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日本の「ヨーグルト」のパッケージ。売れるパッケージ表現のポイントは。


 
ロンドンの愛される朝ごはん「ヨーグルト」の、パッケージ事情。
 

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ロンドンの愛される朝ごはん「ヨーグルト」の、パッケージ事情。

はじめに

イギリスで朝食に欠かせない「ヨーグルト」は900もの商品が販売されているほどの盛況ぶりであると伊藤史子レポートにあります。その中で注目されるパッケージについて見どころが紹介されています。日本でも安定的に市場が成長している「ヨーグルト」商品ですが、成功している商品が目に付く一方で苦戦を強いられている商品も見られます。各社とも製品自体の機能や価値は高いもの揃いですが、そのパッケージに明暗を決める秘密が潜んでいそうです。

イギリスで多く販売されている商品として紹介されているのが「Yeo Valley」オーガニックのヨーグルト。オーガニック、ナチュラル、砂糖不使用の健康感と、容器仕様、容器アフター利用啓蒙の環境配慮、そしてグラフィックデザインにおいては周囲の商品群の全体色彩トーンを意識したと思われる統一ブランドマーク、配色管理による優位差別化を図っていることが人気の要因として紹介されています。

写真:パケトラライター伊藤さんのレポートより、Yeo Valleyのヨーグルトパッケージ。

また、「プロテイン ヨーグルト」なども今後の注目株か、飲むヨーグルトで抽出口付きパウチの商品が報告されています。日本国内のヨーグルト市場とパッケージ状況はどうなっているでしょう。

日本国内のヨーグルト市場。健康志向の影響は?

ヨーグルト市場を概観すると、17年度はヨーグルト全体(乳酸菌飲料除く)約4000億円(メーカー出荷ベース)で、うちプレーンヨーグルトは約1000億円。プレーン市場は、ヨーグルトトップの明治の「明治ブルガリア」、森永乳業の「ビヒダス」、雪印メグミルクの「ナチュレ恵」の3大ブランドで8割のシェアを占めています。(食品産業新聞ニュースWEB  2018年9月20日付)

最近まで市場拡大をリードしてきた「明治プロビオヨーグルト」など機能性ヨーグルトはマスコミ露出の減少などから一段落し、現在はプレーンヨーグルトが復調傾向にあるという。トピックスとしては、各社注力をする「ギリシャヨーグルト」カテゴリーが健闘しています。

日本のヨーグルト市場の消費基盤には、日本人の健康意識、機能性嗜好がありますが、同嗜好のイギリスでヨーグルト商品へのネガティヴ健康情報(多量の砂糖が含まれるとする研究発表)が流布し消費に変化をもたらしつつあるとのこと。日本では元来砂糖に対しても敏感であり認識があることから同様のニュースが来ても大きな動揺はないのではないでしょうか。

ちなみに日本の健康志向食品は2018、2019年の市場規模は拡大予測です。2018年8月~10月の富士経済の調査では健康志向食品(明らか食品・ドリンク類)市場は、前年比2.0%増の1兆4,260億円。中でも「タンパク質・アミノ酸補給市場」は、2年連続二桁増。従って「プロテイン ヨーグルト」の可能性は高いかもしれません。

健康志向食品はライトユーザーを中心に特定保健用食品からより低価格な機能性表示食品へ需要が移行しているとのことであるが、ヨーグルトにおいてもコストパフォーマンスを意識して一般プレーンヨーグルトの機能性が見直され回帰しているのではないかと思われます。

そのヨーグルト市場は規模が大きく、参入メーカーも多くしのぎを削ってきたことからパッケージデザインを知るに色々ヒントになる要素があります。

明治ブルガリアヨーグルトのパッケージ

写真:ヨーグルト市場を先導してきた「ブルガリアヨーグルト」のパッケージ。

ヨーグルトの代表商品といえば「明治ブルガリア ヨーグルト」。大阪万博の翌年1971年に原初商品が発売されて以来、ロングセラーとして長年ヨーグルト市場を先導してきました。この商品のデザインについてはこれまでも多くが語られてきました。

その中で筆者が最も大事な出来事と考えるのが1981年の牛乳スタイルの紙パックから角丸の四角型容器への変更です。当時は冷蔵、冷凍商品ではアイスを始めとし丸型容器が全てであった訳ですが、新鮮な視覚効果をもって角形容器が登場しました。何度も開封し、すくい取るのに適した広い間口と角丸構造。清潔感のある印象を与えるプラキャップは実は高級感にも寄与します。容器としての機能的価値と情緒的価値を共に消費者に与えてくれる優れたものです。

同種売場の競合商品との決定的差別化で店頭存在力が高まりました。角形は視覚訴求面が広く、店頭で有利に働きます。そこを生かしてグラフィックにおいては巧妙な色彩戦略があります。乳製品であり真面目で清潔感を訴える白と青のコンビからはブランドの意志を感じ取れます。それはまた売れた結果としてヨーグルトカテゴリー全体の象徴色になりました。

グラフィックは今日に至るまで度々市場環境を見据えながらロゴと基本色(青)の根幹を押さえつつ時代感覚を捉えたリニューアルを実施されてきており、リニューアル見本といっても良いと思います。現在の商品を店頭で見てください。冷蔵ショーケース最下段棚のゴールデンスペースから目に飛び込んでくるトップキャップの青の商品群。売場を知った実に有効なデザインが使われています。(参考:明治ブルガリアヨーグルト倶楽部)

写真:ヨーグルト売り場の様子。最下段棚のゴールデンスペースには、青色のパッケージがずらりと並んでいる。

「明治ブルガリア ヨーグルト」はブランドの育成においても基本的な手法を取っています。それは常に新たな価値の情報発信を行ってきていることです。正統お墨付き認証、新容器採用、特保認証、食べ方提案、生活者ニーズ変化に合わせた品質メニューや容量対応などが成功を支えているでしょう。

売場での商品の視覚的差別化は非常に大事です。「明治ブルガリア ヨーグルト」の競合として「森永ビヒダス」「恵」がありますが、「恵」はネーミング差別化を考慮して漢字を用いています。

ネーミングやデザインの差別化で成功へ

ネーミングやデザインの差別化でこれまで成功したヨーグルト商品をいくつか取り上げてみましょう。

かなり前になりますが、グリコ「朝食りんごヨーグルト」(1997年)がヒットしました。ネーミングが大きく寄与している例です。“朝食”というシーン設定に“りんご”というシズル喚起の言葉を組み合わせた点が優れています。朝食として限定してもヨーグルト食機会の大ゾーンですのでリスクはありません。“朝食”には隠喩として健康がイメージされます。

同じくシーンで成功した商品に日本ルナ「コバラ解消 夜中のヨーグルト」(2007年)がありました。こちらも少なからず需要のある夜の使用を指定していますが、どちらかというと逆張り的に目を引きつつ“コバラ解消”で潜在欲求に訴えていると言えます。様々な商品カテゴリーでこのシーンネーミングは効果を発揮しています。

同じく日本ルナの「ル・コルドン・ブルー クランチヨーグルト」(2001年)はパッケージルックスで売れたと思われます。クランチ入り透明カップを上にセットしたトップカップスタイルです。同じようなカップが並ぶ売場の中で視覚的に大きく差別化され存在を主張しました。そして安易なオマケ付きに見せないように、ブランド「ル・コルドン・ブルー」を使用する戦略が成功要因と思われます。

写真:明治プロビオヨーグルト「R-1」のパッケージデザイン。

近年の成功商品である明治の「LG21」「R-1」は共に記号型ネーミングです。シンプルですので目に付きやすく、記憶されやすいという利点があります。ただしこれは製品内容、コンセプトを伝えることができないため、必ずマスでの告知広告が相当量必要となります。通常はそれ程予算もないため、こうしたネーミングは少ないものです。

「R-1」も発売後にNHKの健康番組で取り上げられてブレイクしたという経緯が、それを物語っています。「R-1」はその機能性を象徴する元気活力色の赤一色で打ち出したデザインが寒色系の売場において異彩を放ったことがヒットの促進力であったことはお分かりだと思います。

産地や場所で消費者にイメージを連想させる

中堅で売上を伸ばしている商品にフジッコ「カスピ海ヨーグルト」があります。今度は産地場所ネーミングです。消費者が何となく知るヨーグルト名産地方に近いイメージの場所です。もちろん製品本質に関わる地名ですが、「カスピ海」に謎?めいた成分価値を感じ取ると言って良いのではないでしょうか。デザインは他の商品群と差別化される縦書きロゴを採用していることも目を止めさせます。

そして今、各社が注力するギリシャヨーグルトのデザインについても気をつけて見てみましょう。主な商品として森永「パルテノ」、明治「THE GREEK」があります。現在は森永商品が売り上げ優勢です。

写真:森永「パルテノ」のパッケージデザイン。

「パルテノ」のネーミングは神殿を連想させて印象を作り、記憶に残させます。「3倍」訴求もベタではありますが、わかりやすく価値を上げています。もし課題があるとすれば、徐々に認知が広まりつつある「ギリシャヨーグルト」を明らかに読めるようにするとさらに効果的なデザインになるのではないでしょうか。

写真:明治「THE GREEK」のパッケージデザイン。

一方、明治の「THE GREEK」は後発として差別化を意図されたであろう英文ロゴです。このロゴですが、日本人の多くは英文には弱く、認知するのに頭で和文に置き換えるツークッションがいります。その分不利になってはいないでしょうか。こちらも「ギリシャ」が明確にわかればもっと良いと思われます。

売り上げ不振となるパッケージとは

一方、発売したものの売り上げ不振となっている商品もあります。ヨーグルトにおいて機能性カテゴリーはひとつの売り方ですが、その商品が訴える独自の機能性自体の需要規模が大きくないことや、パッケージデザインの表現コンセプトの狙い違いで売行き不振なものも散見されます。

ある商品では、新たな体に良い機能性成分を備えているものの、そのネーミングでは何の特徴があるのか不明なものがあります。もちろん広告媒体を多量に投入しての告知訴求があれば、一定の認知を得られますが、それほど予算が使えず失速している場合がほとんどです。

また、機能性の訴求点が多い難しいなど、理解に時間がかかり一瞬でわからない。読むことが面倒くさくなり、次の商品に目が移ってしまう。あるいは他の有力な商品と同じ機能性で、それを買わなければならない明確な差別化理由がないなどが原因として考えられます。

Yeo Valleyのパッケージに施された工夫

ここまでヨーグルトのパッケージ表現の留意点を見てきましたが、最後に冒頭に挙げたイギリスの「Yeo Valley」の容器とデザインを見てみましょう。

パッケージ仕様はプラスチックカップに紙を巻いた複合容器で、簡単に分離廃棄できる形です。日本のヨーグルト商品にもプラカップに紙巻きの商品が多くありますが、分離はできないものがほとんどです。他分野では多層プラスチックシート(バリア性保持)に紙巻きした容器もあります。容器のバリア性能は様々ですが過去にレトルトスープ、パスタソース、チョコレート菓子などがありました。今ならコンビニで売られている冷蔵のチキン惣菜カップ商品(ファミリーマート「お母さん食堂」)が見られます。また、発泡ポリスチレンなどのカップに紙巻きされたカップ麺も多く見られます。

写真:パケトラライター伊藤さんのレポートより「Yeo Valley」のヨーグルトパッケージ。

デザインについてはぜひ参考にしたいポイントがひとつあります。それはカップに巻かれた紙のデザイン部分です。レポートにありますように分離の切り取り部分にジッパーのイラストが描かれていますが、具象的な絵ですので目に入りやすく、“何?”というキャッチ性があります。

写真:パケトラライター伊藤さんのレポートより「Yeo Valley」のヨーグルトパッケージ。

その紙裏面には見たくなるイラスト表現で容器のエコ再利用を案内しています。消費行動の一連の中にアクションを誘発する仕掛けで、経験価値を創出する。ブランド記憶が強化されるデザインと言え、有効な考え方であると思います。

さいごに

製品機能性は優れていてもパッケージの表現、デザインで売行きは左右されます。ヨーグルトのパッケージは今後どうなっていくでしょう。健康訴求と環境配慮はもちろんのこととして、ターゲット、用途シーンの新たなくくり方とそれに対応する新たなパッケージ開発が期待されるのではないでしょうか。

(こちらの記事の文章・画像等の無断転載はご遠慮ください。)

[参考]
食品産業新聞ニュースWEB (2018年9月20日付)
https://www.ssnp.co.jp/news/milk/2018/10/2018-1003-1634-14.html

明治ブルガリアヨーグルト倶楽部
https://www.meijibulgariayogurt.com/about/yogurtbook.html

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