アメリカで日本酒ブームが加速しています。日本で日本酒の消費量が減少する中、生き残りをかけアメリカに進出する酒造メーカーが続出。
この10年ずっと右肩あがりの輸出量で、21年には前年比からほぼ2倍、そして今年は最高の伸び率を更新する勢いです。サンフランシスコの若者に人気なバーやレストランでは、SAKEは“クール”なドリンク。
冷酒をワイングラスで飲んだりカクテルで飲むのがアメリカンスタイル。酒瓶も飲み方もスタイリッシュに進化しています。
アメリカ初の酒屋-それから20年
そんなアメリカのSAKEトレンドを牽引してきたのが、20年前、米国で初めてサンフランシスコにオープンした酒屋「True Sake」です。アメリカ人オーナー、Beau Timken(ボー・ティムケン)氏が立ち上げたこの酒屋は、おしゃれなSAKEブティック。日本酒の知識を持った従業員が客に丁寧に説明し、ペアリングもアドバイスします。さらにイベントやニュースレターの配信を通じて、トレンドの発進基地となっています。
その求心力となっているのが、「酒の日」に因んで毎年10月1日前後に開催される「SAKE DAY」です。今年17回目となる同イベントは、若者を中心した地元アメリカ人約1000人で賑わいました。ブースには米国内、日本から各酒造メーカー62社が集結し340銘柄を振る舞い、会場は熱気に包まれていました。傾向としては、プレミアムな吟醸酒の人気が高く、すでに好みの銘柄や豆知識を持つ人の多さに驚かされました。アメリカ人の酒に対する好奇心は高まり、酒市場に好機を齎しています。
米国における日本産酒類輸出動向(10年) (出典:JETRO)からも分かるように、パンデミック中に一時滞ったものの、この10年堅調に推移。
2021年から22年にかけて特にウィスキーと清酒は急カーブ上昇となっています。
アメリカ市場で躍進する日本酒造メーカー
「SAKE DAY」のこの日、米国月桂冠社長の松村憲吾氏は「需要がある場所で酒造りを行うことで米国の多くの皆様に新しい価値を持つ清酒を気軽に楽しんで頂ける。」と語り、米国進出33年の歴史と更なる市場開拓への自信が窺えました。
小さな酒蔵のブランディング力
一方で日本の小規模酒蔵の米国進出も目白押しです。その一軒、新潟県の竹田酒造は、従業員4人の小さな蔵。“マイクロ ブルーワリー”ならではの独創的な味わいを強みとし、ターゲット戦略は高級レストランです。すでに人気の「かたふね」シリーズの中でもIWC最高賞受賞した「かたふね大吟醸」は、華やかな飲み口で洋食のペアリングにも最適。世界のトップレストランで扱われています。透明ブルーのスタイリッシュなボトルは、テーブルにプレミア感を添えます。「クラフト、少量生産」のキーワードはカリフォルニアの食文化に馴染んでいます。
茨城県の「木内酒造」は、伝統的な日本酒造メーカーでありながら、アメリカで「Hitachino Nest Beer」(常陸野ネストビール)を大ヒットさせました。インパクトあるフクロウのロゴはすでに米国で親しまれており、米系一般スーパーでも売られています。そのブランディング力を活かして最近では「木内の雫」(スピリッツ)、梅酒、焼酎など続々入荷中。斬新なデザインが購買力を唆ります。このように、大手酒造メーカーから小さな酒蔵まで、アメリカには酒市場に、ビジネスチャンスが広がっています。
SAKEビジネスの起業家続々登場!
SAKE市場に参入するアメリカ人の起業家も年々増えています。「SAFU SAKE」のO,Paul Dehrewend 氏は、緊急医療医でもあり、酒ブランドを立ち上げた起業家です。数年前に北海道にスキーに行き、その後居酒屋で飲んだ日本酒に感銘したのがきっかけとなり、今年、地元のサンディエゴ(カリフォルニア州)で起業しました。醸造元は大分県の藤居醸造ですが、アメリカ生まれの「SAFU SAKE」は、日本的なイメージを払拭、軽やかに波に乗るような爽やかなボトルで、カリフォルニアライフに馴染むSAKE 文化を構築しています。インポートからセールスまでチームが直に関わる為、素早いマーケティングが実現できています。更にアメリカ人が英語で発信する酒情報は一瞬にして世界に広がり、強力なインフルエンサーとなっています。
もちろん、米国在住の日本人起業家の活躍も目覚ましいものがあります。2015年にサンフランシスコで初めて酒蔵を開業した「Sequia Sake」は、主力の生酒を筆頭に、アメリカならではの多様化した「フレーバー酒」を進化させ、幅広いファン層を掴んでいます。ハラペーニョ酒やウィスキー樽で熟成させた酒などユニークな商品とアート的でポップなラベルも親しまれています。ホームページにはカラフルなギフトパッケージが勢揃い。これからのクリスマス商戦に期待を寄せています。
サンフランシスコの対岸のオークランドで、小さな酒蔵を構える「DEN Sake」は、一種類の純米生貯蔵にこだわります(吟醸酒、火入れもあり)。蔵人たった1人で全行程を丁寧に仕上げるため、生産毎に新酒が発売され、微妙に違う味わいも常連の楽しみになっています。地元レストランから熱いコールを受け続ける理由に、アメリカの食文化に合った酸度の高さとリッチな風味があります。地産地消、サステナブルな手法も地元に愛される要因となっています。
アメリカスンタイルSAKEパッケージ
「おしゃれ感」や「高級感」溢れるパッケージが購買力を掻き立てます。パーティーが多いアメリカ社会で、SAKEはアメリカ人の興味を唆るドリンクアイテムです。最近ではSAKE初心者用にスモールボトルが多く出回っており、あらゆる銘柄や種類を試しながら好きな酒に出会える楽しみ方が流行しています。
スタイリッシュにアメリカ人の好奇心を掻き立てる酒ボトルがラインアップ
SAKEをファッション化させるバーの存在
都会でアメリカの酒トレンドをリードしているのは、地元のおしゃれなバーや、レストラン、そしてそこに通う若者達です。この数年、チルドSAKEが主流となり、スパークリング酒、フレーバー酒、そしてカクテルもバラエティが増え、バーやダイニングシーンを盛り上げています。かつてとっくりにおちょこで飲んでいた「HOT SAKE」のイメージから新進気鋭なドリンクとしておしゃれに進化しています。
<参考資料>
Chiyonokame(愛媛県)
まるで繊細なワインボトルのようなデザインとワイングラスがぴったり。
https://packagingoftheworld.com/2019/03/chiyonokame.html
http://awesomepackaging.com/2010/10/ohmine-sake/
SUMO
Adam Gunderson Design
http://cargocollective.com/adamgundersondesign/SUMO-SAKE
Koi Packaging
Fuji Ohmine Junmai Ginjo
© Ateriet Food culture
https://www.ateriet.com/sake-packaging-design
Love this Sake trio
山名酒造株式会社 (Yamana sake brewery)
http://www.okutamba.co.jp/product/morinomitsushu.html
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