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2020年後半にアメリカで注目されたパッケージ、総集編(3)

Photo:PACKAGING STRATEGIES公式サイトより(https://www.packagingstrategies.com/

アメリカの代表的パッケージング情報誌Packaging Strategies News誌(隔週発行、以下PS誌)に採り上げられた2020年下半期(7月~12月)の記事から、日本の読者に興味深いと思われるニュースをご紹介する。第3回は9月30日号から10月30日号を取り上げる。

新型コロナウイルスがパッケージング業界に与える影響:冷凍食品(PS誌:9月30日発行)

※取材:Kristen Kazarian(Packaging Strategies誌編集主幹)

1. 冷凍食品が脇役から家庭料理の主役に

コロナ禍で多くの人たちが家で食事をとるようになり、冷凍食品の売上が急増した。

冷凍食品はかつて健康に良くない標準以下の食事の代名詞であったが、今や家庭料理の献立に欠かせないものなった。新型コロナウイルスが消費者の嗜好を変えたことは明らかであり、冷凍食品はこの変化を知るうえで重要だ。

アメリカ冷凍食品研究所(AFFI)は、アメリカで新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、冷凍食品の需要が急増しているという調査結果を発表した。コロナ禍の中で、消費者の86%が冷凍食品を購入したという。冷凍食品の売上が増えている理由として以下のことが考えられる。

  1. 冷凍食品は日持ちする
  2. 食糧不足を懸念した消費者が、買いだめをしている
  3. 冷凍食品をストックすることで、消費者は買い物に出かける頻度を減らせる
  4. 冷凍食品は食事の準備が簡単だ
  5. 冷凍食品を利用すれば、準備も後片付けの時間も節約できる
  6. 消費者はコロナ禍の中で、冷凍食品は生の素材に比べ安全だと考えている

調査結果によれば、最も多く購入された冷凍食品は、野菜、牛肉・豚肉・鶏肉、ピザだという。また、初めて購入した冷凍食品は、牛肉・豚肉・鶏肉、副菜、果物、調理済み主菜であった。特に調理済み主菜の売上は2ケタの伸びを示した。

Photo:選択肢が豊富な冷凍調理済み食品(PS News 9/30号より)

2. 冷凍食品用に設計された宅配ボックス

ダイエットミールデリバリーの大手bistroMD社は、健康的に減量を目指す人たちのために特別に配慮されたおいしい冷凍ミールで人気があるが、コロナ禍で外出制限が続いており売上が急増している。

冷凍ミールは腐敗する心配がなく、準備も簡単で、食料品店に買い出しに出かける必要もない。栄養学の専門医師が考案した料理メニューは、朝食、昼食、夕食に様々なオプションが用意され、購入者は1週間のフルメニューや週末を除く週5日のプログラムが選択できる。女性、男性用にデザインされた特別メニューもある。

宅配用のサブスクリプションボックスには、100%リサイクルできる再生古紙が使用され、最新の断熱ライナー材はドライアイスと一緒に梱包すれば料理を48~72時間冷凍状態に保つよう設計されている。

Photo:ミールキットは古紙段ボールとエコ断熱ライナー材の冷凍用ケースで宅配される(PS News 9/30号より)

3. 冷凍食品のためのサステナブル包装材料

カリフォルニア州を拠点にする紙加工品メーカーCharta Global社は、食品向けの持続可能、堆肥化可能、リサイクル可能な板紙製品APP Foopak BioNaturaのラインナップを拡充し、防水層やシール層が両面コーティングされた紙カップ用原紙を発売した。

シェイク、ヨーグルト、スムージー、コールドドリンクなどのシングルサーブ・フローズン飲料だけでなく、調理済み冷凍食品向けの包装材もターゲットにしている。

Photo:シングルサーブの冷凍菓子向けにデザインされたCharta Globalの両面水性コーティングの紙カップ(PS News 9/30号より)

新製品のC2Sカップ原紙は、従来のポリエチレンに代えて古紙リサイクルができるように水性コーティング剤が使われている。コンポスト性はISEGA(ドイツの試験認証機関)でEN 13432の認証を取得し、産業用コンポスト施設であれば 12 週間以内に堆肥化する。

またリサイクルのEU規格であるEN 13430の認証も取得している。Foopakシリーズの板紙製品はFDA基準に適合し、液体食品用に耐水強度や紙端面の耐水処理加工がされている。耐久性の高い表面処理により、複雑なグラフィックスやブランドデザインにも対応可能だ。

この製品は世界最大の森林認証システムの一つPEFC(Program for the Endorsement of Forest Certification Schemes)のCoC認証(林産物の加工・流通管理)を取得している。

イギリスの包装メーカーSIRANE社は、リサイクル可能なPEパウチやフィルム製品RePEatを発売した。RePEatはリクローザブルジッパーも含め、単一のPEで作られているので、PE製品のリサイクルストリームがあるところではリサイクルが可能だ。

Photo:冷凍シーフードに採用されたSiraneのリサイクル可能なPEモノマテリアルパウチ(PS News 9/30号より)

4. 冷凍食品の色目や風味を保つ包装技術

PS News 11/16号では、日本の凸版印刷が冷凍保存される畜肉や水産加工品など1次産品の品質を長期にわたり維持できる環境配慮型パッケージを開発したとの記事が掲載されている。

Photo:環境特性とガスバリア性に優れる新パッケージは、冷凍食材の品質を長期にわたって維持する(凸版プレスリリース:https://www.toppan.co.jp/news/2020/11/newsrelease_201102.html より)

凸版独自の蒸着加工技術とコーティング技術をベースに開発された「GL BARRIER」を使用したパッケージは、畜肉や水産加工品の冷凍保管時に発生する酸化による商品の変色や風味の劣化を、従来よりも長期にわたり抑制できることが大学の研究機関と共同で実施した試験で確認された。

これらの機能は、冷凍流通に適したインフラストラクチャがない地域でも食品の品質を長期にわたり維持できるので、食品ロスと廃棄物を削減し、流通範囲の拡大を容易にしてくれる。

「GL BARRIER」を組み込んだパッケージは環境性能も向上した。モノマテリアル構造のパッケージが使用できるので、温室効果ガス排出削減にも寄与し、リサイクル性も改良される。

包装する食品によってはこのパッケージを使用することで、従来超冷凍(F4級:-50℃以下)環境で保存されていた冷凍温度域を-18℃に緩和することが可能となり、消費電力を抑制し、冷凍保管コストを従来より約60%削減することができるという。

凸版印刷が2016年から大学と共同で続けてきたテストでは、従来の包装材料と比較して、GLバリアフィルムを組み込んだパッケージは、畜肉や水産加工品などの1次産品の冷凍保存で、食材の品質を損なわず、長期間維持できることが確認されているという。

魅力的な高機能スクイズパウチ

※取材:Kristin Joker(Packaging Strategies News誌編集長)

アメリカの食品大手Hormel Foods社は、主力製品で日本でも人気のSKIPPYピーナッツバターの包装をリニューアルして、便利なスクイズパウチを採用した。5食分のピーナッツバター170gをパックした小容量のスクイズ式異形スパウトパウチだ。

Photo:Hormel FoodsのSKIPPYピーナッツバターのスクイズパウチ(PS News 9/30号より)

野外で使用する時もスプーン不要で、ピンポイントにパンやクラッカー、野菜スティックなどにトッピングできるので衛生的で便利だ。従来の硬質容器と違って、底に残ったピーナッツバターをスプーンやナイフで苦労してかき出すこともなく、片手で最後の一絞りまで中身を取り出せる。

スクイズパウチを供給するのはオハイオ州を拠点とするアメリカを代表する軟包装メーカーProAmpac社で、パッケージサイズを可能な限り小さくしながら適切なヘッドスペースを設けて充填効率の良いデザインを実現した。ガスバリア性の高い透明蒸着PETフィルムとPEフィルムをドライラミネーとしたフィルム構造で中身を目で確認できる。

パウチの湾曲したデザインは人間工学に基づいて設計され子供の手にもフィットする。クロージャーは専門メーカーHoffer Plastics社(本社:イリノイ州)の協力を仰ぎ、特注のユニークな改ざん防止機能を備えたTrust-T-Lokキャップとスパウトが付いている。

動画:1950年代の懐かしいSKIPPYピーナッツバターのTVコマーシャル

新型コロナウイルスがパッケージング業界に与える影響:包装の役割(PS誌:10月30日発行)

PACK EXPO 2020のバーチャル開催を前にして、PMMIの副理事長で産業サービス部門担当のTom Egan氏が特別寄稿を寄せた。(以下は編集したものです)

この不確実性の時代に人々は、愛する人を訪ね元気づけ、仕事の取り組み方に工夫を重ね、生活のさまざまなシーンで新しい日常を実践している。新型コロナウイルスのパンデミックは人々の購買行動に大きな影響を与えた。

新型コロナウイルスはまだ解明されていない性質も多く、消費者が購入する製品を受け取る場所や方法についても警戒を怠らないよう注意を促している。消費者は、家に持ち込む商品が安全であり、ウイルスが広がるリスクがないことを確信したい。

パンデミックの中で包装は長期にわたり製品の安全性を確保し、消費者を守る機能を提供することを期待するようになった。メーカーは消費者の不安を安心に変え、製品への信頼を維持することに万全を期している。

1. 包装の役割:製品の安心と安全を届ける

製品と消費者の両方を守るものとして、包装は常に製品の安全性を維持する重要な役割を果たしてきた。

包装形態に関係なく、包装にはコアとなる機能がある。それは使用する地点まで製品を保護することだ。パンデミックでは、消費者がどこで製品を購入し、どのように使用するか、消費者行動を理解することが更に重要になっている。

包装は細菌やウイルスから消費者を守る役割を担っている。例えば、消毒・抗菌ワイプや手指消毒剤は、パンデミックで大きな需要を生み出した。家庭では大きなポンプ付きボトルの手指消毒剤を購入し、玄関ドアの近くやキッチンに置いて常に使用することが習慣になった。

外出先や食品ストアへの買い出し、あるいは宅配業者が届け物の配達や回収で訪れた際には、フリップトップキャップ付きの小さなボトルの消毒液はウイルス感染予防に効果的だ。これらの包装形態は同じ素材を使っていても異なる機能を果たすので、これからも両方とも一つの家庭で使われ続けることが考えられる。

食品や飲料の場合、消費者の懸念は製品の使用方法より、むしろ購入方法にあるだろう。

パンは、消費者行動の変化の代表的な例だ。パンデミックの前、消費者は食品ストアに入り、パン売り場に向かい、トングを使って透明なディスプレイケースから新鮮なクロワッサンを取り出し、防水・防油紙で包んでカートに入れていた。今店舗では、消費者の安全を考慮して個包装されたクロワッサンを販売し、感染防止を優先するようになった。

コロナ禍による新しい日常に対応するため、消費者は人との接触を制限し、ストアへの買い出し頻度を減らし、食品を始め生活必需品の備蓄を選択するようになった。この傾向は、シェルフライフを向上させる包装がこれまで以上に求められることを示している。

包装は製品の損傷を防ぎ、食品を腐敗させる酸素やバクテリアの侵入を防ぐ役割を果たす。青果物、食肉、乳製品などの傷みやすい食料品の場合、食材の供給者は、ガス置換包装(MAP)や高圧処理加工(HPP)などの高度な包装技術を駆使してシェルフライフを延ばすことができる。これらの方法はいずれもパッケージ内の酸素と湿度レベルを安定的に維持し、微生物の増殖を防ぎ、食材のシェルフライフを延ばしてくれる。

Photo:出典:PS News 10/30号

2. 包装の役割:情報提供で信頼を得る

新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、包装は保護機能だけでなく、コミュニケーション能力によっても製品に対する信頼を高めていくことが求められている。ウイルスや汚染物質を始め、身のまわりの感染リスクを回避するため、包装はその製品の由来や製品を安全に使用する方法を消費者に伝える役割を果たすことも期待されている。

このことを念頭に置けば、メーカーは調達方法やサプライチェーンに関する情報を包装デザインの中心に据えることで、消費者の信頼を獲得できるかもしれない。

さらに、食品由来の疾病やその他のリスクから消費者を守るために、最新のラベリング技術や印刷技術を通して、製品の使用方法、密封方法、保存方法など、安全にかかわる情報を伝える新たな包装機能を生み出すことも必要だ。包装が商品特性を効果的に、的確に伝えていることは、実店舗の場合でも、ネット通販でも購入意思決定の大きな要素になるだろう。

ラベル業界でもリサイクルが活発になっている。

フィンランドの世界的紙パッケージメーカーUPM社は、使用済みPET容器の再生工程で簡単に分離できるラベルRaflatac RW85Cウォシュオフ・ラベルを、新たに同社のClosed-Loopソリューションとして米州市場で発売する(PS News 9/17号より)。

PETボトルや容器は軽量かつ低コストで製造できるため需要が多い。あらゆるプラスチック容器の中でリサイクル率も最も高い。にもかかわらずアメリカでは、リサイクル材として回収される量は半分以下で、しかもその大半は飲料ボトルや食品容器に戻す品質レベルにはなく、ダウンサイクルされている。原因の一つは再生工程でラベルを分離するのが難しく、良質なPET樹脂が確保できないからだ。

UPMのRW85Cウォッシュオフラベル(PP粘着ラベル)は、粘着剤の配合が改良されPETボトルや容器の再生工程で簡単に分離でき、PPとPETの比重差で分別することが容易になった。より透明性が高い良質のrPET樹脂を待ち望む業界にとっては朗報だ。

回収されたPPラベルの再生材は、プラスチックリサイクル協会(APR)が運営する"Critical Guidance"テストの要件を満たしていると高い評価を受け、透明、白色、アルミ蒸着ラベルの支持体として再利用される。同社のRaflatacラベルの再生材使用比率は最大90%まで高まり、Label-to-Labelソリューションの市場ニーズに応えている。

Photo:ウォッシュオフラベルの再生材料を最大90%使用したUPM Raflatacラベル(PS News 9/17号より)

UPM RaflatacのLabel-to-Labelソリューションはこれだけでない。もう一つの新しい技術は、古紙を使用したラベル業界初の紙ラベルだ。ラベルの支持体にPCW (Post-Consumer Waste)が最大30%添加されている。UPMのラベル原紙の新製造ラインは、PCWを支持体の材料に使用して、高品質の半光沢ラベルとして広範なラベル用途に展開している。

Photo:PCW (Post-Consumer Waste)を30%添加した半光沢古紙ラベル(出典:UPM RaflatacのHP)

使用済みラベルは、関係会社のUPM Raflatacサービスや他の業界団体の活動を通して回収される。再生工程では、ラベルからシリコーン塗布層が分離され、PCWに戻され、UPM が契約している古紙サプライヤーにより、新しい紙ラベルの原紙に再生されている。

(森 泰正記)

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