サンフランシスコ市と住人が本気で挑む、脱プラスチック——「マイストロー」の時代は来るのか(前編)
サンフランシスコの飲食店からプラスチック製品が消えました。今年7月に空港で販売禁止となったペットボトル(一回飲みきりボトル)に加え、今、市民と企業が挑んでいるのは、脱プラスチックストローです。8月に導入されたプラスチックストロー廃止法は、パッケージ企業を刺激し、新素材を使った商品開発が急速に進んでいます。
「マイストロー」時代はくるのでしょうか。サンフランシスコの現状をお伝え致します。
「脱プラスチック」の取り組みと、サンフランシスコ市民の生活
2002年に成立した「ファンタスティックスリー」と呼ばれる長期計画は、2020年までに完全な「ゴミゼロ」を目指しています。
この取り組みは、3つの分別ゴミの義務から始まりました。青、黒、緑のゴミ箱を各家庭、企業に支給し、それぞれの行き先で処理されます。青のリサイクルバケツは再生工場へ、黒のバケツはいわゆる「ゴミ」で埋め立て地へ、そして緑のバケツの生ゴミはコンポスト(堆肥)になります。
私達サンフランシスコの住民の多くは、自宅の庭で堆肥を作っているため、緑のバケツ(生ゴミ用)は殆ど使用しません。また、食品の買い物をしても無駄な包装がないので、1週間に捨てるゴミは小さなゴミ箱一杯分程度です。多くの市民はこのようなミニマルな生活を心地よく思っているのが実情です。
レジ袋廃止はもう15年ほど実施されているので、市民は出かける時には必ずエコバッグを持つ習慣が付き、レジ袋をもらわなくても生活に何の影響もないことを学んでいます。この習慣は急に変わったのではなく、ゆっくり時間をかけ、元々環境意識の高い住民に加え、興味のなかった市民も徐々に教育され、意識が芽生えていきました。マイボトルやマイバッグを持ち歩くのは、サンフランシスコ市民のプライドでもあります。
スーパーからプラスチックが消えた
スーパーでは、野菜は全てラップで包まれずに陳列されています。野菜を入れる袋も植物ベースのコンポスタブル(堆肥にできる)プラスチックに入れ替わっています。ほとんどの人はマイバッグに入れて持ち帰りますが、必要な人は紙袋を10セントで購入します。とはいえ買う人は殆どいませんが、このシステムはどのスーパーにも義務付けられています。
サンフランシスコにある健康志向系スーパー「Rainbow Grocery」では、バルク売りがメインです。小麦粉、コメ、豆、お茶、コーヒーからオリーブオイルやハンドクリームに至るまで、自分が用意した容器に詰めて帰ります。
一方、加工食品のパッケージメーカーは脱プラスチックの潮流を受け、カーボン包装紙にシールを貼るタイプが主流になっています。その為、シール部分にグラフィックデザインを活かし、ミニマルかつインパクトのあるパッケージを開発しています。「クラフト感」「商品ストーリー」がキーワードです。
「脱プラスチック」はこれからの商機になる
National Geographic の調査によれば、アメリカ国内のストローの消費は、1日で約5億本と言われています。プラスチックゴミが大量発生する場所は、かつてファストフードやデリでしたが、最近はここにも変化が起こっています。テイクアウト容器やフォークなどはリサイクルまたはコンポストに入れ替わり、ゴミが激減しました。しかしストローの入れ替えは、コストや使い勝手の面で困難を要したようです。
脱プラスチックストローのコストに頭を悩ませていた業界ですが、そもそもプラスチックのストローが安すぎたという考え方が「脱プラ進化」の後押しとなり、市場のドリンクの相場も$5〜$8程度となっています。
しかし最近、次々と新たな生分解性プラスチックの開発が進み、大量生産になれば段階的に値下がりに転じると予想されています。「脱プラ」ムーブメントは、これからの日本の新商品開発においても、商機の期待が高まっています。
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サンフランシスコ市と住人が本気で挑む、脱プラスチック——「マイストロー」の時代は来るのか(後編)
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