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リサイクルできない紙カップの革新的リサイクル技術

顧客の体験までデザインすることで成長を続ける「BORIS & HORTON」

こちらの記事をプロの目線で深掘りしたプレミアムレポートです! 

はじめに

伊藤レポートで紹介されている昨年2月ニューヨークに誕生したBoris & Hortonというカフェは、「ドッグフレンドリー、エコフレンドリー」をコンセプトにして、コーヒー用の紙カップもコストは高くなるがリサイクラブルなカップを使用している。家庭ごみのシングルストリーム回収(缶、ガラスびん、PETボトル、段ボール、プラスチックパッケージなどの資源ゴミを一緒に混合回収して、廃棄物のソーティングセンターで分別するリサイクル手法)が主流の米国で、来店する客に分別回収の意義を啓発、啓蒙しているユニークな店だ。

紙カップはリサイクルできない

読者の中には紙カップはリサイクルできると思われている方も多くおられるだろうが、世界のほとんどの国で、紙カップは埋め立てか焼却処理されている。米国では毎年500億個以上の紙カップが埋め立て廃棄されているという。

2015年にカナダのコーヒーチェーン最大手Tim Hortonが紙カップをリサイクルしますと謳いながら、実は埋め立て廃棄していたというカナダCBCのスクープがあった。CBCのインタビューを受けた再生業者は、ラミネート加工紙は紙/PEの分離には特殊な設備と技術が必要で、経済的に成り立たないと答えている。

昨年海洋プラスチック問題が大きく採り上げられ、使い捨てのプラスチックストローは使用を止めるか、リサイクルやコンポスト可能な材料に切り替える外食チェーンが増えてきたが、次は使い捨てのプラスチックカップも同じ方向に向かうと思われる。この受け皿として期待されているのが紙カップだ。しかし前述したように紙カップはシール層にPEやワックスがコーティングされておりリサイクルが困難で、実際には埋め立て廃棄か焼却処分されている。

この現状を打開する画期的な技術を米国のベンチャー企業が開発した。紙カップを既存の再生パルプ工場で他の古紙と一緒に再生できるのだ。

米国のベンチャー企業が開発した「reCUP」

この技術を開発したのは2009年にロスアンゼルス近郊に設立されたSmart Planet Technologies社だ。炭酸カルシウムとPEやPPを配合したコンパウンド材料(プラスチック成分は用途により49%~60%配合される)が薄膜ラミネートされた紙カップは、再生パルプ工程の苛性ソーダ溶液にミクロに分散、パルパーに沈殿するため、不純物をスクリーニングする工程で目詰まりを起こすことなく、繊維成分だけが抽出され純度の高い古紙に再生できるという。

同社はこのエンジニアリング技術を特許化し、コンパウンド材料を「Earth Coating」、この技術と材料で作られた紙カップを「reCUP」(図1右)と名付け、製紙会社、ラミネート加工紙メーカー、紙カップメーカーにライセンスしている。既に世界各地の認証機関で「reCUP」の特性や食品衛生性、リサイクル性の認証を受け、環境規制の厳しい英国・アイルランドの外食チェーンで2017年12月にコマーシャル採用が開始された。紙カップを殆ど埋め立て廃棄している米国でも、本格採用が近いと期待されている。

写真:Boris & Hortonカフェで提供されているリサイクル可能な紙カップ:客は飲み終わったカップの紙(外側)と内側のプラスチック容器を剥がして分別回収。

写真:米Smart Planet社の「reCUP」技術の紙カップ:使用済カップを回収し、再生パルプ工場で古紙とプラスチックに分離、再生する。

化石材料を使わない紙カップのライナー材としては植物由来のPLA樹脂が開発されているがコストが高く、水性コーティング剤はホット飲料には使えない。しかし炭酸カルシウムとPEのコンパウンドであるEarth Coatingはこういった欠点をなくし、かつ低コストだ。有限な化石材料の消費を減らすだけでなく、仮に全米の紙カップを全てリサイクルできれば年間70万トンの古紙が市場に再出荷提供され、ネット通販などに急速に需要が増えている段ボールケースや紙器にリサイクルできるという。

Earth Coatingはトイレットペーパーのように1回限りのワントリップ・リサイクルではなく、段ボールケースや紙トレイなどにリサイクルできると同社は説明している。近い将来紙カップ以外の他のラミネート加工紙の用途(紙トレイ、紙器、紙バッグなど)にも拡大できると自信を深めている。

写真:今後紙器、紙パウチ、持ち帰り容器など防湿、耐油、シール性が求められる用途への展開が期待される。

日本のリサイクル技術

ラミネート加工紙の代表的用途に牛乳パックがあるが、日本は世界で唯一牛乳パックをリサイクルしている。市民が形成したリサイクルネットワークで世界に誇るべきシステムだ。ただ回収率は産業損紙や古紙を含めても50%以下で10万トン程度に留まっており、ラミネート加工紙の再生工程を有する古紙工場は全国で8カ所しかない。またコストが高いため、古紙の用途もトイレットペーパーやティッシュに留まっている。前述のように一般の古紙工場でもラミネート加工紙の受け入れができて、コスト削減ができれば、回収率も高まるであろうし、二次用途の拡がりも期待できる。

もう一つ日本の優れたリサイクル技術として、廃棄物の固形燃料RPFがある。JIS規格ではRPFを”Refuse Paper/Plastic Fuel”と表記しているがこれでは海外の人はすぐにはピンとこないだろう。最近環境省は、「R」を”Recycled”に変えて再生固形燃料としての認知度を高めるべく、ベトナムで支援事業を展開している。今年大阪で開催されるG20サミットやラグビーのワールドカップでも、日本の誇る環境技術として大いに発信して欲しい。

廃棄物を原料にする固形燃料RPFとは

製紙や製鉄、セメントなどの生産活動には大型のボイラー設備が欠かせない。そこでは日々大量の化石燃料(石炭、コークス、重油)が消費されている。地球温暖化対策が求められる中、注目を集めている新エネルギーがRPFなのだ。RPFは、古紙のうちマテリアル・リサイクルが困難なプラスチックがラミネートされた加工紙や廃プラスチックなどを原料にした固形燃料だ。同じ発熱量で換算した場合、石炭と比べてCO2の排出量が2/3、価格も割安、ほぼ燃焼するので灰の発生も石炭に比べ半分以下と多くの長所がある。

RPFの製造法は、余分なエネルギーや化学的な添加剤を使わず、ラミネート加工紙を破砕機で細かく切断し、それを成形機にかけて円筒形の固形燃料にする(図4、図5)。バラバラの紙片が固形燃料になる理由は、紙にラミネートされたプラスチックが、成形機内の摩擦熱や圧縮熱によって溶けて、バインダーになるからだ。

写真:リサイクル固形燃料RPF

写真:RPFを形成する成形機内のダイス

更なる技術革新:多様な廃棄物を原料に使う

ところで原料を廃棄ラミネート加工紙に限ってしまえば、RPFの供給能力が限定されるため、生ゴミを除く一般可燃廃棄物にまで対象を拡げたRPF開発の挑戦が始まった。1998年のことだ。

一般可燃廃棄物ゴミを対象にすると、破砕機の見直しも不可欠であり、廃プラに混じっているPVCの脱塩素処理の開発も必要となる。PVCが不完全燃焼すると、発ガン性物質であるダイオキシンが発生するおそれがあり、高温で燃焼させるとエネルギー多消費型になるだけでなく、装置の腐食の原因となる塩素ガスを発生する。最終的には経済性、安全性、温暖化ガス排出抑制を考慮してPVCを選別する光学センサーを導入してこれを排除し、プラスチックの種類や混ぜる古紙の比率をコントロールして石炭に相当する6,000kcal/kgと、コークスに相当する8,000kcal/kgの2種類の発熱量を持つRPF製造装置が完成した。

2002年に僅か9.3万トンであったRPFの生産能力は、2017年現在135万トンに達した。今年から一般廃棄物焼却場でも化石燃料ではなくRPFを代替燃料として使用することが環境省から承認された。また廃棄物由来のエネルギー利用を促進し、低炭素社会に向けた取組みの一環として、バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制)の適用除外を受け、JIS認証のRPFの海外輸出も可能になった。また工業用燃料として更に普及していくために、化石燃料で最も需要が大きい重油代替が可能な新再生燃料の開発も視野に入っている。

写真:RPFの製造プラント

さいごに

欧州を中心に声高に叫ばれているマテリアル・リサイクルは理念には賛同するが、あまりに理想主義的で、前述のTim Hortonの話ではないが、現実には困難な点が多々ある。

特にアジアを中心に急激に増えている廃プラスチックの海洋流出を削減するには、ここに採り上げたリサイクル固形燃料や廃棄物発電、熱還元への利活用も含め、もっと視野を広げたリサイクルの取組みを行わないと問題解決は不可能だ。欧州主導ではないアジア型の実効性のある廃プラ削減、リサイクルのシステムが求められる。こうした背景から日本政府も環境省が中心となって、ベトナムで固形燃料の実験プラントを建設して支援を行っている。こうした日本発の廃棄物削減技術が更に拡がることを期待している。

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