトウェア・アクセサリーとして、どんなシチュエーションでも一緒にコーディネートができる新しいジャンル「オーバーウェア」を提案すること。

そして二つ目は、ファストファッションなど、少ししか出番がなかった服たち(流行が終わったもの)を甦らせる「セカンドランジェリー」の取り組み。洋服たちの“セカンドライフ”を提案できるよう、「SOEUR」が使わなくなった服をお客様から預かり、デザイナーの手によって新しいランジェリーとしてリビルドさせることです。

「忘れられた衣服たちの二度目の人生」をスローガンにアップサイクリングを提案し、今まで元々あったものを解体して、より良い形に仕上げることを目指しています。

photo:自身のジャケットをリビルド。

photo:古着をアップサイクリング。

ファッション業界が改善すべきサステイナビリティの課題として、余剰生産による在庫破棄・焼却、余剰生地、生産における環境汚染や人権の問題などがあります。そこで「SOEUR」は、余剰生地に着目。制作に使う布生地は全て保管し、余すところなく使い切るのだとか。

photo:コレクションマップでも余剰生地を使っています。

photo:パターン紙、余剰生地は必ず保管。

photo:プライベートでは竹のマイストローを使用しているという徹底ぶりです。

そんなゼロウェイストとニューノーマルを融合させた「SOEUR」の画期的なところは、今まで誰もが着目しなかったアイテム「ランジェリーパッケージ」にメスを入れたことでした。

余剰生地でオリジナルのパッケージに生まれ変わらせた

普段あまり気に留めないところではありますが、アンダーウェアを購入する際、ほとんどが紙、もしくはビニールのパッケージに包まれて手元に届きます。包装紙や手提げビニールは結局ゴミとなり、自宅に使わない紙袋が溜まってしまった。。という経験はないでしょうか?

ゼロウェイスト活動をするにあたって大事なことは、やはり作る過程で徹底してゴミを出さないこと。「特にランジェリーは服より消耗品なので、最大限にサステイナブルな展開にしなくてはならない」と森上さんは語ります。

photo:余剰生地で作ったオリジナルのパッケージ。

オリジナル性もあり、「スローファッション」を彷彿とさせる「SOEUR」のパッケージを見れば、捨てたいとは間違っても思わないはず。むしろティッシュケースやマスク入れなど、二度目の使い道を考えるのも楽しくなりそうですね。

photo:元生地は余すところなく使います。

パッケージは小・中・大と、アイテムに合わせてサイズ展開があり、毎回違う生地で作るそうです。

photo:これだけでも欲しい、と思えるデザインと機能性。

「例えば、紙製のBOX型パッケージは一見環境によさそうですが、結局捨ててしまいます。そして、配送するときに大きさの問題でコストがかかってしまう。そこをずっと疑問に思っていたのが余り布でパッケージを作ろうと思ったきっかけです」と森上さん。

photo:サイズ・軽さ・見た目どれもとっても優秀です。

photo:製品のタグはパッケージに添えて。

もう一つ「SOEUR」のパッケージでユニークなポイントは、タグが製品ではなくパッケージについていることです。「商品がおしゃべりしているような雰囲気を出したかった」と、タグに書かれているメッセージはこちら。

I AM ONE OF SOEUR LINGERIE.
(私はSOEURランジェリー。)

I WAS CREATED AT SOEUR ATELIER.
(私はSOEURアトリエで創られた。)

I AM DELICATE.
(私は繊細。)

PLEASE WASH ME BY HAND.
(手洗いしてください。)

I AM ALWAYS THERE FOR YOU WHEN YOU NEED ME.
(必要ならいつでも力になるよ。)

これだけアイデアが詰まったタグは見たことがありません。洗濯などで表示が消える心配もなければ、思わず見入ってしまいそうなメッセージで、「SOEUR」というブランド名を記憶に残すきっかけとなりそうです。

photo:余剰生地を使った制作風景。

多拠点の展開をはかるミレニアル・ブランドができること

「SOEUR」ブランドディレクターの山下千賀子さんはニューヨークを拠点に、デザイナーの森上さんは2021年に拠点を東京に移して活動するこのこと。実はコロナ禍が始まる2年前から、二人はオンラインミーティングを通してニューヨーク・パリ間で打ち合わせを繰り返していました。さらに森上さんはオンラインのランジェリー・メイキングコースの講師も務めています。

photo:たくさんのサンプルから情熱が伝わってきます。

多拠点でブランドを展開することについて、森上さんは「拠点都市を固定しないようにしています。私たちが住んだことのある、東京、パリ、ニューヨークの3拠点でやっていこうと。「オーバーウェア(ランジェリーはどんなシチュエーションでも着れる)」というモダンな着方を提案する時に、この3都市の需要と供給を考えると可能性すら感じます。」と言い切ります。

photo:パリ中心部にある古着屋さんで生地を探すことも。

さらに今後は、顧客様の使いたい服を提供してもらって、自分が定めた値段・パターンで作る「セミオーダーランジェリー」や、ユニセックスなプロダクトの展開で色々なセクシュアリティの人に提供してきたい、とのこと。

まとめ

ランジェリーの歴史には、社会との接点から生み出された変化が多く存在します。気候変動や人権問題という大きな課題を抱え、ファッション業界のあり方が問われている今。彼女たちが自身のプロジェクト 「セカンドランジェリー」を通して伝えるメッセージは、払う代償が大きいファッション業界でのニューノーマルを伝えてくれます。

衣食住の一つとして生活に不可欠ながら、芸術でもあるランジェリー。ここではミレニアル世代の力が次々と歩み寄り、新しい風を吹かせているのを感じました。

取材協力
SOEUR TOKYO

公式インスタグラム:@soeur.tokyo
Eメールアドレス:soeur.tokyo@gmail.com

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