「アメリカのケーキは甘いだけ」はもう古い。ビーガン、オーガニック、ハイクオリティで映える、進化したケーキ市場
大人もワクワクするSNS映えケーキ
年間を通じてイベントやパーティーが多いアメリカでは、何かにつけケーキの出番が絶えません。最近では用途も多様化し、サンフランシスコではオーガニック、ビーガンケーキから3Dプリンターケーキまで、カスタム需要が急上昇中です。
ケーキは身近でありながらTPOに応じて芸術的に形成できる唯一の食べ物かもしれません。市内にはデザートミュージアムまで登場し、SNS映えを狙う客で賑わっています。かつて、甘すぎると言われていたアメリカンケーキは、よりクリエイティブに美味しく進化しています。
健康志向ブームでオーガニック・ビーガンケーキまで
ケーキの最高峰といえば、なんといってもウェディングケーキですね。2018年に行われたイギリスのヘンリー王子とメーガン妃のロイヤルウェディングでは、サンフランシスコ対岸のバークレー市にある地産地消で有名なレストラン、「シェ・パニーズ」出身のシェフがケーキを担当しました。
その時、王室伝統であるケーキの高さより、地産のエルダーフラワーを使った質の高いケーキで伝統を破ったと話題になりました。健康志向が強いサンフランシスコでは、オーガニック、ビーガン、グルテンフリーの選択肢はスタンダードになってきています。
金融街に登場したオーガニックケーキ専門店
「デザートも食材とプロセスに拘りましょう」と、金融街にオーガニックケーキ専門店「Whole Cake(ホール・ケーキ)」が登場したのは2年前。地産の新鮮なオーガニックミルク、フルーツやナッツをはじめ、精製された砂糖やバターまで食材に拘ったカスタムケーキです。
全て手作りでオーダー注文をするか、店頭でも購入できます。そのサイズは2人分のミニケーキから120人用まで多種に及びます。スライスもありますがホールケーキを選べることで、少人数でも特別感が湧いてきます。早速試したところ、こだわりのフルーツと濃厚なクリームが美味で、繊細さと軽い甘さが魅力のケーキでした。
店頭販売は、ここではゲートウェイにすぎません。ビジネスを活気付けているのは、立て続けに入ってくるオンラインオーダーです。サンフランシスコのフードデリバリーサービスはどこの地区よりも進んでおり、高級店を除く多くのレストランやカフェは業者を利用しています。このシステムの普及により、企業ミーティングから忙しいビジネスピープル、子育て世代、高年齢層まで客幅を広げています。同時にこの現象は、食品ロスを防ぐためにも役に立っているようです。
大人から子供までワクワクさせる夢のお店「Daydream Cake shop(デイドリーム・ケーキ・ショップ)」
サンフランシスコのまったりした住宅街に、パステルピンクのエントランスが目を引くケーキショップ「Daydream Cake shop(デイドリーム・ケーキ・ショップ)」が登場したと聞いて訪ねてみました。パステルカラーで統一した店にはワクワクするようなメニューと仕掛けがたくさんあり、まだオープンして数ヶ月にも関わらず、SNS映えを狙うスイーツファンで賑わっていました。
デイドリームのオーナーシェフ、シャーリーさんは、独学でデザート作りを学び自分の店を持ちました。ケーキからドリンクまで、メニューはユニークでアーティスティック。しかし原材料はオーガニックを主としたナチュラルなものを使用し、品質とSNS映えのダブル。例えば、アールグレーケーキにタピオカを好きなだけ載せるミニケーキは、紅茶の香りのシフォンケーキとゆるいクリームが絶妙で、好きなだけタピオカを載せるDIYケーキです。
目を引くピンクのハート型ケーキは、割った時も宝石のような赤いジェリーが側面をカラフルに彩り、デザートの楽しみを引き立たせてくれます。
まるで絵のようなインスタ映えドリンク
ドリンクの看板メニューは、「スウィートドリーム」「デイドリーム」と名付けたSNS効果抜群のスラッシュです。
まるでクレヨンで青空と白い雲を描いたようなキュートさが客を惹きつけています。その他、オーガニックの新鮮なフルーツをたっぷり使った「フルーツドリンク」もゴージャスとヘルシーさがウケています。
午後にはママさんや子ども連れ、学生達が立ち寄り、スマホで注文したデザートを撮影し「ご褒美」の時間を楽しんでいました。パステルピンクの壁には「天使の羽」もあります。ここはもはや「食べる」を超えた“ドリームスタジオ”のようです。
お持ち帰り用、贈答用のボックスは、どんなサイズもフィットするプラスチックと紙の2層式で、ケーキプレートごと入るように工夫されています。
クリームが箱に付着することなく、ボックスからの取り出しもワンハンドで出来ます。箱は組み立て式なので収納スペースも最小限で済みます。落ち着いたボックスのデザインは、リボンをつけて高級感を持たせたり、用途に合わせ変化します。
ひと昔前、アメリカで美味しいケーキを食べるには、高級ホテルやデパートで頂く「アフタヌンティー」が主流でした。今では多くの個人店が、それぞれ個性あるデザートコースを提供しています。
今では、アメリカのデザート市場にグローバルなテイストが流入し、SNS、インスタ効果が追い風となり、どんな場面でもどんなダイエットにも適応できるカスタム化が進み、成長しています。かつての派手で甘いだけのイメージはから脱皮し、クオリティと創造性が融合したケーキに大人も子供も夢中です。
「アメリカのケーキは美味しくない」なんて、もう言わせません。
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