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【パッケージコラムvol.2】色とシルエットで見るパッケージデザイン

パッケージデザイナーの小林ユウスケです。

今回の記事では私が業務の傍ら日々パッケージに触れている中で、見てきたことや感じたこと、考えていることをベースに少し視点を変えた形でパッケージデザインに関してお話していきます。

日々の仕事に即応用できるようなテクニックやハウツー的要素がある内容というよりは気付きや捉え方のひとつとして参考になる、まるで体質を改善する漢方薬のような内容をお届けできればと思います。

それでは本題に入っていきましょう。

色とシルエット、記号的なパッケージ

抽象化イラスト版/クラフトボス・コカコーラ・サッポロビール

文字や細かい装飾的要素を取り除くことで省略し、色とシルエットのみの記号的状態に置き換えたパッケージです。
この状態になってもどこのメーカーの何の商品なのか概ね見当がつくのではないでしょうか。

抽象シルエットイラスト|新規追加

さて私たちは、数多くのパッケージに囲まれて日々暮らしています。パッケージを目にしない日はないと言っても過言ではありません。
そんな多くのモノの中から、私たちは一体何を見てそれらを識別し、求めているものを選んでいるのでしょうか。

私たちが売り場でモノを選ぶことに対して使う時間は、3秒にも満たないと言われています。通勤時に立ち寄るコンビニでは、ほとんど意識せずにいつもの商品を手に取っている方もいるのではないでしょうか。

しかし実際にその状況を振り返ってみると"売り場の前に立った瞬間"という点のみで選択が完結している訳ではありません。そこにたどり着くよりも以前に、頭の中でイメージがついてはいないでしょうか。

解説図イメージ|新規追加

私たちはCMや雑誌メディア、広告によってメーカーやブランドに対するイメージが知らず知らずのうちに頭の中に蓄えられています。

私たち消費者と商品の直接的な接点はパッケージですが、パッケージだけを見て選んでいる訳ではないということも、留意していおきたいポイントですね。

今回はどのようにパッケージを認識しているのか、その捉え方に焦点を当てていきます。捉え方を改めて見直し、考えてみることでデザインを起こす際の足掛かりとなりだけでなく、また自分のデザインを見つめる際の試金石となるのではないでしょうか。

色とシルエット

私たちがなにかを見る際には大きく分けて2つの要素があると思います。それは"色"と"シルエット"です。

文字もシルエットや図に対して意味が付与されています。また意味だけでなくイメージが紐づいている場合があります。

例えば赤い丸の上部に緑の楕円が付いている絵を見れば、果物のリンゴを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし実物のリンゴは単純な赤い円ではありませんし、葉っぱも単純な楕円でもなく、単色の緑色でもありません。

詳細なディテールを記憶している訳ではなく、"色"と"シルエット"に分解し、抽象化された状態で記憶されています。

この赤い円のようにイメージを呼び起こすきっかけとなる"記号"というのはとても重要な要素です。記号はデザイン全般はもちろんのこと、ブランディングにおいても大切な要素です。

同じリンゴでも色やディテールが異なるだけで、Appleを想起しクリエイティブやオシャレ、洗練されたプロダクトが自然と頭に浮かぶのではないでしょうか。

ロゴという空の器の中に、イメージや世界観を蓄積していくことでブランドのシンボルとして機能します。

それではパッケージの話に戻りましょう。みなさん最初に見たパッケージを覚えているでしょうか。
答え合わせの為に実物を確認しましょう。

画像版/クラフトボス・コカコーラ・サッポロビール

いかがでしょうか。

思い浮かべていた商品と同じだったでしょうか。パッケージも同じように記号化され、記憶されていると言うことを体感していただけたのではないでしょうか。
もう少し見てみましょう。続いてはこちらです。

抽象化イラスト版/ブルガリアヨーグルト・おいしい牛乳・メグミルク

これらのパッケージを見て、左2つの商品は具体的な名前までは浮かばなくとも容器形状と色から"乳製品"であることはなんとなく頭に浮かんできます。

この色も記号として大きな役割を果たしています。青と白の組み合わせでは乳製品を、果物の色を使えばその果物を想起しますね。シルバーやメタリックは炭酸飲料のイメージがなんとなくありますね。

このように色をコントロールすることで、さまざまなことを伝えていきます。意外な色が思いもよらぬイメージと紐づいていたりするところが面白い部分ですね。

売り場で俯瞰して観てみる

さきほどのパッケージをもう一度確認してみましょう。

画像版/ブルガリアヨーグルト・おいしい牛乳・メグミルク

ひとつだけセオリーから大きく外れたものがあります。雪印のメグミルクです。第一印象では、牛乳と認識されづらいであろう赤をメインに使用しています。

実際に商品が置かれている環境、売り場を思い出してみましょう。日常で目にする多くのパッケージは、スーパーマーケットやコンビニで同じカテゴリーの様々な商品と一緒に陳列されています。

その為にセオリー通りのグラフィックをもちいるだけでは他社製品と同一化してしまい、埋もれてしまうひとつの原因となります。

かといって突拍子もないものはすぐには認識が出来ず、見た人に混乱を招いてしまう可能性もあります。この売り場で俯瞰した際のパッケージというのもまたパッケージデザインを観る上で面白くもあり、忘れてはならない部分です。

まとめ

今回は"色"と"シルエット"という2つのフィルターを通して、パッケージを観察しました。フィルターを通し、細かな要素を濾過することでそのパッケージがもつ"らしさ"を抽出しました。

この"らしさ"はブランド構築の際にも役立つ視点です。メグミルクのように今までになかった色を採用する判断もそうですが、一体何がその商品のもつイメージを形作っているのかを探る手がかりとなります。

そして抽出したことにより、分かることがもう一つあります。それは私たちが自身で思っているよりもパッケージから受けとる情報の多くを記憶しているわけではない点です。

つまりこれはパッケージに盛り込みしっかりと伝えることができる情報量は少なく、効果的に伝えられる情報には限りがあることを示しています。

少し意識をするだけで、普段何気なく目にするスーパーやコンビニの棚も、少し変わった景色になるのではないでしょうか。

それではまた次回お会いしましょう。

 

▼同ライターの記事はこちら

【パッケージコラムvol.1】定番カラーとそれを覆す新しいパッケージデザイン

 

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