アメリカのスーパーマーケットやコンビニエンスストアの新商品コーナーを覗くと、缶入りのお茶や、ボタニカルドリンクがよく置かれていることに気付きます。
日本のように食事のお供として緑茶やウーロン茶を飲んだり、単に喉の渇きを潤したりするアジアのお茶文化とは、ここでの存在意義が根本から異なります。現代のアメリカにおいて、プラントベースへの関心や健康志向の高まりに後押しされたこれらのドリンクは、もはや単なる水分補給の道具ではありません。
ここでいう「ボタニカルドリンク」や「ボタニカルティー」とは、日本でお馴染みの茶葉(緑茶や紅茶など)にとどまらず、ハーブやスパイス、果実、植物の根や花といった「茶葉以外の植物性素材」をベースに作られた、健康志向の飲料の総称です。いわば、大自然の恵みを現代風にブレンドした新しいお茶のスタイルといえます。
アジアとは異なる進化を遂げ、お茶カテゴリーのイメージすら変えつつあるアメリカの売り場から、5つの個性豊かなパッケージを通してその緻密なデザイン戦略を読み解いてみましょう。
2色で魅せる植物の生命力:RISHI(リシ)
静かながら圧倒的な存在感を放っているのが、「RISHI(リシ)」の「SPARKLING BOTANICAL TEA」です。

缶の表面に大きく配置された、植物のエンブレムのような美しいロゴマークがこのパッケージの主役です。洗練されたアースカラーを基調としたマットな質感の缶は、一見するとプレミアムなクラフトビールのようですが、中身は厳選された植物や茶葉から作られた本格的なボタニカルティーです。さらにスパークリングというのも先進的です。
余計な加糖や人工甘味料を一切排除し、植物本来の力とおいしさを引き出すというブランドのストイックな姿勢が、この気品あるグラフィックに凝縮されています。
有名アーティストの看板を背負った、付加価値付きアイスティー:the Ryl co.(リル)
続いては、ビビッドなカラーリングと力強いタイポグラフィが目を引く「the Ryl co.(リル)」のシリーズです。

パッケージに大きく躍るのは、「ICED TEA WITH BENEFITS(メリットのあるアイスティー)」というメッセージと、大きく配置された「0 SUGAR」「0 CALORIES」のアイコン。健康志向の消費者が真っ先に気にする数値を明確に提示しつつ、抗酸化物質(アントシアニンなど)をブレンドした「機能性(BENEFITS)」をアピールしています。
特に注目したいのが、右側のブルーの缶に刻まれた「CRAFTED BY MORGAN WALLEN」の文字。アメリカで絶大な人気を誇るカントリーミュージックのスター、モーガン・ウォレン氏とのコラボレーション商品です。健康的なスペックという理詰めの説得力に、スターのネームバリューによる情緒的な価値を掛け合わせることで、定番ブランドがひしめく売り場で強力な差別化を果たしています。
ZENがストレス社会を生き抜くキーワード:zenjoy(ゼンジョイ)
さらに一歩進んだ機能性を、親しみやすいビジュアルで提案しているのが「zenjoy(ゼンジョイ)」です。

白をベースにしたクリーンなデザインの缶に、瑞々しいマンゴーやラベンダーのイラストが描かれています。キャッチコピーの「find your zen(あなたの『禅』を見つけよう)」が示す通り、心の落ち着きを意識したアプローチです。缶の上部には「Ashwagandha(アシュワガンダ)」と記されており、ストレス対策素材として注目される素材が配合されていることを伝えています。
この商品名もそうですが、アメリカではもはや「禅」は「ZEN」として英語化しています。メンタル面の落ち着きを求めるアメリカ人には、自分の内なる力を信じて自然の力に頼るというZENなアプローチは、自然飲料でもあるお茶のカテゴリーにはとてもマッチするのでしょう。
伝統の茶葉を現代のエネルギーへ昇華させる:MATEÍNA(マテイナ)
原色調の鮮やかなカラーバリエーションで棚を彩っているのは、アルゼンチン発祥のマテ茶をモダンにアレンジした「MATEÍNA(マテイナ)」です。

「YERBA MATE」の文字が大胆に白抜きされたミニマルなデザインは、スポーツドリンクのようなエネルギッシュな印象を与えます。
マテ茶は「飲むサラダ」とも呼ばれ、自然由来のカフェインを豊富に含むことから、アメリカでは健康的でクリーンなエナジードリンクとして支持を広げています。このブランドのフレーバーラインナップは、マンゴーキーライム、ラズベリーゆずなど、好奇心をくすぐる組み合わせです。機能性や健康感を楽しみながら取り入れたい人の心に刺さりそうです。
新しい時代とノスタルジー:HALFDAY(ハーフデイ)
最後にご紹介するのは、淡いパステルブルーの缶にポップなイラストが描かれた「HALFDAY(ハーフデイ)」のプレバイオティクス・アイスティーです。

「NEW ERA ICED TEA(新しい時代のアイスティー)」と銘打ちながら、どこかレトロでアメコミ的。古き良きアメリカの夏を思わせるメイソンジャーのイラストが印象的です。「プレバイオティクス」や「5g シュガー」といったような健康機能性をしっかり謳いつつも、全体から漂うのはどこか懐かしいノスタルジー。
缶の裏面には、青空の下に置かれた黄色いピクニックテーブルのイラストとともに、「Make a break for it(ちょっと一息つこう)」というメッセージと、公式アカウントへの誘導が記されています。多くのブランドが「腸内環境への配慮を打ち出す(PREBIOTICS)」という難しい科学的根拠の解説に終始する中で、このブランドは「懐かしいあの頃のような、のんびりとした時間」というストーリーを提示しています。
まとめ
アメリカのドリンク文化は、大容量でダイナミックなイメージが強い一方、細分化された缶入りのお茶やボタニカルドリンクの売り場からは、自然の力で自分の健康を支えたいというニーズが感じられます。
日常的にお茶を飲む文化を持つ日本とは異なる形で、アメリカではお茶の新しい価値が見直されているようにも感じられます。独自の進化を遂げつつあるアメリカ市場を前に、改めてお茶を見直す時なのかもしれません。
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