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進化するパリのメンズビューティ。自然派・低価格・エコ・フレンドリーの3つがキーワード

フランスにおけるスキンケア事情は、エコ・フレンドリー時代の到来と共に進化し続けています。消費者は化学物質を配合しない商品をより好む傾向にあり、フランス製にこだわるほか、ブランドがどこまでサステナビリティにコミットしているか?といった点にも目を光らせています。

スーパーやデパートでは老舗かつ大企業の化粧品が今も並んでいる訳ですが、昨今のフランスで目立つのは、自然派を謳った小規模なブランドがどんどん台頭していることでしょうか。自然派化粧品、いわゆる「スローコスメ」の市場はフランスで急拡大しています。

もともとナチュラルな製品に高い関心のあったフランス人でしたが、パンデミックが彼らの美容習慣に大きなインパクトを与えたというのは確かです。

なおフランス調査会社(IFOP)によれば、2021年では92%の女性が直近1年のうち3カ月に1回は「自然派コスメを購入した」と回答しており、さらにフランス人女性はこれまで以上に“ノーメイク”へとシフトしていることが明らかになりました。

つまり人々はメイクよりもスキンケア重視へ、そしてそのスキンケアにおいてはより肌と地球に優しいものを求める傾向があると言えます。

ちなみにスローコスメの特徴は、成分がオーガニックなだけでは十分でなく、よりエコロジーで、健康的で、過度な広告宣伝を良しとしない合理的な化粧品に対する価値を定義しています。

発売元は多岐にわたっており、小規模ブランドからパリ市といった自治体が先導するコスメブランドまで存在しています。

そしてそれらのターゲットは女性に絞っていません。フランスでは「多様性」を受け入れる、理解するといった考えがこの数年でより一層浸透している状況にあり、20代の世代を中心に「ダイバーシティ」が盛んに叫ばれるようになりました。

そのため現在、スローコスメは仏メンズビューティの業界でも当たり前になりつつあります。

1990年代までは、メンズ化粧品といえば「脂性肌に向けた」爽快感を売りにした製品や、「男性香水を彷彿とさせる香料」がふんだんに使われたものが多く存在していました。

しかし、フランスでは2010年中頃よりそうした定番商品に疑問を投げかけるアイテムが登場しています。

HORACE(ホラス)、パリ・マレ地区にある路面店

今、フランスで人気が沸騰中のメンズスキンケアブランド「HORACE(ホラス)」を例に挙げてみましょう。

「HORACE(ホラス)」は、パリで2016年にECからスタートしたスキンケアブランドです。当初はオンラインショップだけで始まったものの、現在では仏国内に8つの実店舗を展開するまでに至っています。

創業当時の製品展開は洗顔フォーム&石けんの2つのみでした。しかし直後に基礎化粧のキットを発売したところ、瞬く間に大ヒットを記録。インスタグラムやYouTubeといったSNSを駆使しながら、その名が広く知られるようになりました。

人気商品であるというモイスチャライザー(保湿クリーム)

基礎化粧のキットとは、「HORACE(ホラス)」のシグネチャーアイテムである洗顔フォーム、モイスチャライザー、そしてゴマージュ(スクラブ)の3つです。

値段は3点で34ユーロ(約4,760円)と手頃で、中間流通業者を介さないシステム・価格帯が魅力であるとのことです。

HORACE(ホラス)でベストセラーになった洗顔フォーム、日本の備長炭を配合

また「HORACE(ホラス)」のベストセラー、洗顔フォームは日本の備長炭とアロエベラを配合しており、値段は13ユーロ(約1,820円)。いずれの製品も95%以上が自然由来で、全ての肌タイプに対応した優しい処方となっています。

一方で「HORACE(ホラス)」は無香料でニュートラルな製品作りを目指しているそうです。当初は男性向けスキンケアと謳っていましたが、シンプルなパッケージデザインと刺激少なめの使用感が功を奏したのか、今では女性にも人気のユニセックスブランドとなりました。

実際、私が店舗を訪れた時は男性客と女性客が半々といったところで、働いているスタッフも男性が2名、女性が2名とジェンダーレスな印象を受けました。

ヘアケア製品

2022年現時点では、フェイシャルケアの他にも歯ブラシやオーラルケア、ボディ用品、アフターシェイブ、シャンプーといったヘアケア製品など、日常生活に必要なものが全て揃っている状態です。

平均価格は15ユーロ(約2,100円)ほどで、100%フランス製・スローコスメにこだわっているのが特徴です。

新商品のUV入りデイクリーム

そして重要なのがエコ・フレンドリーの精神です。「HORACE(ホラス)」は容器のリサイクルにも大変積極的で、空の容器を店頭に5つ持参すると10%の割引を受けることができます。

その他、売上の1%をサーフライダー・ファウンデーションなどの仏環境団体に寄付しており、そうした企業の透明性をホームページやSNS上で公開していることも、消費者が判断する材料の一つとなっています。

女性客も多いHORACE(ホラス)

購入する人の年齢層は20代前半〜30代、40代までかなり幅広いとのことです。

これまでは男性用化粧品といえば刺激的でメンズ香水のような香りが特徴、といったイメージでしたが、実際の使用感も非常にマイルドで、女性の私が使っても全く問題ありませんでした。これであればカップルや家族間でも共有できますし、パッケージもシンプルなのでインテリアにも合いそうです。

ボディシャンプーと石けん

フランスのスーパーや薬局では、男性用化粧品も少しありますが制汗剤の方がかなりの売り場面積を占めているといった印象です。というのも、男性にとっては制汗剤がどの年代でも季節を問わず必需品であるためです。

男性用化粧品であるのは制汗剤やオーデコロンがメイン、といったのもフランスの特徴かもしれません。

フランスのスーパーにあるメンズコーナー

なおフランスでも物価上昇の波が激しく、人々はより手頃な製品や食品を求めています。そういった事情も後押ししているのか、フランスのスキンケア市場は自然派、エコ・フレンドリーの他に低価格であることが重要視されていると思います。

男性だから高価格で‥といった概念は存在せず、ユニセックスにも展開する可能性を秘めていることから、どんな人にも手にしやすい価格帯で設定されているのでしょう。

また今回例に挙げた「HORACE(ホラス)」は、「顧客の相談にはSNSを通じて積極的に答えるようにしている」としており、企業と消費者の距離が非常に近いことも印象に残りました。

 

 

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