健康志向で変わるアメリカのパスタ市場。「カラダに良い」をパッケージで伝えるには?
アメリカ人とパスタは切っても切れない関係
パスタやスパゲッティは、アメリカ人の食卓にとって欠かせないものです。茹でてソースと絡めるだけで手軽に食事ができる点や、比較的安価である点から、アメリカ人の約9割が週に最低1回はパスタを食べると言われています。
しかし、特に若い世代の間で健康志向が高まる中で、「炭水化物のかたまり」ともいえるようなパスタは敬遠されるように。統計を見ると、アメリカにおける1990年~2016年のパスタ市場の成長率は年間平均で4%であるのに対し、2016年以降は平均1.6%にまで落ち込みました。
このようなトレンドを受けて、アメリカではヘルシーな食卓にも取り入れることができる、新しいパスタが多く誕生しています。
豆や玄米で作られたパスタの人気が急上昇中
これまで、よりヘルシーなパスタのオプションとして販売されていたのは、全粒小麦のパスタのみでした。しかし2010年代になり、小麦ではなくマメ科植物(レンズ豆、ひよこ豆、緑豆、枝豆、黒豆など)や米粉で作られたパスタが誕生します。
2016年には、アメリカで生産された全パスタの15%がグルテンフリー(小麦粉未使用)に。消費者からの人気も高く、アメリカの大手健康食品スーパー「ホールフーズマーケット」の「2017年の人気食品トップ10」にも選出されたほどです。
このような新しいパスタの製造・販売に特化するブランドも増え、パスタ市場の競争は過熱していると言えます。以下では、筆者がクーパーズタウンのスーパーで見つけたものをいくつか紹介します。大都市でなくともこれだけの種類が手に入ることから、アメリカにおけるオルタナティブ・パスタの人気が高さが分かりますね。
パスタで手軽にプロテイン摂取!
上で紹介したパスタの写真を見ると、パッケージの表面に、含まれるタンパク質(プロテイン)のグラム数が記載されている、という共通点があることが分かります。
近年のアメリカの健康的な食生活のトレンドは、なんと言っても「高タンパク」にあると言えます。これまではプロテインというと「筋トレをしているアスリートがパウダーで飲むもの」というイメージが付き物でした。
しかしタンパク質は筋肉の成長だけでなく、体の調子を整えたり、肌や髪の質を向上したり、さらに活力のある生活を送るのに欠かせない栄養素。そのため、普段から高タンパクの食事を心がける人が増えています。
普段食べ慣れているパスタで手軽にプロテイン摂取ができるのは、嬉しいですよね。脂質の少ない植物性タンパク質が摂取できるパスタは、体重が気になる人やベジタリアン・ヴィーガンにも人気です。
こちらはBarillaが発売している、プロテインプラスのパスタ。通常の小麦粉から作られたパスタに、大豆・ひよこ豆・レンズ豆から抽出したタンパク質を追加で配合しています。食べ慣れたパスタの味を損なうことなく、タンパク質を摂取できるのがウリです。これなら好き嫌いの多い子どもでも、パスタで簡単にタンパク質やその他の栄養を取り入れることができますね。
窓つきボックスでパスタを見せる、商品が主役のパッケージ
さらにもう1つの共通点は、パッケージに中のパスタが見える「窓」がついているということ。特にこの記事で紹介する新しいパスタのボックスには、必ずと言ってよいほど窓があります。
ちなみに、こちらのブランドTinkyadaは、玄米パスタの製造に特化。グルテンフリー、コレステロールフリー、さらにユダヤ教で「清浄な食品」を意味するコーシャ認定も受けています。
中身を見せることの利点の1つは、パスタの形を容易に判別できるということです。パスタは形状によってロティーニ、フジッリ、ペンネ、フェットチーネなどと名前がついていますが、パスタに詳しい人でないと分かりづらいもの。実際のパスタを見ることで、簡単に好きな種類を選ぶことができます。
しかし、このようなパッケージデザインの最大の利点は、このパスタが「普通のパスタとは違うヘルシーな商品である」ということを、より効果的に伝えることができる点にあるのではないかと思います。
小麦粉のみでできたパスタとの最大の違いは、その色。「炭水化物=太る=栄養価が低い」というイメージのある小麦色に対し、新しいパスタは濃い茶色や赤、オレンジ、赤紫、緑、グレーなど色とりどりです。
野菜や豆類、古代穀物などを想起させるこれらの色合いは、消費者に一瞬で「体によさそう」という印象を与えることができます。言い換えれば、パッケージの表記よりも素早く・効果的にメッセージを伝えることができるのです。
さらに食品の安全性や環境意識が高まる中、口に入れる商品の実態を把握したい(原材料は何?どこから来たもの?余分な成分は入っていないか?など)という人が増えています。パスタのボックスにある小さな窓は、商品の「見える化」を象徴しているとも言えるのではないでしょうか。
気になるその味は…?
豆や玄米できたパスタ。健康に良いのは分かったけど、果たして味はどうなの?と思った人も多いのではないでしょうか。そこで今回、筆者が2種類のパスタを実際に購入して食べてみました!もちろん個人の好みがあるので一概には言えませんが、参考になれば幸いです。
商品のレビューサイトConsumer Reportsにおいて、オルタナティブ・パスタとして味/栄養共にランキングトップに輝いたブランドです。
食べてみて最初に気が付くのは、食感の違いです。小麦粉のパスタに比べて、こちらは噛み応えがかなりしっかりしています。また噛むごとに豆特有の土っぽさが感じられ、素朴な味わいが楽しめました。
筆者はオリーブオイル+唐辛子の少しスパイシーなソースで頂きましたが、野菜たっぷりのパスタサラダなどに合うのではないかと思います。1人前=ボックス半分(約110グラム)で24グラムの植物性タンパク質が摂取できます。
米が主食の日本は、米粉製品に馴染みが深い人も多いです。そのため玄米のパスタは違和感なく簡単に受け入れられるのではないかと考えられます。
感想は…小麦粉のパスタとほとんど味は変わりません!玄米特有の歯ごたえと、フラックスシードの効果により、もちもち感のあるアルデンテに仕上がりました。パッケージの指示通り10分茹でても堅めなので、腹持ちも良いです。強いて言うならば、後味があまりなく、よりさっぱりしているように感じられました。好き嫌いが多く、最初は不信感を見せた筆者の夫も「思ったよりおいしい」と太鼓判。
米粉パスタは豆類のパスタに比べてプロテイン含有量は少なめですが、食物繊維が豊富です。味も伝統的なパスタに近いので、最初はここから始めてみるとよいでしょう。
参考記事
■Pastas made from lentils, mung beans and carrots are suddenly popular – but do they taste any good? (The Guardian) :https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2018/apr/26/lentil-mung-bean-and-carrot-pastas-are-suddenly-popular-but-do-they-taste-any-good
■Pasta Facts (Pasta Fits) :https://pastafits.org/pasta-101/pasta-iq/pasta-facts/
■A New Twist on Pasta (Consumer Reports): https://www.consumerreports.org/pasta-noodles/new-twist-on-pasta/
■CR Alternative Pasta Ratings v2 (Consumer Reports) :https://article.images.consumerreports.org/prod/content/dam/CRO%20Images%202017/Magazine-Articles/May/CR%20Alternative%20Pasta%20Ratings%20v2
■Better-for-You Pasta—Renewing Growth for The Category, July 2018 (Green Circle Capital Advisors) :http://greencirclecap.com/bfypasta/
■Pasta & Noodles (Statista) :https://www.statista.com/outlook/40060100/109/pasta-noodles/united-states
■Barilla Is Now Making Protein-Packed Chickpea Pasta (Delish):https://www.delish.com/food-news/a22976910/barilla-chickpea-pasta/
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