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ファベックス2022特集と海外で進むケミカルリサイクル

はじめに

「ファベックス2022」が4月13日~15日に東京ビッグサイトで開催される。これは日本食糧新聞社が主催する今年25年目を迎える、中食・外食向けの「業務用」専門展示会だ。

本展示会では、素材の専門知識と最先端の容器製造技術を融合した開発製品が展示されている。

お洒落なデザートを高級レストランだけでなく、外でも仲間と気軽に楽しめる容器

2005年創立のChobani (チョバーニ:トルコ語で羊飼いの意味。創業者はトルコ出身の米国人)は、ギリシャヨーグルトが大ヒットし、2016年にはあのダノンを抑えヨーグルト部門で全米トップシェアに躍り出た。Chobaniをコラボパートナーに迎えたのは、1917年創業のカリフォルニア州サリナスを拠点とするNaturipe Farmで、同社は全米に4カ所の自然農法のフレッシュベリー農園を所有している。

この2社が協力して、コンビニで高級パフェが気軽に買え、あるいは機内食のデザートとしてもサービスされている、ユニークなマルチコンポーネントのパフェカップを誕生させた。

この製品の動画を下のURLをクリックしてご覧になれます https://bit.ly/3LRIPwJ

新鮮なヨーグルトとベリーがそれぞれ独立した入れ子になってカップの中に収まり、ヘッドスペースにはピロー包装されたカリカリのグラノーラを置き、多色刷りのPETフィルムでカップをトップシールしている。米国でトップ水準の品質を誇る3種のそれぞれの具材が、食べる直前までフレッシュな状態にパックされているので、極上の味わいを楽しめる。

「私たちはこれまでのフルーツ入りヨーグルトとは一線を画すこの企画を、最高のパートナーと巡り合うまで長い間温めていました」とNaturipeのMarketing Innovation & Sustainability担当役員のJanis McIntosh氏は振り返る。

「Chobaniとの企画会議で、お互いの製品の良さを最大限に活かせるパッケージを生み出すことに合意し、機内食のスナックとして人気の高い110g入りのChobaniのPPカップをベースに、グラノーラとベリーを組み合わせることにしました。PPカップと円周サイズが同じで、より深い150g容量のPET容器を使用すれば、既存のカップシーラーラインで蓋材をヒートシールできます。

まず透明なAPETアウターカップの内側にフランジを成形し、そこに入れ子のPPインナーカップを置いて、ボトムスペースをつくってフレッシュベリーを充填することにしました。

最も苦労したのは、ベリーは種類によりサイズが異なるので、それらがうまく収まって保護できるスペースを創り出すことでした。またベリーの鮮度を保持する通気口を設けました。カップのヘッドスペースには、グラノーラを置きますが、ベリーが発する湿気や輸送中や店舗での温度差由来の凝縮から生じる湿気から、グラノーラを守るための包装として水蒸気バリア性のあるOPPのミニサイズのピロー袋を採用しました。

ラベルはPET容器の正面と裏面にフレキソ印刷のOPP感圧ラベルを使用しています。PET容器をリサイクルする洗浄工程で簡単にPETと分離することができる接着剤を使用しており、これはAPR(全米プラスチックリサイクル業者協会)のリサイクル認証を取得しています。

後の課題は、戸外でもフレッシュベリーヨーグルトパフェを楽しめるスプーンが必要でした。幸いなことに、グラノーラパウチとヨーグルトカップの間の狭いスペースに収まる薄い木製のスプーンを探し出すことができました」。

世界で進むケミカルリサイクルプラントの建設

世界では90か所以上のケミカルリサイクルプロジェクトが計画され、実証段階であるが欧米を中心に20カ所以上のプラントが稼働している。いずれも商業目的に利用されているのではなく、将来に向けケミカルリサイクル技術を深耕するものだという。

これを裏付けるように、欧州特許庁 (EPO)によれば出願された特許は欧州と米国企業のものが大部分を占めている。

PETGは化粧品メーカーで広く使用されているがリサイクルが困難。
写真提供:左/ L’Oreal, 右/ LVMH

以下に主なものを紹介する。

米国のEastmanは2022年1月、フランスでケミカルリサイクル関連設備に10億ドルを投資すると発表した。この設備では、リサイクルが困難なPETGの廃棄物を回収、解重合して再生PETGを生産する計画だ。これには、大手化粧品メーカーのLVMH Beauty, Estée Lauder, Clarins, P&G, L’Oréal や食品メーカーのDanoneなどの有力企業が、強い関心を示している。

またドイツに拠点を置くスチレンモノマーとその誘導品の世界的メーカーINEOS Styrolutionは昨年、英国のリサイクル設備のエンジニアリング企業Recycling Technologiesとの合弁事業を発表、2022年末までに欧州初のPSのケミカルリサイクルプラントの試運転を開始する予定だ。

オランダの調査会社RaboResearchは、2025年までに原油の代替原料を化学産業に供給するケミカルリサイクルプラントは、世界中で140か所に増えると予測する。

英国のPlastic Energyは、世界的な化学メーカーと連携してプラスチック廃棄物の熱分解プラントをグローバルに展開するプロジェクトを精力的に進めている。

2021年1月にSabicと、オランダのGeleenで廃プラ由来の再生油の量産プラント (年産2万トン)建設の契約を締結した。同地区で再生プラスチック事業を行っているRenewi社が廃プラを収集、Plastic Energyが特許を持つThermal Anaerobic Conversion(無酸素条件下の熱分解) 技術で生産された高純度の再生油を、Sabicのナフサクラッカーに投入、投入された原料の割合に応じて計算されたサーキュラーPEやPPが生産される。

Sabicの目的は、リサイクル不可能な使用済みプラスチック製品を原料にして、食品用途に使用できる良質なサーキュラーPE、PPの生産、販売だ。熱分解プラントはPlastic EnergyとSabicの折半出資の合弁事業で運営され、オランダ経済省のエネルギー補助金を得ている。既にスペインで稼働しているPlastic Energyの再生油(2系列で年産7千トン)を原料に、ポリオレフィン樹脂を生産、2019年初めからSabicがフィールドテストを進めている。

またフランスでは2021年7月にTotal Energies, Jindal Filmsとの提携を発表した。Total Energiesは、Plastic Energyと提携して、2023年にフランスのGrandpuitsのゼロ原油 (zéro crude)と称するプラントを稼働させる計画だ。

プラスチック廃棄物15,000トンの処理能力を有するTAC法生産される再生油をTotal Energiesに供給、ここで得られたプロピレンを原料にサーキュラーPPを生産する計画だ。同社は既に、前述のスペインのPlastic Energyの熱分解油プラントから供給された再生油でPPを生産しており、ISCC PLUS(国際持続可能性カーボン認証プラス:バイオ材料と化石由来廃棄物の再生材料の認証機関)から、化石由来のバージンPPと同じ品質と性能を持つサーキュラーPP (Certified Circular Polymers) として認証を得ている。

Totalは顧客であるJindal Filmsにこの再生PPを提供、Jindalは食品グレードの再生材を使用したBOPPとしてフィールドテストに着手した。Jindalはこのサーキュラー認証BOPPの特性評価、食品グレードとしての認証取得、更にはパートナーと共同で使用済み包材を回収し、OPPフィルムの水平リサイクルの実証試験を行っていく。

また米国テキサス州でも廃プラスチックを熱分解油に転換、フランスと同様Total Energiesに供給し、Totalは食品グレードのパッケージに使用できるサーキュラーポリマーを生産する。熱分解の生産能力は年産33,000トンで、2024年半ばまでに稼働する計画だ。この地区では、テキサス州有数の再生プラスチック業者Freepointエコシステムズと契約し、生産に必要な廃プラスチック量の安定調達を図る方針だ。

世界最大の肉包装フィルムのサプライヤー米Sealed Airは、2025年にまでに同社が必要とする包装用プラスチック原料の94%を、ケミカルリサイクル技術で生産された再生材料で賄う計画だ。同社の包装フィルムの主力原料はポリオレフィン樹脂で、食品包装用に使用可能な再生樹脂の安定調達を図るために、Plastic Energyと2020年8月に合弁契約を締結した。

グローバルにフィルム事業を展開するSealed AirにとってPlastic Energyはまさに格好のパートナーで、同社と提携している世界各地のポリオレフィンメーカーからサーキュラーPEを調達できる。

Sealed Airは2040年までに炭素排出量を実質ゼロにする誓約書をEllen MacArthur財団はじめ、複数の環境団体と合意、署名しており、2025年までに同社が生産する全てのパッケージをリサイクルまたはリユース可能にして、サーキュラリティを実現、かつ食品パッケージの再生材含有量を50%以上に高めることを目指している。

パッケージのバリューチェーンでのこうした取り組みは、現在世界各地で拡がりつつある。

英国小売り最大手のTescoは、買い物客が店内の回収ポイントに戻してきた大量の使用済みPEフィルムや軟包装材料を回収し、これをプラスチックの原料として再利用するためにPlastic Energyの熱分解プラントに戻して合成油を生産、SabicのPEプラントで生産されたマスバランス方式のサーキュラーPEを原料(最低含有量30%)に、Sealed Airは厚み25μのチーズ用ハイバリアフィルムを、乳業メーカーのBradburys Cheeseに供給、再生フィルムで真空パックされたチーズが、再びTescoの店頭に並ぶ水平リサイクルの実証試験がスタートした。

 

Tescoはケミカルリサイクル技術を活用して、食品包材のClosed Loopリサイクルのシステムづくりを目指す 
写真提供:Tesco

Plastic Energyは2025年までに欧米で再生ポリオレフィン樹脂30万トン以上に相当する廃プラ由来の合成油プラントを、世界各地の12か所で建設する計画で、上記の他にも、フランスではExxon Mobil、英国ではINEOS Olefins & Polymers Europeと合弁事業計画を進めている。

さいごに

実はケミカルリサイクル技術は、まだ欧米で正式にリサイクル材料と認められているわけではない。

熱分解、ガス化、および溶媒精製技術をケミカルリサイクルと定義し、こうした技術が進化することで、化石由来のバージン樹脂の生産を減らし、メカニカルリサイクルの足りない点を補完して、サーキュラーエコノミーの実現に貢献できる。しかし一方で、ケミカルリサイクルは、エネルギー消費量が大きく、工場で働く人たちの健康リスクもある。更に、ケミカルリサイクルはCO2排出量を増やし、プラスチックのReduceやReuseの努力にブレーキをかけると指摘する人たちもいる。

懸念されているネガティブ要因の解決策を、一つ一つ丁寧に示し、説明責任を果たしていくことがこれから重要になる。

 

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