夏の賑やかさが去ると、イリノイでは強い風が木々の葉を次々と落とし、どこか物寂しい空気が漂い始めます。しかしそんなしんみりムードとは裏腹に、スーパーの棚にはこれから始まるハロウィンからサンクスギビング、そしてクリスマスへと続く怒涛のホリデーシーズンに向け、製菓キットやデコレーション用品が一気に賑わいを見せ始めます。
視覚的なインパクトで攻めるハロウィンと、食卓の豊かさが求められるサンクスギビング。「手間は最小限に、仕上がりは全力でポップに!」というアメリカらしい自由な発想には、肌寒い季節さえも賑やかに楽しみ尽くす前向きな情熱が詰まっています。
本格的な冬を迎える前に、家の中をあたたかい熱気で満たすホリデーの前哨戦。今回は、おうちのキッチンで、秋を目一杯楽しむための、製菓用アイテムをご紹介します。
暗闇に光る!インスタ映え満点の大人のハロウィン:FANCY SPRINKLES「GLITTER JELLY SHOT KIT」
まずご紹介するのは、トレンドに敏感な大人の間で支持を集めるブランド「FANCY SPRINKLES(ファンシースプリンクルズ)」のハロウィン仕様の体験型キットです。
アメリカの大人向けパーティーでは定番のアルコール入りゼリー「ゼリーショット」を手軽に作れるセットですが、そのアプローチが実にユニーク。緑色のゼリーに不気味な目玉というショッキングなビジュアルだけでも目を引きますが、さらに「ブラックライトを当てると暗闇で光る」という強烈な演出まで仕込まれています。

ちなみにこのキット自体にはアルコールは入っておらず、自分でウォッカやラムといったお酒を注ぎ込んでゼリーカクテルにするもよし、ジュースを使って子ども向けやノンアルコールゼリーとしても楽しむもよし、の柔軟性も持ち合わせています。FANCY SPRINKLESは他にも「EDIBLE GLITTER(食用ラメ)」などもあるのですがパッケージはほとんどコスメ!

お菓子作りといえば、「ハンドメイドの優しい時間」を想像しがちですが、FANCY SPRINKLESが目指すのはまったく異なります。まるでコスメやトレンド雑貨を選ぶかのような洗練されたデザイン性と、SNS映えを意識したアプローチ。今時の製菓スタイルがしっかりハロウィンでもいかされています。
ボトルキャップも中身も:Great Value「Sprinkle Mix」「Cookie Mix」シリーズ
続いては、ウォルマートのプライベートブランド「Great Value(グレートバリュー)」から登場しているトッピング用のスプリンクルシリーズです。

キュートなフィギュア付きキャップが真っ先に目を惹きますが、実は中身のスプリンクル自体もビジュアル重視で作られています。ただカラフルなだけでなく、墓石やおばけ、こうもりなどテーマに合わせたモチーフがブレンドされており、シンプルなカップケーキやアイスクリームにさっとかけるだけで一気にハロウィンらしい賑やかさが生まれます。
そしてボトル上部に飾られた立体フィギュアのキャップは、使い終わった後も捨てずに飾っておきたくなるコレクション心をくすぐります。製菓材料としての枠を超え、キッチンを彩る季節のインテリアとしても機能する、庶民派ブランドならではの遊び心が詰まったアイテムです。

Great Valueには他にもこんなちょっとリアルな?血走った目玉のクッキーミックスキットなどもあります。子どもには少しショッキング過ぎないかしら?と思うのですが、小さい頃からハロウィンのリアルなデコレーションに慣れていると、このくらいはユーモアのうちになるのかもしれません。
アメリカのパイ作りでは当たり前?パイの中身の缶詰:Libby's「100% PURE PUMPKIN」
こちらは、サンクスギビングの食卓に欠かせないパンプキンパイの相棒、私の住むイリノイ州シカゴ発祥の、100年以上の歴史を持つ「Libby's(リビーズ)」のかぼちゃの缶詰です。

アメリカにおいてサンクスギビングのパンプキンパイは、日本でいうお正月の雑煮のような絶対に外せない伝統食です。しかし、忙しい現代のアメリカ人が生の家庭用カボチャを買って蒸して潰すことはほとんどないようです。
「100% PURE PUMPKIN」とある通り、中身は砂糖もスパイスも一切入っていない純粋なカボチャペースト。甘みや味付けがされていないからこそ、各家庭で好みのスパイスや甘さを自由に調整でき、「わが家代々の伝統の味」を失敗なく再現できます。ゼロから作る手間を解消しつつ、手作りの温もりと伝統を守れる絶対的な安心感こそが、この缶詰が全米で愛され続ける理由です。
毒々しさも「楽しさ」に変換する:Pillsbury「Funfetti」ケーキミックスシリーズ
大手食品メーカー「Pillsbury(ピルズベリー)」とその製菓シリーズ「Funfetti(ファンフェッティ)」。この季節は大手として腕のふるいどころ!様々な製菓用商品で攻勢をかけています。長年親しまれてきたブランドキャラクター「ドゥボーイ」はここでも強い戦力となって、ハロウィン衣装に身を包み。商品を売り込んでおります。

ちょっと毒々しいグリーンとオレンジも、ハロウィンシーズンでは大歓迎のコントラスト。子どもたちと楽しみながら、遊び感覚でカップケーキ作りができそうですね。
名作コミックの世界観を「焼き上げる」コラボ商品:Duncan Hines×Peanuts「CHARLIE BROWN-IE」
最後にご紹介するのは、老舗製菓ブランド「Duncan Hines(ダンカンハインズ)」が、スヌーピーでお馴染みの「Peanuts(ピーナッツ)」とタッグを組んだホリデー限定のコラボレーションシリーズです。

実はアメリカでは、スヌーピーとハロウィンは切っても切れない深い関係にあります。1966年の初放映以来、半世紀以上にわたって親しまれているアニメ特番『かぼちゃ大王(It's the Great Pumpkin, Charlie Brown)』は、世代を超えて「秋の訪れ」を感じさせる国民的な風物詩として今なおアメリカ人の心に根付いています。
この商品の面白さは、単に箱にキャラクターを描いた「よくあるコラボ」にとどまらない点にあります。アニメタイトルそのままの「かぼちゃ大王(The Great Pumpkin)」のパンプキンケーキ、スヌーピーを思わせる白黒のクリンクルクッキー、そして何より秀逸なのが、チャーリー・ブラウンのトレードマークであるTシャツのジグザグ柄をそのままケーキの表面として焼き上げるブラウニーです。
作品の世界観が子どもの頃から染み付いているアメリカ人にとっては、コラボ商品としてスヌーピーのおまけがついているよりも、もっと楽しめる企画になっているのではないでしょうか。
まとめ
暗闇で光る演出を仕込んだり、容器そのものをフィギュアにしたり、アニメの世界観を再現したり。アメリカの製菓キットやデコレーション商品のバリエーションの豊富さを見ていると、今までのお菓子作りに対して持っていたイメージがどんどん広がっていきます。
失敗知らずでビジュアルの良いお菓子ができるという効率重視の考え方もあるのでしょうけれど、どちらかというと、作るプロセスやその場にいる全員でイベントの雰囲気を最高に盛り上げるというエンターテインメント精神が、パッケージの至るところに感じられます。
長く厳しい冬が訪れるイリノイの気候だからこそ、家の中の時間をめいっぱいポップに、スタートダッシュで秋を賑やかに仕掛け尽くす。そんなアメリカ人のたくましくて遊び心に満ちた冬支度が始まっているのかもしれません。
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