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ヴィンテージ感、ユーモア、温もり。フランスのパッケージに見る、イラストデザインの力

ロゴや文字、グラフィックなど、多彩な方法で表現されるパッケージデザイン。中でもイラストをあしらったデザインは、思わず手に取りたくなる親しみやすさがあり、ギフトとしても喜ばれる強みを持っています。

日本には魅力的なイラスト入りのパッケージが数多く存在しますが、実はここフランスのパッケージも負けていません。老舗ブランドから新進気鋭のブランドまで、ユニークでキャッチーなアイテムが揃っています。今回は、そんなフランスのイラスト入りパッケージを6つ厳選してご紹介します。

老舗ティーサロン「アンジェリーナ」のスイーツBOX

パリの「アンジェリーナ」

パリの「アンジェリーナ」

パリで誕生した「アンジェリーナ」は、創業120年を超える老舗のティーサロンです。パリ1区の本店には、看板スイーツであるモンブランを求めて、毎日のように長い行列ができています。

日本でもよく知られる「アンジェリーナ」ですが、実はパリの店舗では、チョコレートや瓶入りのマロンクリームといった「エピスリー(食料品)」が置かれていることをご存じでしょうか。特にビスケットなどのスイーツが入ったアソート缶には、「アンジェリーナ」を象徴するエレガントなイラストが描かれています。

ビスケット缶

ビスケット缶

例えば、写真のビスケット缶には、アンジェリーナ本店があるパリ1区の風景が描かれています。店舗の目の前に広がるチュイルリー庭園や、美しいオスマン建築、そして20世紀初頭のファッションに身を包んだエレガントな女性たちの姿が繊細に描かれています。

クレープ・ドンテルの缶

クレープ・ドンテルの缶

一方、クレープ・ドンテル(薄くてサクサクした生地)にチョコレートをコーティングしたスイーツが入ったこちらのBOXには、かつてのティーサロンの趣を思わせるクラシックなイラストが描かれています。

「アンジェリーナ」が誕生した1903年当時のパリは、アール・ヌーヴォーの美術運動が盛んな時代でした。作家や画家、政治家たちがこのティーサロンに集まり、活発な議論を交わしていたといわれています。顧客にはマルセル・プルーストやガブリエル・シャネルといった名だたる人物も名を連ねていました。イラストに描かれた女性のファッションからも、当時のエレガントなスタイルが感じられますね。「アンジェリーナ」の歴史と世界観を存分に堪能できる、人気のスイーツBOXです。

「シャポン」の板チョコレート

パリ6区、シャポンのチョコレートショップ

パリ6区、「シャポン」のチョコレートショップ

1986年に創業した「シャポン(Chapon)」は、カカオ豆の仕入れから調合、加工までを自社で手がけるリュクスなチョコレートショップです。創業者のパトリス・シャポン氏は、かつてバッキンガム宮殿でアイスクリームやシャーベットを手がけた経歴を持つ名高いショコラティエです。

シャポンのチョコレート詰め合わせコフレ

シャポンのチョコレート詰め合わせコフレ

シャポンの看板商品といえば、その場で楽しめるチョコレートムースが有名ですが、板チョコレートや詰め合わせのコフレも高い人気を誇っています。
特に、レトロ可愛いパッケージデザインが特徴的な「タブレット(Tablettes)」は、数々の賞を受賞したリュクスな板チョコレートのシリーズです。産地別に厳選されたピュアチョコレートや、フルーツやナッツを贅沢にあしらったフレーバータイプなど、なんと全40種類ものバリエーションが揃っています。

タブレット(Tablettes)シリーズ

タブレット(Tablettes)シリーズ

中でもホワイトチョコレートのシリーズは、その淡い色合いが美しく、パッケージに小窓が付いているのが特徴です。購入前に中身を確認できるため、「どんなチョコレートなのか」がひと目でわかり、安心感を与えてくれます。

柚子とローストしたヘーゼルナッツ入りのホワイトチョコレート

柚子とローストしたヘーゼルナッツ入りのホワイトチョコレート

こちらのホワイトチョコレートは、うっすらと感じる柚子風味が特徴的でした。柚子はフランスでも「YUZU」として知られており、現地の料理人やパティシエからも重宝されている食材です。さらに、パッケージにはふんわりとした桜のイラストが描かれています。チョコレートもデザインの一部となっているところが魅力的ですね。

輪郭部分も花のイラストで柔らかいイメージになっています。

輪郭部分も花のイラストで柔らかいイメージです。

裏のデザイン。柚子の産地である日本の高知県について説明書きが加えられています。

裏のデザイン。柚子の産地である日本の高知県について説明書きが加えられています。

小窓から中身を確認できるこのパッケージは、「クオリティの高い製品」であることを視覚的に伝える役割も果たしており、購入後のギャップをなくす工夫が施されていると感じます。

コンセプトストア「マラン・モンタギュ」のマッチ箱

コンセプトストア「マラン・モンタギュ」

コンセプトストア「マラン・モンタギュ」

パリ発の「マラン・モンタギュ」は、イラストレーターであるマラン・モンタギュ氏が2020年に創業したライフスタイルブランドです。パリ6区にあるコンセプトストアには、パリへの敬意と愛情が込められた手描きの陶器やグラス、文房具などがずらりと並び、女性を中心に連日多くの人で賑わっています。

商品のほとんど全てにイラストが描かれています。

商品のほとんど全てにイラストが描かれています。

中でもユニークだったのは、家の形をしたマッチ箱。コンセプトストアの住所である「マダム通り48番地」からインスピレーションを得て、家を模したマッチ箱がデザインされたそうです。

「メゾン(maison)」とう名前のオリジナルマッチ

「メゾン(maison)」とう名前のオリジナルマッチ

カラーは赤、青の2種類

カラーは赤、青の2種類

側薬(がわぐすり、マッチを擦る部分)が屋根部分にあしらわれているのもユニークです。箱自体は5.5×7cmの大きめサイズで、中にはマッチが50本入っています。手描きの繊細さがよく表れているアイテムであり、「これなら捨てずに詰め替え用として保管しておきたい」というポジティブな印象を抱きました。

「オリザ・ルイ・ルグラン」の石鹸

パリの香水メゾン「オリザ・ルイ・ルグラン」

パリの香水メゾン「オリザ・ルイ・ルグラン」

18世紀、ルイ15世の時代から続く香水メゾン「オリザ・ルイ・ルグラン(Oriza L. Legrand)」。マリー・アントワネットが愛した香水を調香したブランドとして知られ、現在もパリ中心部に店舗を構えています。

「オリザ・ルイ・ルグラン」のオリジナル石鹸

「オリザ・ルイ・ルグラン」のオリジナル石鹸

香水以外にも、石鹸やルームフレグランスを展開している「オリザ・ルイ・ルグラン」は、そのクラシックなパッケージデザインがたびたびファッション誌にも取り上げられるほどです。創業約300年の歴史を感じさせる、ヴィンテージ風のイラストが特徴的です。

文字にもご注目

文字にもご注目

女性から支持を集めそうなイラストは、香水のラベルにも採用されています。ヴィンテージ好きな方のインテリアにも馴染みそうですね。また、イラストだけでなく、文字フォントの美しさにも目を引かれます。石鹸という日常的なアイテムでも特別感を演出してくれるため、ギフトとしての需要が非常に高いのだそうです。

フランスのスタートアップ企業「ルナフード」のサンドイッチ

2019年に設立されたフランスのスタートアップ企業「ルナフード(LUNA FOOD)」は、サンドイッチや総菜、ONIGIRI(日本のおにぎり)などを、10ユーロ以下という手頃な値段で販売する新進気鋭の食品メーカーです。

「ルナフード」のサンドイッチ

「ルナフード」のサンドイッチ

現在、パリのスーパーマーケットで大きな広がりを見せているルナフードが手がけるのは、日本料理、イタリア料理、韓国料理などにインスパイアされた多国籍な軽食。その中のサンドイッチシリーズ「ザ・ブレッド・バンディッツ(The Bread Bandits)」では、日本の照り焼きチキン風味を含む5種類のサンドイッチを展開しています。

フランスでは紙包装のサンドイッチが主流に

フランスでは紙包装のサンドイッチが主流に

惣菜や軽食の包装を、プラスチック製から紙製に次々と切り替えているフランス。サンドイッチも例外ではなく、新しく誕生する食品メーカーでは特に脱プラスチック化の傾向が強いと感じます。紙製品ですので、イラストも映えやすいのでしょう。

キャッチーなイラストが目を引く商品

キャッチーなイラストが目を引く商品

こちらは泥棒のイラストが描かれているところが何ともキャッチーな商品ですが、そのキャッチコピーは、「泥棒も惹かれるほど美味しいサンドイッチ」なのだとか。さらに、フランス産麦芽を100%使用し、亜硝酸塩が使われていないハムなど高品質な内容にも注目が集まっています。

「メゾン・マルタン」のスパイシーソース

同じく2019年創業の「メゾン・マルタン(MAISON MARTIN)」は、フランスで栽培されたトウガラシを使用した、フランス初のスパイシーソースブランドです。キャッチコピーは「キッチンの温度を上げよう!」。フランス国内の持続可能な農家と提携し、スパイシーソースをはじめ、マスタードやケチャップなどを「国産商品」として展開しています。

「メゾン・マルタン」のスパイシーソース

「メゾン・マルタン」のスパイシーソース

そんな「メゾン・マルタン」を象徴するアイコニックな商品が、辛さ別に10種類も揃うスパイシーソース。それぞれのボトルにはインパクトのあるイラストが描かれており、地味になりがちなソースラックを華やかに彩ってくれます。

辛さやフレーバー別にさまざまなイラストが描かれています。

辛さやフレーバー別にさまざまなイラストが描かれています。

このスパイシーソースは、ハンバーガーやフライドチキン、ピザといったストリートフードから、マッシュポテトやラクレットなどのフランス伝統料理まで、幅広く楽しめるとのことです。実際に私も黒トリュフ味のソースを手に取ってみたのですが、黒トリュフが「隕石風」に描かれているデザインに、メゾン・マルタンならではの個性とオリジナリティを感じました。スパイシーソースの「辛くて強い」イメージと合っている点もユニークです。

ラベル右側に数字で辛さのレベルが表記されています。

ラベル右側に数字で辛さのレベルが表記されています。

このように、イラスト入りのパッケージは親しみやすさだけでなく、ブランドが伝えたいメッセージや特徴を表現する役割も果たしています。シンプルなデザインとは異なり、有機的で温かみがあるところも魅力の一つです。

特にフランスでは、スタートアップ企業など新興の食品メーカーを中心に、イラスト入りパッケージが増えているのが印象的でした。

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