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世界のチューブ容器事情(歯磨き粉、食品、化粧品)

ニューヨークのオーラルケアグッズ事情

こちらの記事を「プロの目線」で深掘りしたプレミアムレポートです!

はじめに

不思議なことに洋の東西を問わず、練り歯磨きはどこでもチューブ状の容器が主流になっている。これは中身がペースト状で、容器を指で押して取り出すのが便利なことと、練り歯磨きには、研磨剤、発泡剤、湿潤剤、粘結剤、洗浄剤、香料、フッ化物や歯垢分解酵素などの薬用成分が配合されているため、容器に保存性が必要なことから、その昔は金属チューブが使用されていた。しかし金属容器は固いため内容物を押し出しにくく、使用途中でチューブが破断し、継ぎ目や底シール部から歯磨きが漏れだしてしまうなど使用上の不具合が多々あった。

これを解決したのがアルミ箔を中心に白色ポリエチレン、PETフィルム、紙、接着樹脂等の素材を使って複合化し、柔軟性、強靭性、内容物保存性を付与したラミネートチューブだ。嬉しいことにこのラミネートチューブは世界に先駆けて日本のライオンが長年の研究開発を経て1969年に世の中に出したものだ。

金属チューブの欠点を解決し、その使い勝手の良さから、ライオンの特許切れと同時に多くのメーカーがこの技術を採用することとなり世界中に広まった。日本が誇れる加工技術であり、アメリカでも日本でも、ほぼ似た形態の容器が使われているのはある意味当然の結果であろう。

歯磨きチューブの市場と変遷

写真:上野さんのレポート「ニューヨークのオーラルケアグッズ事情」より、コルゲート社の練り歯磨き。

練り歯磨きの市場規模は世界で1.5~2兆円、日本で1,200億円と言われている。メーカー別では上野さんのレポートにも登場するコルゲート社(Colgate-Palmolive)が断トツで40%を超えるシェアを有している。2番手争いをしているのは、世界のトップ消費財メーカーであるP&Gとユニリーバで共に市場シェアは10%台前半だ。

上野さんのレポートにもある通り、昔は横型タイプが多かったが、最近はキャップを下向きにして自立させる縦型タイプが増えている。これは家族がそれぞれ好みの歯磨きブランドを使用するケースが多くなり、人によっては朝と夜を使い分けていることもある。種類が増えても縦型のチューブであればスペース効率が良く、識別も容易で利便性が高いことが理由であろう。

またスタンドタイプであれば外箱が不要になるので、パッケージの削減にも繋がる。こうしたニーズに対応するため、見た目は変わらなくてもラミネートチューブの原反の構成は、素材革新や加工技術の進歩と共に変化を遂げてきた。

キャップの改良もされている。以前は小さいスクリューキャップであったが、これはうっかり紛失したり、誤ってシンクの排水口に流してしまうことがあった。今は開け易く閉め易いフリップトップタイプやスナップフィットタイプのキャップが主流だ。安定したスタンドタイプにするには、キャップの形状もデザイン上重要な要素になる。

写真:上野さんのレポート「ニューヨークのオーラルケアグッズ事情」より

用途が拡がるチューブ容器

歯磨きチューブの使い勝手の良さから、食品分野でも同じようなペースト状の製品であるわさび、からし、ミソ、マスタード、チョコクリーム、ピーナツクリームや、マーガリンなどのスプレッドが、次々とラミネートチューブに充填され発売された。食品用途では視認性や金属探知機能も重要なファクターであり、ガスバリア性の高い透明蒸着フィルムがアルミ箔に代わって使われるようになった。

またラミネートチューブだけでなく、共押出多層チューブも増えている。日本のパッケージ業界で権威のある木下賞を2016年に受賞したハウス食品の「特選本香り」シリーズのチューブ容器は、中栓のアルミ箔シールに易開封性を付与し、チューブの周囲360度にシズル感溢れるフルカラー印刷を施し、チューブの口元をなで肩にして中身を最後まで絞り出しやすくするなど、随所に消費者目線での工夫が施された。これは東洋製罐のラミコンチューブ技術をベースに、凸版印刷のコンバーティングや素材技術を加えて改良し完成したものだ。企業の枠を超えて、エンドユーザーに利便性を提供するオープンイノベーションの画期的モデルケースでもある。

写真:<出展>凸版印刷ホームページより https://www.toppan.co.jp/news/2016/06/newsrelease160610_2.html

米国でも逆転の発想のスタンドタイプパウチ登場

日本で上記のハウス食品のチューブが発売された2015年には、米国でもキャップを下向きにして自立する斬新なスタンディングパウチが市場投入された。サワークリームで有名なDaisy社が、世界的なディスペンサーメーカーAptar社と米国の代表的包装容器メーカーSonoco社とタイアップして開発したものだ。

写真:米国のスタンディングパウチ

フリップトップ式のキャップにはシリコン製の逆流防止弁と不正改ざん防止用のプルリングがついている。中身が減ってきてもパウチはエアーバックしないので、サワークリームは空気に触れず賞味期間を長く保てる(冷蔵庫保存で8週間)。

また残りが少量になっても、冷蔵庫の中で自立状態を保つことができる。これまでのカップ入りと違い、サワークリームを取り出すときにスプーンを使う必要がなくなり衛生的だ。高粘度のサワークリームを必要な分、必要な場所(米国ではトッピングに使うことが多い)に簡単にディスペンスできると消費者の評判も上々のようだ。

写真:米国のスタンディングパウチ

デジタル印刷技術を駆使した海外の化粧品チューブ容器

写真:<出典>Packaging Strategies誌 2018年6月29日号

世界的化粧品ブランドAHAVAの30周年記念の製品に、イスラエルのデジタル印刷機メーカーVelox社が開発した世界初の硬質容器用のデジタル印刷技術DTS (Direct-to-Shape)でプリントしたプラスチックチューブを採用した。チューブメーカーは同じくイスラエルのLageen Tube社だ。

チューブ容器は6種類用意され、高解像度の画像、チューブの周囲360度のシームレスプリントで、モデルの女性の背景、ロゴ、ラベル表示まで鮮明に再現されており、印刷ラベルも不要になった。このキャンペーンのコンセプトは、女性の社会的地位向上だという。

写真:<出典>Velox社ホームページより

Veloxのデジタル印刷機IDS 250は、毎分250個の容器にフルカラー15色の印刷ができる。消費財メーカーは新製品の企画で容器のカスタムデザインが可能になった。Veloxは、「ユニークで流行の先端を行く製品とパッケージをいち早く市場投入できます。スピード、柔軟性、ワークフロー、コストなど全てが変革できるのです」と胸を張る。

デジタル印刷技術は海外の軟包装業界で急速に普及し始めている。少量多品種生産は日本のお家芸であったが、この技術を装備すれば製版工程が不要になる。納期が2か月もかかっていたアメリカでも、エンドユーザーは発注後3週間以内に全米のどこでも包装資材が調達できるようになり、市場投入までの時間を大幅に短縮して競争相手に先んじることができる。既に米国ではデジタル印刷専業のコンバーターも出現している。北米軟包装市場が大きく変貌する兆しが見えてきた。(森 泰正記)

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