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ニューヨークで急増する「ミールデリバリーサービス」で実現したいこと
はじめに
伊藤レポートに紹介されているように、高齢者だけでなく、社会の中枢を担う忙しいミレニアル世代にも宅配ミールキット(カットされた新鮮な食材にレシピ付きで簡単に調理ができるキットや、好みの調理済みミールキットが選択できる)が急成長し、2017年の市場規模は50億ドルを超えた。
このため宅配用に使われる段ボールケース業界も競争が激しくなり、様々な改良や工夫が施されるようになった。米国の最先端のサブスクリプション・ボックスを見てみよう。
宅配用段ボールケースに求められる様々な機能
1.環境特性に優れるミールキットの100%紙製の断熱ライナー
カットされた食材を新鮮な状態のまま、また作りたての料理を温かいまま、家庭まで届けられるよう、これまでのプラスチックの気泡緩衝材(発泡スチロールやプチプチシート)に代わって、最近リサイクルが容易な紙製の断熱ライナー材が続々登場している。市場拡大に伴い廃棄パッケージの急増が深刻な問題として指摘されているからだ。米国の宅配ミールキット大手Hello FreshやBlue Apronも漸くリサイクルを意識したライナー材の本格採用に踏み切った。
Hello Freshは、2017年に紙製の断熱ライナー材を初めて採用したが、この時はまだ表面に金属蒸着のプラスチックフィルムを貼り合わせ、保冷材を入れていた(参考写真 ① ②)。このため蒸着フィルムをライナー材から剥がし、保冷材は分別して、リサイクルに出す必要があった。
2018年秋に採用したTemper Pack社(https://www.temperpack.com/)のClimaCell(参考写真)は100%紙を使った断熱ライナー材で、段ボールと一緒にライナー材もリサイクルに出せる認証を得ている。また用途に応じ夏場の環境温度でも最長96時間は、梱包容器内の温度を6℃以下に保つことができる設計も可能だという。
HelloFreshはリサイクラブルで高性能な断熱ライナー材に切り替えることにより、同社だけで毎年発生するパッケージ廃棄物を1.5万トン削減できると語っている。
ネット通販で購入された食品を家庭まで安全に配送し、消費者が安心して受け取ることができ、環境負荷を軽減するために、今後輸送用段ボールケースが備えておかねばならないのは必要不可欠な要素だろう。米国のミールキットの購入契約者数は、昨年時点で既に112万人に達していると推定されており、今後も成長が期待されている市場だ。Temper Pakは需要増に対応するため、東海岸のリッチモンド工場に加え、西海岸のラスベガス工場でもClimaCellの生産を開始するという。
2.環境を意識したネット通販用液体洗剤:P&Gの”ECO BOX”とは
ホームケア製品の雄P&Gが昨年11月に、ネット通販用にこれまでの常識を覆すパッケージを発表した。従来の3~4.5リットルのプラスチックボトルは輸送時の激しい振動や衝撃でキャップが割れて、中身の液体洗剤が漏れる事故があったという。このためプラスチック緩衝材で覆い、袋で厳重に包装する必要があった。段ボールケースまで含めると3重包装となり、現在の廃プラスチック問題を考えると大きな課題を抱えていた。
P&Gはこの問題をアウト・オブ・ボックス的な発想で、50年以上前からあるBIBの技術を使って解決した。Terracyle社と提携しているので、BIBのPE内袋は運賃着払いで回収してくれる。段ボールケースは自治体の道端回収か、Terracycleの回収場所に持ち込めばよい。これに合わせてP&GはTideを濃縮タイプの洗剤に変更しており、容量も30%減らして輸送時の燃料や洗剤生産時の水資源の使用量を削減した。
昨年11月末の販売開始以来、消費者にも好評で、AmazonだけでなくWalmart.comやeBayなど他の通販業者も採用を決めたという。
さいごに
欧米では、資源を効率的に使い、廃棄物を削減するというコンセプトのパッケージ提案が次々なされている。以前は日本のお家芸であった環境対応パッケージだが、どうも最近は欧米勢に押されがちだ。今一度原点に立ち返って、日本発の環境技術の復活を期待したい。