はじめに
色にはとても大きな力があります。
普段何気なく目にするパッケージを読み解くことで、様々なことが見えてくる──。
例えば紅茶のパッケージといえば「赤」や「黄」、ビールでは「金」や「銀」「クリーム」といった色が浮かぶのではないでしょうか。
今回はこの「色」に焦点を絞り、飲料パッケージを見ていきます。
色の三大要素
まず初めに色について少し振り返ってみましょう。
色は3つの要素「色相」「彩度」「明度」によって構成されています。
そして色には大きく分けて2つの効果があります。
・色そのものが作用する効果(赤は興奮や情熱、青は爽快や落ち着きといったもの)と
・記号的な効果(信号や男女の表示といった後天的なもの)です。
強いけれど意外に曖昧という点も色の面白いポイントです。
赤色といって思い浮かべる色は人それぞれ異なり、まさしく十人十色でしょう。
しかし多くの人は赤に白文字でコカコーラを想起し、緑の円にアルファベットでスターバックスを思い浮かべるでしょう。
色自体を正確に記憶することは難しいですが、色と記号の構成が無意識のうちに強く刷り込まれています。
色は隣り合う色や光といった置かれる環境によって左右される相対的なものですが、私たちに強い影響を与えています。
これらの話を踏まえ、本題であるパッケージの方に移っていきましょう。
身近なパッケージデザイン
これらのパッケージはどれもスーパーやコンビニなどの小売店で販売されているものです。
飲料は種類が多く、炭酸や水、コーヒーといったジャンル毎にソートされて陳列されています。
大量に陳列され、販売されるパッケージもまたそれぞれが関係し合う相対的な一面をもっていると言えるでしょう。
食品パッケージの色を見る上で重要なポイントは他製品との「差別化」と色から感じる「味わい」の2つが挙げられます。
店頭で手に取ってもらうためにはまずはその存在を認識してもらわなければなりません。
その為には他の製品よりも目立つ必要があります。
しかしただ目立つ為だけでは中味の味わいとギャップが生じてしまい違和感を与えてしまいます。
その点を高いレベルで構成しているものが「本麒麟」です。
新ジャンルの系統では金やベージュといったビールを想起させる色が多い中で、深い琥珀のような赤のグラデーションを使っています。
目立つだけでなく、そのネーミングに由来する本気感も匂わせます。またこの深い赤は金色との相性も良く、味わいと品質のよさを感じさせます。
目立たせる為だけの純粋な赤では品質感を損ね、金色との組み合わせもくどいものになってしまうでしょう。
果物の熟し具合を色で判断し味を想像するように、人には色で味を感じる能力が元来備わっているようです。
手に取った商品が期待していた味と違う、という経験はないでしょうか。
このようなことが起きないように、味を正しく伝える色を選択する必要があります。
しかし既存のロングブランドの存在も見過ごすことはできません。
これらの条件を上手くクリアしているのが「クラフトボス」です。
午後の紅茶のように赤色を使うことで、目にする人に味をすんなりと想像してもらうことも出来たはずです。
ただ、その場合は安心のロングブランドとコーヒーブランドが出自という部分を比較されて不利になってしまう可能性があります。
そこで用いられている深い青色はティーカップや茶葉の缶など本格感のある紅茶を想起させつつ、新しい色を打ち出しています。
また、クラフトボスと同じく「やかんの麦茶」も新しい色を打ち出すことに成功しています。今までのペットボトル麦茶にはない爽やかな浅葱色です。
同系統の色でもティファニーブルーのような鮮やかなものでは、中味の麦茶とのギャップで違和感を与えてしまうでしょう。
やかんの麦茶(真ん中)と他麦茶
この絶妙な色の加減により和の雰囲気と品質感を演出しつつ、既存製品との差別化も果たしています。
またこの新鮮なデザインは、若い人にも手に取りやすく麦茶のユーザーの若返りと価値の見直しにも繋がるのではないでしょうか。
最後に
さて今回は色ひとつに焦点を絞りましたが、それだけでも様々なことが見えてきました。
しかしこれらは当然絶対的なものではありません。
ひとつのセオリーを知ることでこれをガイドにし、新しいパッケージを産み出すきっかけとなれば幸いです。
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